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播州地方で見かけた野草(夏T)



実家近辺や兵庫県内などを移動する際に見かけた野草です。
といっても、出かけた際にちょこっと撮影しただけのため、あまり多くはないです。
今後、機会を見つけて充実させていきたいと思っています。

< トピック >

今回、新たに下記の写真を追加しました。
オクラ、ミカヅキグサ、ヘラオモダカ、サワヒヨドリ



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
アオイ目
アオイ科(オクラ、アオギリ)
アブラナ目
アブラナ科(マメグンバイナズナ)
イネ目
イグサ科(イグサ)
イネ科(ハルガヤ、カモノハシ、ムラサキエノコロ、チヂミザサ、チゴザサ、
    セイバンモロコシ、ダンチク、ササクサ)
ガマ科(ガマ)
カヤツリグサ科(メリケンガヤツリ、コマツカサススキ、ヤマイ、ゴウソ、
        シカクイ、コイヌノハナヒゲ、ミカヅキグサ)
ウリ目
ウリ科(キカラスウリ、カボチャ、キュウリ)
オモダカ目
オモダカ科(ヘラオモダカ)
カタバミ目
カタバミ科(オッタチカタバミ)
キク目
キキョウ科(キキョウ、ツリガネニンジン、ヤマホタルブクロ、ホタルブクロ)
キク科・アザミ亜科(ノアザミ、キセルアザミ)
キク科・キク亜科(ガンクビソウ、サジガンクビソウ、キバナノコギリソウ、
         セイヨウノコギリソウ、フランスギク、サワシロギク、シラヤマギク、
         ヒロハホウキギク、ヨメナ、ヒメジョオン、オオキンケイギク、
         ハルシャギク、アメリカタカサブロウ、タカサブロウ、サワヒヨドリ、
         ヒヨドリバナ、ハキダメギク)
キク科・タンポポ亜科(トゲチシャ、ブタナ)
播州地方で見かけた夏の野草(夏T)
和名インデックス


オクラ(Abelmoschus esculentus)
<アオイ目・アオイ科・アオイ亜科・フヨウ連・トロロアオイ属>


アオイ科トロロアオイ属の1年草で、アフリカ北東部原産の野菜。
原産地では多年草であるが、耐寒性がなく、少しの霜でも枯れてしまうため、日本では1年草。
和名は「アメリカネリ」で、別名を「陸蓮根(おかれんこん)」と言う。
普及前から「ネリ」の名で食べられていた地域(沖縄や鹿児島など)以外では、英名のオクラ(okra)が一般名。
草丈は1〜2mで、葉は互生し、長さ15〜30cmで掌状に5〜9深裂する。
花期は7月〜10月で、直径10cm前後の淡黄色の5弁花。夜から早朝にかけて開花し、昼にはしぼむ。
花の中央に暗紫色の斑(ふ)が入る。オシベは多数あり、根元が筒状に合着し、花柱を覆う。
メシベは、花柱の先が上向きに曲がり、先が5裂して、柱頭は平らに開く。
果実は角状の刮ハ(さくか)で、5つの稜あり、表面に短毛がある。
黒く熟すと裂開し、直径5mmほどの種子が散布される。
なお、果実は熟すと木質化して固くなるので、若い果実を食用とする。

2017/8/17
実家の畑に植えられていたオクラです。上段左はツボミで、右が花と若い果実です。
下段は花の中心部で、左は根本が合着したオシベで、右が5裂したメシベの柱頭です。



2023/9/6
昨年は、ナメクジに植えたばかりの苗をすっかり食べられてしまったシマオクラですが、
今年は何とか育ってくれ、元気に次々とその果実を実らせ、楽しませてくれています。
写真を撮り、以前植えていた五角形の果実のオクラと花を比較してみましたが、大差ありません。
違いは、果実の形状(シマオクラは丸い)と、多少成長しても硬くならないところでしょうか。
五角形のオクラは、油断すると育ちすぎて硬くなっていましたが、それが緩和されました。

アオギリ(Firmiana simplex)
<アオイ目・アオイ科・Sterculioideae亜科・アオギリ属>


     <雌花>                  <雄花>
アオイ科アオギリ属の落葉高木で、在来種。雌雄同株で雌性先熟。
日本では、伊豆半島、愛媛県、高知県、大隈半島、琉球列島などで自生している。
公園樹や街路樹として利用されるため、暖地では野生化して増えている。
海外では、東アジアの亜熱帯から熱帯に分布している。
樹高は15〜20mで、幹は直立し、樹皮は緑色。
若木では緑色でなめらかであるが、古くなると灰褐色を帯びて縦に浅い筋が入る。
葉は互生し、葉柄は長く、葉身は長さ、幅とも15〜25cmで、掌状に3〜5裂する。鋸歯はない。
花期は5月〜7月で、枝先に大型の円錐花序を出し、黄色と茜色の小さな花を多数つける。
花序には雄花と雌花が混じり、雄花の花糸は合着して筒状になり、葯は先端にかたまってつく。
雄花の花糸は合着して筒状になり、葯は先端にかたまってつく。
花弁のように見えるのは萼片で、花弁はない。萼片は5個で、内面には長毛が密生しそり返る。
果実は、未成熟期は鞘状で、5本の鞘が放射状に垂れ下る。
晩夏には鞘が裂開して、葉状になるが、その周辺に4個の種子が付く。
その状態で冬まで残り、冬に強風にあおられると木から離れて散布される。

2022/7/8
実家近くの小学校の校庭に植えられているアオギリが、たくさんの花を付けていました。
パッと見て、花数が疎らな花序とびっしりと黄色と茜色の小花が付いた花序があります。
疎らな方をよく見ると、多くがツボミと花が落ちて花柄のみになったものでした。
そして、この疎らな花序にのみ、あまり数は多くありませんが雄花が見られました。
おそらく、雌性先熟なので雌花は咲いても受粉できずに落花し、ツボミは雄花と思われます。
一方、花の多い方は、黄色と茜色の2種類の雌花が、今は盛りと咲き誇っていました。
大きく反り返った萼片には黄色と茜色の2種類があり、雄花にも雌花にもこの2色が見られます。
この2色はほぼランダムについていて、どういった基準で咲き分けているのでしょうね。


2022/8/15
久しぶりにアオギリの近くを通ると、既に鞘状の果実は裂開していました。
花の写真を撮ってから5週間ちょっとでこの状態になるとは、かなりの成長スピードですね。

マメグンバイナズナ(Lepidium virginicum)
<アブラナ目・アブラナ科・マメグンバイナズナ属>

アブラナ科マメグンバイナズナ属の2年草で、北アメリカ原産の帰化植物。
日本では明治時代に帰化が確認されており、現在では北海道から九州まで、全国で分布が確認されている。
草丈は20〜50cmで、茎が直立して、上部で多数分枝する。
葉は濃緑色で光沢があり、普通、根生葉は花期には枯れる。
茎葉は互生し、無柄で長さ2〜5cmの倒披針形で、縁には不規則で粗い鋸歯がある。両面無毛。
花期は5月〜6月で、茎頂の総状花序に多数の花を付ける。
花は直径3mm前後の緑白色で、4弁花。お椀状の萼片も4個で、背に多少の毛がある。
萼片の間からしゃもじ状の花弁が伸びるが、きちんと開いたものは少ない。
オシベは2〜4個で、軍配型の子房の上に短い柱頭がある。
果実は長さ3o前後の扁平な円形で中央に筋があり、その形状が軍配に似て、小さいのが和名の由来。
果実の縁には翼があり、左右2室に分かれる。各室に種子が1個入り、種子にも翼がある。

2019/6/26
実家近くを散歩中に見かけたマメグンバイナズナです。
ナズナと差がないくらい、よく見かけるようになりました。
花弁が小さく、あまり開いていないものが多いのですが、この個体は良く開いていました。


2020/11/29
実家近くの川沿いに散歩していた時、道路脇の草原で見かけたマメグンバイナズナです。
マメグンバイナズナが咲くのは春〜夏だと思いますが、12月間近でも咲いていました。
草姿を見ても、春から咲き続けているような古株ではなく、比較的新しい株のように見えます。
最近まで暖かでしたので、春まで待てずに、伸び出してしまったのでしょうか。

イグサ(Juncus effusus var. decipens)
<イネ目・イグサ科・イグサ属>


イグサ科の植物で、標準和名は「イ」。最も短い和名でもある。
湿地や浅い水中に生える植物で、泥の中に根を張る。
ちょっと変わった姿で、先のとがった細い茎が束になったような形をしている。
この茎のようなものは花茎で、本当の茎は地下茎となっている。
葉は、花茎の基部を包む短い鞘状に退化し、葉はないように見える。
花は、花茎の途中から出ているように見えるが、花までが花茎で、その先は苞にあたる。
花序は、短い花柄を持つ多数の小花の集まりで、6つの小さな花弁がある。

2022/6/18
網引湿原第2湿原と奥池との境目辺りで見かけたイグサです。
咲きかけの花も見られましたが、多くは果実になっていました。

ハルガヤ(Anthoxanthum odoratum)
<イネ目・イネ科・イチゴツナギ亜科・イチゴツナギ連・ハルガヤ属>


イネ科ハルガヤ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
明治時代に牧草として移入されたもので、酸性土壌を好み、路傍や草地に生える。
株になって生育し、春に直立する特徴のある花序を出し、花茎は数十cmになる。
1つの小穂は10mm程で、最初にオシベが伸び、オシベの落下後にメシベが出てくる雄性先熟である。
花穂には甘い香りがあり、乾燥するとその香りは一層強くなる。

2022/6/18
網引湿原の最初の獣害防止ゲートとバイオトイレの中間あたりで見かけたハルガヤです。
花序が大きく開いていたので、ハルガヤとは思えず、最初は何だか分かりませんでした。
後でいろいろ調べていて、ハルガヤもこのように大きく穂が開くことがあると知りました。
通常、ハルガヤは株立ちになるのですが、花茎は数本確認できただけです。
おそらく、土手の手入れが良くなされていて、除草を受けたためだと思われます。


ハルガヤの花序

   .
    <実家近くで見かけたハルガヤ>            <今回見たハルガヤ>
多摩川の河川敷や実家近くで見かけたハルガヤの花序は、左のようのものばかりでした。
そのため、ハルガヤの花序に関しては、比較的細くてシュッとしたイメージを持っていました。
今回見た花序は、中ほどが大きく開いて、でっぷりとしていたので、直ぐに結びつきませんでした。
ハルガヤは、雄性先熟なので、雄性でオシベが出ているときはこのように大きく開くようです。
その後、葯が落ちてメシベが伸び出し、雌性に変わるとともに小穂が閉じてスリムになるようですね。


カモノハシ(Ischaemum aristatum)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・ウシクサ連・カモノハシ属>


イネ科カモノハシ属に属する多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ベトナムに分布する。
草丈は30〜90cmで、基部は少し横に這い、節ごとに曲がって斜上し、上部は直立する。
葉は長さ15〜30cmの線形でやや硬く、通常無毛で、縁はざらつく。
葉舌は長さ2mm前後の切形で膜質、縁は毛状。葉鞘は平滑で、上部の縁にだけ長毛がある。
花期は7月〜10月で、葉の間から細く直線状の柄が伸び出し、長さ4〜8cmの穂状花序を出す。
花序は1個の狭楕円体に見えるが、背面が平坦な2個の花序が密着して1個に見えているもの。
この2個の花序が付いている様を、カモのクチバシに見立てたのが和名の由来。
この花序の片面に長さ5〜6mmの小穂が組になって密着するように並んでいる。
第一小穂には短い柄があり、第二小穂はその柄の基部に付いて柄はない。
第一小穂の2個の小花は雄花で、第二小穂は第一小花は雄性、第二小花は両性花である。
第1苞穎は革質の倒披針形、第2苞穎は舟形、第3穎は薄膜質である。
第4穎は2深裂して背面から芒が出るが、1〜4.5mmと短い。
近縁種のケカモノハシは砂地に生える海浜植物で、穂一面に毛が生え、茎の節にも毛が生える。
タイワンカモノハシは、本州の紀伊半島以南から南西諸島に分布し、芒が5〜7mmと長い。

2022/6/18
網引湿原第2湿原の木道から少し離れた所に生えていたカモノハシです。
細長い穂が10本ほど立ち上がっていて、穂にはメシベらしきものが付いたものもありました。
後で調べていてカモノハシと分かったのですが、1個に見えた花序は、2個からなるとのこと。
花序の片面は平面で、平面同士が密着しているので、外見は1個の花序にしか見えません。
最初、下段右のツルッとした花序は開花前の状態かと思ったら、開花後の状態でした。
左の花序で、茶褐色のものが付いていますが、オシベの葯もメシベの柱頭も茶褐色のようです。
解像度が悪いのですが、棒状のものとモジャっとしたものがあるので、両方が混ざっているようです。

ムラサキエノコロ(Setaria viridis form. misera)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・キビ連・エノコログサ属>

イネ科エノコログサ属の1年草で、在来種。穂の総苞毛(芒)が紫褐色。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布する。
海外では、北半球のほとんどの地域に分布している。
草丈は30〜80cmで、茎は基部で分かれて叢生し、葉は長さ15〜40pの線形。
花期は6月〜9月で、穂状花序の長さは3〜6pの円柱形で、穂は直立するか、多少垂れる。
コツブキンエノコロの花序が似ることがあるが、苞頴が短く、護頴の先半分が見えることで区別可能。

2021/8/31
実家近くの河川敷を散歩中、コンクリートの僅かな隙間にムラサキエノコロが生えていました。
継ぎ目に沿って数株が1列に並んで、紫褐色の芒が目を引きます。
※ いろいろなエノコログサの仲間の花序の比較に関しては、こちらを参照ください。

チヂミザサ(Oplismenus undulatifolius)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・キビ連・チヂミザサ属>

イネ科チヂミザサ属の1年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、温帯から熱帯にかけて広く分布する。
和名は、葉がササに似て、縮れたような皺があることに由来する。
茎は、枝分かれしながら地上を這い、多数の葉を付ける。
秋に、茎の一部が立ち上がり、先に穂状の花序を付ける。
花茎の上部に短い柄が出、その枝に数個の小穂が付く。
小穂には3本の長い毛があり、表面が粘つく。また、第一苞穎に長さ12〜20mmの芒がある。
花期は8月〜9月で、メシベの柱頭は羽毛状で目立ち、オシベの葯は淡黄色で目立たない。
花軸、葉、および葉鞘に長い毛の多いタイプをケチヂミザサ。
全体に毛が少なく、花軸に毛がないタイプをコチヂミザサと分けることがある。
しかし、この2つを変種レベルでさえ分けないことが多い。

2022/8/16
網引湿原の最初の獣害防止ゲートから靴底の洗い場までの林内で見かけました。
チヂミザサと勘違いしたササクサと同じような場所で、葉を広げていました。
花が咲いていても良い時期なのですが、花を付けているものは見当たりませんでした。


チヂミザサの花

     .
2016/8/27
新潟の「胎内自然天文館」近辺で見かけた、チジミザサの花です。
小穂からオシベがぶら下がり、ブラシ状のメシベが顔を出しています。


チゴザサ(Isachne globosa)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・チゴザサ連・チゴササ属>

イネ科チゴササ属に属する多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、インドから東南アジア、オーストラリアに分布する。
草丈は30〜50cmで、根茎は横に伸び、そこから直径1〜1.5mmと細くて堅い茎を出す。
茎は分枝して叢生し、平滑・無毛で、基部は地上を這い節から発根して定着する。
葉身は長さ3〜10cmの披針形で、やや硬くて上面は光沢がなくざらつき、基部は丸く先は尖る。
葉脈は極めて細く、あまり目立たない。葉の縁はやや固くなってざらつく。
葉舌はなく、1列の長い毛が生える。葉鞘は節間より短く、平滑である。
花期は6月〜8月で、高さ3〜11cmの円錐花序を直立して出す。
花序枝を普通3回分枝した先端に小穂を1個付け、その手間に淡黄色の帯状の腺がある。
小穂は緑褐色〜紫褐色で、長さ1.5〜2.2mmの楕円状球形で2小花からなる。
下側の小花は雄性、上側の小花は雌性。両苞穎は小花の長さと同長か若干短い。
花柱は紅紫色で、開花時には頴の外へ花柱が突き出す。

2022/6/18
網引湿原第2湿原と奥池との境目辺りで見かけたチゴザサです。
池の畔で、少し盛り上がったような場所一面に、群生していました。
近づくことができない場所だったので、詳細が分からず、写真からの判断です。
従って、間違えている可能性もありますが、ここではチゴザサとしています。


2022/8/9
すっかり花は終わって、多くの果実が成熟して褐色になり、鈴なり状態です。
この草姿を見て、チゴザサの可能性がグッと高くなりました。


2023/5/18
秋には枯草の山になっていた所から、チゴザサが新葉を展開して伸びてきていました。
順序が最後になってしまいましたが、この後、最初に戻って6月頃に花を付けます。

セイバンモロコシ(Sorghum halepense)
<イネ目・イネ科・キビ亜科・ヒメアブラススキ連・モロコシ属>



イネ科モロコシ属の多年草で、ヨーロッパ地中海地域原産の帰化植物。
日本では本州から四国、九州に分布している。世界的には、熱帯から温帯にかけて広く分布している。
根茎、種子の両方で繁殖するため、根絶が難しい雑草である。
世界的に広く帰化してしまった畑の害草。日本で広がったのは戦後、現在では道端で普通に見られる。
太い根茎が横に広がり、茎は無毛で滑らか、硬くて光沢がある。節に短毛がある。
草丈は2mを超すものもあり、葉は長さ20〜60cmで幅は1〜2pで無毛、縁はざらつかない。
花期は、7月〜10月で、茎頂に長さ20〜50pの円錐状の花序を付け、花序枝は半輪生状に付く。
小穂は、芒のない有梗(有柄)の雄性小穂2個と、大きくて芒のある無梗の両性小穂が対になっている。
無梗の小穂は長さ5oほどで苞頴に包まれ、苞頴は光沢のある革質、護頴は膜質で長さ10o程の芒がある。
なお、芒が無い場合もあり、ヒメモロコシ(別名ノギナシセイバンモロコシ)として変種扱いする見解もある。
霜や乾燥などのストレスによりシアン化水素を植物体内に生産する。また、硝酸塩を含む。
そのことから、日本では飼料として利用されることは、ほとんどない。

2020/8/14
あまり気にしていなかったのですが、気が付くとあちらこちらで見かけるようになりました。
下段は、上段の小穂を拡大したものですが、左側は咲き始めたばかりで、右側は満開状態でした。
色が異なりますが、ブラシ状のものがメシベで、棒状のものがオシベの葯です。
左の写真では、一部でメシベが顔を出しているだけで、オシベは見られませんでした。
なお、何ヶ所かで確認しましたが、この辺りでは見られるセイバンモロコシには芒はないようです。


2021/8/31
実家近くの河川敷を散歩中、土手で花序を出して開花しているセイバンモロコシを見かけました。
その花序の中に、長い芒が出ているものがあることに気が付きました。
以前に確認したものでは芒がなかったのですが、芒のあるものもあるようです。

ダンチク(Cortaderia selloana)
<イネ目・イネ科・ダンチク亜科・ダンチク連・ダンチク属>


 
イネ科ダンチク属に属する多年草で、在来種。別名は、アセまたはヨシタケ。
日本では、本州の関東以西から四国、九州、沖縄に分布する。
海外では、中国、台湾、熱帯アジア、インド、地中海沿岸に分布する。
なお、本種は世界の侵略的外来種ワースト100に選定されている。
草丈は2〜4mで、地下茎は太短くて横に這い、大きな株立ちになる。
茎の直径は2〜4cmで、中空で節があり、竹に似ている。
葉は互生し、長さ50〜70cm、幅2〜5cmの線形で、やや厚みがあり、途中から垂れ下がる。
葉は粉白色を帯びて、表裏はざらつくが無毛で、縁には毛がある。葉鞘も無毛。
花期は8月〜11月で、茎先に長さ30〜70cmの円錐花序を出し、多数の小穂を密生する。
長さ10〜12mmの小穂は赤紫色を帯びた淡緑色で、2〜5個の小花からなる。
2個の包穎は披針形で3脈があり、先が鋭く尖り、無毛。
長さ7〜8mmの護頴は披針形で3〜5脈あり、基部には白い長毛、先端に2歯がある。
その歯間から長さ2〜3oの短い芒が直立して出る。内穎は護穎より短い。

2020/8/14
川岸の一部を占有しているのはダンチクです。最初、パンパスグラスではと思ったのですが違いました。
昨年の花穂が残っており、その間から新しい茎が伸びて、既に草丈は2m近くになっています。
昨年の花穂は、褐色になっていますが、元の形状をほぼ保っているようです。


2020/11/16
 
2020/11/16              2020/11/21
夏に見かけたダンチクですが、大きく伸びた茎先に長い円錐花序を出していました。
しかし、夏に見かけたときと同じで、多少ふっくらしていますが、綿毛は見られませんでした。
後に白っぽく写っている穂があったので、綿毛があるのではと、後日確認に行きました。
しかし、色の違いは光の当たり方の違いによるもので、綿毛は確認できませんでした。
しかし、後ろに隠れていた小さな穂(下段右)には、少ないですが綿毛が確認できました。


2020/11/22
翌日、別ルートで河川敷に下り、ダンチクの所に行くと、綿毛がたくさん付いた穂がありました。
しかし、小さな穂でしたので、ふんわりとした形にはなっていませんでした。
上部の大きな穂であれば、ふんわりとした形だったかもしれませんが、ちょっと遅かったようです。


2021/1/14
久しぶりに実家近くの川縁を散歩したとき、ダンチクはすっかり枯れススキ状態になっていました。
春には新芽を出し、夏頃には前年の穂が隠れるくらいまで伸びて、最初の写真のようになります。


2021/4/10
実家近くの川で、河原を歩いていてダンチクの葉が斑入りになっているのに気が付きました。
土手の上から見たときには、斑入りではなく普通の緑一色の葉だったはずです。
調べていると、夜の温度が上がると斑が消え、普通の緑色の葉になるとの記述が見つかりました。
今年の冬は寒かったので斑入りになったのでしょうか。緑になっても、新芽は斑入りだそうです。


2021/5/14
 
2020/8/14          2021/5/14
今年は冬の寒さで葉がすべて枯れたため、節から新芽を一斉に出していました。
新芽は斑入りになるので、昨夏の緑一色だった時とは、雰囲気ががらりと変わりました。

ササクサ(Lophatherum gracile Brongn.)
<イネ目・イネ科・ラッパグサ亜科・ササクサ属>

イネ科ササクサ属に属する多年草で、在来種。
日本では、本州の関東以西から四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、朝鮮半島南部、中国南部〜インド、インドネシアに分布する。
草丈は40〜80cmで、稈は節のある根茎から房状に出て、細く、堅く、直立する。
葉は茎の節毎に、やや間隔をおいて付き、葉身は長さ5〜30cmの披針形で、笹の葉に似る。
縁には細かい鋸歯があってざらつき、基部は長さ8〜12mmの偽葉柄になる。
葉舌は褐色で、切型。裏側に剛毛がある。
花期は8月〜10月で、花序は長さ10〜25cmと、草丈の半分程度が花序である。
花茎は数個の側枝を出し、各々に小穂が穂状について、長さ5〜10cmの総状花序となる。
小穂には柄がなく、初めは伏しているが、後に直立して斜めに広がり、同じ方向に開出する。
小穂は先の尖った円柱形で、長さ7〜12mm。基部は無毛か有毛である。
先端には短い刺が多数あり、そこに逆刺が密生している。
果実が熟すと小穂の基部で切り離されるようになり、小穂全体が触れたものにくっつく。
小穂は数個の花からなるが、結実するのは最も下の1つだけである。
基部に2つの包頴があり、5脈がある楕円形で、2番目のものが大きく、長さは5mm前後。
その内側に、最下の小花の護頴があって、内側にオシベ2個とメシベが入っている。
内頴は細長いへら形で透明。稔性の護穎と不稔の護穎は、芒の長さが1.5〜2mm。
最下以外の小花は退化して、護頴のみとなっている。

2022/8/9
網引湿原第1湿原の出口の手前で見かけたササクサです。
最初に見た時、チヂミザサだろうと思って、あまり良く見ていませんでした。
後で確認していて、葉に縮れが見られず、小穂に芒がないなど、チヂミザサでないと判明。
イネ科でササのような葉をしたものを調べていて、ササクサと分かりました。
かなり厄介なくっ付き虫のようで、これを取り除くのは大変面倒なようです。



2022/8/16
網引湿原の最初の獣害防止ゲートから靴底の洗い場までの林内で見かけました。
チヂミザサとササクサが同じような場所で、葉を広げています。
チヂミザサには花は付いていませんでしたが、ササクサは花序に多くの小穂を付けていました。
下段はその拡大写真ですが、小穂の先から出ている細いものは、不完全小花の芒が集まったものです。
この芒には下向きに刺がびっしりと生えており、熟した時にはこの刺で服などにくっ付きます。

ガマ(Typha latifolia)
<イネ目・ガマ科・ガマ属>

ガマ科ガマ属の多年草で抽水植物で、日本では北海道から九州の広範囲に分布している。
世界的には、北半球の温暖な地域やオーストラリアに分布している。
葉は高さ2mに達する事もあり、夏に茎を伸ばして、円柱形の穂を付ける。
花期は6月〜8月で、上部に2〜4段に雄花群が、下部に雌花群がつながって付く。
雄花群は長さ7〜12cmで細く、雄花が開花すると黄色い葯が一面を覆い、花後は軸だけが残る。
雌花群は長さ10〜12cmで開花時は緑褐色で直径は6mm前後と細い。
花後、下部の雌花群は赤褐色のソーセージ状になり、直径が15〜20mmと太くなる。
雌花は結実後、綿くずのような冠毛を持つ小さな果実になり、熟すと冠毛が膨らむ。
晩秋になるとこの穂がほぐれて、モコモコした綿毛が風に乗って飛散する。
この飛散する前のガマの穂を、手で握ったり、刺激を与えたりすると爆発的に膨らむ。

2020/8/6
休耕田にガマが入り込み、一画を占有してしまっていました。
既に咲き終わっているようで、穂の上部にある雄花は茶色くなっていました。

メリケンガヤツリ(Cyperus eragrostis)
<イネ目・カヤツリグサ科・カヤツリグサ亜科・カヤツリグサ連・カヤツリグサ属>



カヤツリグサ科カヤツリグサ属の多年草で、南アメリカから北アメリカ西部が原産地。
日本には沖縄に戦後侵入し、その後に広がって、本州関東以西から四国、九州、南西諸島に分布する。
日本以外でも、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、オーストラリアなどに広く帰化している。
草丈は40〜100pになり、根茎による栄養繁殖が著しく、稈は叢生して大株となる。
茎は太く、角の丸い3稜形で無毛。茎の基部は赤色を帯びる。
根元から多数の根出葉を出し、外側の何個かは発達せず、赤みを帯びた鞘となる。
葉はややV字型で、葉幅が5〜10mmで、長いものでは100cmに達し、縁はざらつく。
苞葉は葉状で4〜7個付き、内数個は著しく長くなり、最下のものでは長さ50cm以上になる。
花期は6月〜10月で、稈は数1mにもなり、やや柔軟で、先端に単一の花序をつける。
花序は単一で、長さ1〜10cmの花序枝が7〜10個付き、枝先には5〜20個の小穂が球状に集まる。
小穂は長さ5〜20mm長楕円形で、黄緑色〜緑色。10〜30個の小花が付く。
小穂は下側から熟し、順次、落ちていく。鱗片は長さ2mm前後で、淡黄緑色。中肋は緑色で幅広く、鈍頭。
花はオシベ1個とメシベからなり、柱頭は3裂する。
果実は痩果で、長さ1mm強の倒卵形、明瞭な3稜がある。

※ 繁殖力が強いため、水辺や湿地の希少種を駆逐する恐れがあり、要注意外来生物に指定されている。

2017/8/17
近くの側溝の中に巨大なカヤツリグサが横たわっていました。大き過ぎて倒れてしまったようです。
後で調べて、メリケンガヤツリと分かりました。画角に入り切っていませんが、根本の方からは葉が出ています。
まだ若い緑色の小穂もありましたが、右端のように多くは熟して下部が落果し、茶色く見えています。


2019/6/26
実家近くを散歩中、田んぼの脇で稈を伸ばしているメリケンガヤツリを見かけました。
おそらく除草された後、新たに葉や稈を出したものと思われ、50cm程とかなり小さいです。
右端の写真で、赤い物が付いているのが分かると思いますが、スクミリンゴガイの卵です。


2020/8/7
小穂の拡大写真がなかったので、マクロレンズ撮り直したものです。
細長い黄色いものがオシベで、緑色の3本の髭のようなものがメシベの3裂した柱頭です。

コマツカサススキ(Scirpus fuirenoides)
<イネ目・カヤツリグサ科・カヤツリグサ亜科・ホタルイ連・クロアブラガヤ属>


カヤツリグサ科クロアブラガヤ属(アブラガヤ属とする説もある)に属する1年草で、日本固有種。
日本では、本州と九州に分布する。
草丈は80〜120cmで、有花茎は硬く、横断面は鈍3稜形で4〜5節ある。
葉は幅3〜4mmで硬く、苞は葉状で、長い。
花期は8月〜9月で、球形の花序を茎頂に5〜6個、葉腋にも1〜2個の分花序を側生する。
この花序の枝は複分枝しない。苞葉の葉身は葉状で、花序よりも長い。
球状花序には、長さ5〜7mmの小穂が10〜30個集まる。
小穂は楕円形で、鱗片は幅1〜1.2mmの長卵形で鋭頭。完熟すると褐色となる。
痩果は長さ1.3〜1.5mmの倒卵形で淡褐色。表面に細かい凸凹があり、上端に嘴状部がある。
刺針状花被片は5〜6個付き、糸状で屈曲し、痩果よりもかなり長い。
果実が熟すと小穂の外に見えるようになり、傘の骨のように広がる。

2022/8/9
網引湿原第2湿原の所々で、シュンシュンと茎を立ち上げているのが見られました。
それほどの数ではないのですが、飛び抜けて背が高いので良く目立ちます。

ヤマイ(Fimbristylis subbispicata)
<イネ目・カヤツリグサ科・カヤツリグサ亜科・ホタルイ連・テンツキ属>
 


カヤツリグサ科テンツキ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島まで全国に自生している。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、ベトナムに分布する。
海岸近くから山地までの湿地や草地、田の畔などに自生する。
草丈は10〜60cmで、根茎は極短く、まとまって密に叢生する。
葉は茎より短く、細くてやや硬い。幅1mm前後の糸状で無毛。基部の鞘は褐色。
花期は7月〜10月で、稈の先に1つだけ小穂を付ける点が、他のテンツキ属とは異なる。
小穂の基部には1個の苞があり、幅の狭い葉状で、短いものが多い。
小穂は長さ8〜25mmの長楕円状卵形で、密に多数の花をつけ、やや光沢があって黄褐色。
鱗片は長さ4〜6mmの楕円形で、多数の細かい脈があり、黄白色。
果実が熟すと、下部の方から鱗片が立ちあがり、果実が落果する。
痩果は長さ1〜1.2mmの広倒卵形で、横断面はレンズ形で、明瞭な柄がある。
長さ4〜6mmの花柱は有毛で、極めて扁平で、柱頭は2分岐する。

2022/8/16
網引湿原第2湿原の奥池の近くで、ヤマイを見かけました。
他のホタルイ属が複数の小穂を付けるのに対して、本種は1個だけ付ける変わり者です。
小穂を1個付けるシカクイなどに似ていますが、脇に苞が1個付いている点が異なります。
通常、この苞はそれほど大きくはない(中段左端)のですが、とても長いものを見かけました。
後で、写真を見て見ると、手前に短い苞のようなものがあり、奥に長い苞が付いています。
ひょっとしたら、奥の長い方は、苞ではなくて葉なのかもしれません。
下段は、少し離れた場所で見かけた、下部の方が熟したヤマイの小穂です。
左側は鱗片が立ち上がり始めた初期の状態で、右は立ち上がった状態です。

ゴウソ(Carex maximowiczii var. maximowiczii)
<イネ目・カヤツリグサ科・スゲ亜科・スゲ連・スゲ属>

カヤツリグサ科スゲ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島まで全国に自生している。
海外では、南千島、朝鮮半島から中国に分布する。
草丈は30〜560cmで、根茎は短く横に這い、茎は3稜形で叢生する。
葉は、根出状に多数出て、幅3〜6mmと細長い。基部には葉のない鞘が多数集まる。
花期は5月〜6月で、高さ30〜70cmの有花茎に、小穂は2〜4個付き、苞は葉状で無鞘。
頂小穂は雄性で、長さ2〜4cmの線形。側小穂は雌性で、長さ1.5〜3.5cmの円柱形。
雌小穂は柄があって垂れ下がり、果胞は長さ4〜5mmで、表面に細かい乳頭状突起が密生する。
鱗片は褐色を帯び、緑色の太い中肋の先が長い芒になる。
痩果は長さ2〜3mmの扁平な円形で、果胞よりかなり小さく、果胞の中は空洞に近い。

2022/6/18
網引湿原第2湿原の木道の近くで、立派な小穂をぶら下げたゴウソを見かけました。
垂れた葉に沿って少し太めの褐色のものが見えていますが、これが雄小穂です。
褐色の鱗片の下に淡緑色の丸々とした果苞が見えています。
さぞかし大きな果実が入っていると思いきや、中はほぼ空洞だそうです。

シカクイ(Eleocharis wichurae)
<イネ目・カヤツリグサ科・ハリイ属・ハリイ節>
 
カヤツリグサ科ハリイ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島まで全国に自生している。
海外では、南千島、朝鮮半島から中国、ウスリーに分布する。
日当たりの良い湿地や湿原に群生し、極短い根茎を横に這わせ、多数密生する。
葉は退化し、花茎の基部を包む鞘のようになり、葉身はない。
稈は数十p立ち上がり、その先端に小穂を1つ付ける。稈の断面は四角で、和名の由来でもある。
小穂は広披針形で、長さ2cmほどで先が尖る。多数の鱗片が螺旋状に並び、淡茶褐色をしている。
鱗片の内側に小花があり、花被片があるが、針状の花被片の途中から多数枝分かれし、羽毛のようになる。

2022/6/18
網引湿原第2湿原の木道から少し離れた所で見かけたシカクイです。
アップの写真で、稈に稜があるのが分かると思います。
小穂の上部に見えている細いものは3岐した柱頭で、その下の淡褐色で細長いものは葯です。


2022/8/9
前回と比べると群生の規模がかなり多くなり、一画を占有してしまっていました。
改めて稈の形状を確認したのですが、比較的四角が明瞭なものから丸みの強いものまで様々です。
ただ、マシカクイほどには4稜は明瞭ではなく、丸くもないのでイヌシカクイでもないと判断します。

コイヌノハナヒゲ(Rhynchospora fujiiana)
<イネ目・カヤツリグサ科・ミカズキグサ連・ミカヅキグサ属>


カヤツリグサ科ミカヅキグサ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は40〜80cmで、茎は疎らに叢生して細く、斜上し、曲がったり、倒れることが多い。
葉は幅1〜1.5mmの糸状でやや硬く、茎よりも短く、内側に巻き、茎の基部に集まる。
花期は7月下旬〜8月で、果期は8月〜9月。
茎の上部に散房状の分花序を4〜5個、飛び飛びに離れて付ける。
小穂は長さ5〜6mmの披針形で、濃褐色。少数の鱗片を付け、鱗片内に1小花を付ける。
鱗片は長さ4〜5mmの卵形で褐色、鋭頭。メシベ柱頭は2岐する。
痩果は長さ2mm前後の狭倒卵形で、刺針状花被片は6個付き、果実より少し長くて細い。
本種の生育が良好な湿原では、モウセンゴケやサギソウなどが生育していることが多い。
そのため、本種の生育状況が、良好な湿原の目安の一つとされる。

2022/8/9
網引湿原第2湿原で、所々で見られたのがコイヌノハナヒゲの群落です。
写真を見てわかる通り、真っ直ぐに立っているものは少数で、多くが横に寝ています。
良好な湿原の目安となるようなので、大きな群落が見られるのは環境が良好な証拠なのでしょう。

ミカヅキグサ(Rhynchospora alba  (L.) Vahl)
<イネ目・カヤツリグサ科・ミカズキグサ連・ミカヅキグサ属>


カヤツリグサ科ミカヅキグサ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、九州に分布し、関東以西では山地〜低地の湿地に隔離分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾などユーラシア大陸、北アメリカの温帯に分布する。
草丈は20〜60cmで、根茎はなく、やや叢生して、茎は直立する。
葉は稈より短く、幅0.5〜1mmの糸状で、縁は内に巻き、上部のみ3稜状となる。
花期は7月〜8月で、茎頂に白色の狭いこま形〜半球形の花序をつける。
花序は小穂が2〜7個集まった小穂群、1〜3個からなる。
小穂は長さ5〜8mmの淡黄白色〜白色で、狭卵形〜披針形、鋭頭で、1〜3小花からなる。
苞穎は、乾けば淡黄褐色〜淡褐色に変わる。卵形〜卵状披針形で、膜質、微突頭である。
痩果は長さ1.8〜2.4mmの倒卵形で、柱基は円錐形で果体の長さの半分強である。
オシベは数個、メシベ柱頭は2岐して、花柱は糸状で基部は広がる。
花被の刺針状花被片は9〜15個で、長さは果体より長く、わずかに柱基を超える程度。
中〜上部には下向きの小刺があり、基部では小刺が上向きになる。

2022/8/9
網引湿原第2湿原で、所々で見られたのがミカヅキグの群落です。
湿地ではない通路脇などでも見られたので、花の拡大撮影ができました。


2022/10/11
夏には白い小穂が見られたミカヅキグサも、秋の深まりとともに茶色くなってきています。
まだ、一部には白っぽい小穂が残ってはいますが、乾燥して褐色になったものも多いです。


2023/7/18
昨年より少し早めの時期だったので、多くが咲き始めたばかりでした。
いくつかの淡黄色の葯が、うさぎの耳のように飛び出していました。
中央辺りで糸状の輪に見えているのは、2岐した柱頭ではないかと思われます。

キカラスウリ(Trichosanthes kirilowii var. japonica)
<ウリ目・ウリ科・アレチウリ連・カラスウリ属>

<雄花 17:16>                <雄花 20:39>
 
<雄花 17:17>
ウリ科カラスウリ属のつる性の多年草で、雌雄異株。
中国、日本原産の植物で、日本では北海道から本州、四国、九州と全国に自生する。
花期は、6月〜9月と長く、日没後から開花し、翌朝にも咲き残り、昼頃まで咲いている。
キカラスウリの花は、花冠の裂片の先が広がり、その先は細長い糸状になる。
雄花は、1ヶ所に複数付き、数日間連続して開花するが、雌花はほぼ単独で付く。
果実は、未熟時は若干の凹凸はあるが全体に緑色で模様はない。熟すと黄色になる。
キカラスウリの果実の周りの果肉は、甘くて食用になる。
ただし、過熟によりメロンなどと同様に、口内の粘膜を刺激する物質を生成する。

2012/8/12
実家近くの道端で見かけたキカラスウリです。ここには雄株しかないようで、雄花ばかりでした。
夕方に見かけたとき、雄花は開花しているものと、まだ半開きの状態のものが混じっていました。
夜になって見に行くと全て開花していましたが、咲き終わりなのか、オシベがばらけていました。


カラスウリの雄花と雌花

   .
2015/7/30<雄花>              2015/8/18<雌花>
多摩川の河川敷近くで見かけたカラスウリの雄花と雌花です。
キカラスウリとは花弁の形がかなり異なることが分かると思います。
雌花では、角のような柱頭が花冠の筒部から外に突き出しています。
また、筒部の下部にはぷっくりと膨らんだ子房が付いています。
なお、キカラスウリの雌花では、角状の柱頭はより明瞭で、大きく突き出ます。


カボチャ(Cucurbita maxima)
<ウリ目・ウリ科・カボチャ連・カボチャ属>



<雄花>

<雌花>
ウリ科カボチャ属のつる性の1年草で、アンデス山脈の冷涼な高地で栽培化された種。
現在、日本で広く栽培されているのはこのセイヨウカボチャである。
果肉は粉質で、触感はホクホクして甘みが強い。栗カボチャとも呼ばれる。
雌雄異花で、夏に黄色い直径15〜20cmほどの花を咲かせる。
最初にたくさん花が咲くのは雄花で、雌花はかなりツルが伸びた後に出てくる。
花は早朝に咲き、昼頃には萎れてしまうため、人工授粉が必要なことがある。
このセイヨウカボチャ以外では、ニホンカボチャ(Cucurbita moschata)も流通している。
見た目は、セイヨウカボチャはまだら模様があって、表面が比較的滑らかなのに対して、
ニホンカボチャは模様のない黒っぽい皮で、表面にはっきりと凹凸がある。
果肉はねっとりと粘質で、日本料理に適しているカボチャである。
カリウムの含有量はどちらも同程度であるが、β-カロテンやビタミンEはセイヨウカボチャに多い。

2019/6/29,7/3
実家の畑に植えられていたカボチャの花です。朝咲いて、お昼には萎んでしまいます。
じっくりと見たことがなかったので、雄花と雌花を早朝に撮影しました。
果実が大きいこともあり、その花も直径が20cm近くと大きいです。
なお、雌花が咲くと、なぜかナメクジがその花被片を食べに来ます。
写真のものも、花被片に穴が開いていると思いますが、ナメクジが食べた後です。
雄花はたくさん咲いているのですが、ナメクジが食べることはないようです。
何個か咲いている雌花だけが、ナメクジに食べられています。何が違うのでしょうか?
ちなみに、メシベに土がついていますが、私がナメクジを取るときに付けてしまったものです。

キュウリ(Cucumis sativus)
<ウリ目・ウリ科・トウガン連・キュウリ属>



<雄花>

<雌花>

<雌花の子房>
ウリ科キュウリ属のつる性一年草で、インド北部、ヒマラヤ山麓原産地。
日本では、平安時代から栽培されており、かつては熟した黄色い実も食用とされた。
しかし、完熟しても甘みが薄いため、現在では未熟な実を食用としている。
花期は5月〜8月で、雌雄異花ではあるが、単為結果を行うため雄花が咲かなくとも結実する。
黄色く甘い香りのする花を咲かせるが、品種、温度条件などにより雄花と雌花の比率が異なる。
花は直径3cm前後で先が5中裂し、ほぼ平開する。雌花では、花の基部に子房がある。
なお、甘い香りがするのは雄花のみで、雌花にはそのような芳香はない。
また、最初に咲くのは雄花ばかりで、雌花はツルがしっかりと伸びた後、咲きだす。

2019/7/4
実家の畑に植えられていたキュウリの花です。
じっくりと見たことがなかったので、雄花と雌花を早朝に撮影しました。
雌花の基部には、キュウリのイボイボがビッシリと付いた立派な子房があります。
新鮮なキュウリに付いているイボイボは、開花時には既にあり、そのまま残るみたいですね。
なお、イボの色を見ればわかると思いますが、白イボ系といわれる、主流の品種です。
以前は、南西日本に多い黒イボ系といわれるものも栽培されていましたが、今はわずかに残る程度とのこと。

ヘラオモダカ(Alisma canaliculatum)
<オモダカ目・オモダカ科・サジオモダカ属>


オモダカ科サジオモダカ属の多年草で、在来種。
沼やため池、河川、水路の浅水域、水田などに生育する抽水〜湿性植物である。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、インドに分布する。
草丈は20〜80cmで、塊茎は短く、直径1〜3cmである。
葉は根生し、気中葉は葉柄が長さ9〜30cmで、葉身は長さ4〜45cmのへら形。
葉は全縁で、基部は楔型で徐々に葉柄となり、葉身との境目が不明瞭。
花期は7月〜10月で、円錐花序は長さ35〜80cm。
花枝を3〜6本ずつ数段輪生し、花枝は3本の小枝を輪生するか花柄を出す。
苞は披針形〜楕円形で、先は鋭く尖る。花柄は10〜24mmである。
花は両性花で、直径10mm前後の白色〜淡紅色の3弁花である。
萼片は長さ3mm前後の扁円形で、緑色。
花弁は長さ3mm前後の倒卵円形で、花弁の先が不規則に切れ込み、基部は黄色。
オシベは6個で、葯は普通、淡黄色(紫褐色のものも確認されている)である。
なお、兵庫県播磨地方のみに見られるホソバヘラオモダカは葯は紫褐色である。
メシベは多数が輪状に1列に並び、花柱は反曲して上部約1/3に柱頭がつく。
痩果は長さ2〜2.5mmの扁平な倒卵形で、背に1本の溝がある。

2022/6/18
網引湿原のバイオトイレから最初の獣害防止ゲートの間にある畔で見かけたヘラオモダカです。
最初に見た時、葉の形から帰化植物のナガバオモダカを思い出していました。
帰りに改めて観察すると、葉は似ていても花序の形がまったく異なります。
後で調べてみると、在来種のヘラオモダカと分かりました。
花の形も異なっていて、本種の場合、花弁の先が不規則に切れ込み、基部は黄色です。
なお、この辺りにはホソバヘラオモダカも自生しているようですが、それは見なかったです。


2022/8/27
2ヶ月も経過すると花はほぼ終わり、独特な形状の果実になっていました。
中央に溝のある半月状の果実が丸く集まって、扁平な集合果になっています。


2023/7/25
網引湿原の第1獣害防止ゲート手前の側溝で、最後の花を付けていました。
日の当たりの良い場所では既に花は終わっていましたが、日当たりが悪いので残っていたようです。

オッタチカタバミ(Oxalis dillenii)
<カタバミ目・カタバミ科・カタバミ属>

カタバミ科カタバミ属の多年草で、北米原産の帰化植物。
日本では、本州から四国、九州の温暖帯に分布している。
帰化植物としては比較的新しく、1965年に京都府で見つかったのが最初である。
草丈は10〜50cmで、根茎は地中を横走し、そこから地上茎が立ち上がる(地上茎が地を這うことはない)。
地上茎は基部で2〜8個に分枝して直立し、細かい上向きの白毛がある。
地上茎は短い節間で花柄を出し、茎葉も1箇所から2個ずつ出ることが多く、多数密集しているように見える。
葉は長い葉柄の先にハート形の小葉が3個付く3出複葉で、日が陰ったり夜になると折りたたんだようになる。
花期は4月〜10月で、花柄の先に散形状に鮮黄色の花を数個付ける。花弁は5個で、長さ5〜11mm。
オシベは、長いもの、短いものが各々5個ずつあり、メシベの柱頭は5個ある。

※ よく似たものにカタバミの1品種であるタチカタバミがあり、茎が同じように縦に伸びる。
両者の違いで分かり易いものには下記の3点があり、良く観察すれば判断できる。
・オッタチカタバミの果柄は下垂するが、タチカタバミの果柄は斜上する
・オッタチカタバミの托葉は小さく目立たないが、タチカタバミの托葉は明瞭である
・引き抜いたとき、オッタチカタバミは根が浅く、タチカタバミには太い直根がある

2017/8/17
実家近くの道路脇で見かけたオッタチカタバミです。
果柄が少し下垂し、まっ直ぐに立ち上がっている果実との成す角度が直角〜鋭角になっています。

キキョウ(Platycodon grandiflorum)
<キク目・キキョウ科・キキョウ亜科・キキョウ属>

 
キク科キキョウ科の多年草で、在来種。山地の草原に自生するが、数は減って絶滅危惧種である。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
草丈は50〜100cm程度で、茎は直立し、上部で良く分枝する。
根茎は太く、サポニンを多く含むので生薬とされる。
葉は互生あるいは輪生し、長さ5p前後の狭卵形で、縁には細かい鋸歯がある。
花期は7〜9月で、茎頂に数個の青紫色の花を付ける。
ツボミは風船のように膨らみ、開花時には花冠は直径5p程になり、5裂(稀に4裂)する。
雄性先熟でで、開花直後は、オシベが未成熟のメシベを包んでいる。オシベは花冠の裂数と同数。
オシベはその役割を終えるとメシベから離れ、メシベが成熟して柱頭が5裂する。

2022/8/9
網引湿原第3湿原の方に行ったとき、キキョウが1株だけポツリと花を付けていました。
他の花でもそうなのですが、通路側に背を向けているものが多く、裏側からの写真が多いです。
仕方がないので、湿原の反対側に回って望遠で撮影しました。
その結果、上部の花は、オシベがメシベを包み込んで棒状に立った雄性期だと分かりました。
下部の花は、オシベがメシベから離れて広がっており、柱頭が5裂した雌性期と思われます。
なお、栽培されているキキョウは多くても、自生のキキョウは絶滅が危惧される状況です。

ツリガネニンジン(Adenophora triphylla var. japonica)
<キク目・キキョウ科・キキョウ亜科・ツリガネニンジン属>

キキョウ科ツリガネニンジン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国の山野で見られる。
海外では、樺太、千島列島に分布する。
草丈は50〜100cmで、茎はほとんど分枝せず、白毛が生え、切ると乳液が出る。
葉は先が4〜8pの細長く尖った楕円形で、数枚が輪生状に付き、鋸歯がある。葉には短い柄がある。
花期は8月〜10月で、茎頂に円錐花序を付け、花は数個が輪生する。
花冠は変化が多く、長さ20o前後で釣鐘型の淡紫色の花で、先が5裂する。
花柱は花冠から長く突き出し、成熟すると先が3裂する。まれに花柱が短いものもある。

2022/8/9
網引湿原第3湿原の方に行ったとき、通路脇で花を付けていました。
通路脇で人と接触するのか、少し傷んでいて、きれいに咲いている花がなかったのは残念。


2022/8/27
前回訪れたときは他の草本と混生していたのですが、その後、周りが除草されたようです。
そのため周りの草本がなくなり、ツリガネニンジンだけが通路の端にポツリと咲いていました。
周りが整理されたためか、きれいに咲いていました。また、先が3裂した花柱も見られました。

ホタルブクロ(Campanula punctata)
<キク目・キキョウ科・キキョウ亜科・ホタルブクロ属>

キキョウ科ホタルブクロ属の多年草で、在来種。
日本では北海道南部から本州、四国、九州に分布し、日本以外では、朝鮮半島から中国に分布する。
ホタルブクロの変種がホタルブクロの変種で、日本固有種となる。
草丈は、20〜50cmと幅があり、葉は互生する。
開けた乾燥気味の草原や道ばたなどで見られる草本で、初夏に釣鐘型の花を咲かせる。
花は長さ5cmほどの壺型で下向きに咲き、先が浅く5裂する。
花色には淡赤紫色のものと白色のものがあり、前者が関東に、後者が関西に多い。

※ ホタルブクロとヤマホタルブクロの違いは萼片の形状(下記参照)で、これで容易に見分けられる。
ホタルブクロでは、萼片の間にある付属体の副萼片が発達して、上方に大きく反り返っている。
それに対して、ヤマホタルブクロは、萼片と萼片の間が盛り上がる程度でしかない。

2018/6/1
実家の庭にホタルブクロとヤマホタルブクロが混生して咲いていました。
花色は、関西系の白に近い淡赤紫色で、やや濃い淡赤紫色の斑点があります。


2021/5/28
今年もホタルブクロとヤマホタルブクロがたくさんの花を咲かせました。
例年より少し開花が早いようで、6月を待たずにほぼ満開となりました。
その花を訪花する真っ黒なハチが居て、常に数匹が飛び回っていました。
その真っ黒なハチと、バラハキリバチのようなハチが縺れるように飛んだりしていました。
気になって調べると、スミゾメハキリバチのオスとメスと分かりました。


ホタルブクロとヤマホタルブクロ

   .
 2018/6/1<ホタルブクロ>         2018/6/1<ヤマホタルブクロ>
ホタルブクロとヤマホタルブクロの識別の決め手は、萼片の形です。
ホタルブクロの場合は、付属体の副萼片が反り返っています。
ヤマホタルブクロの場合は、萼片と萼片の間が盛り上がるだけです。


ヤマホタルブクロ(Campanula punctata Lam. var. hondoensis)
<キク目・キキョウ科・キキョウ亜科・ホタルブクロ属>

キキョウ科ホタルブクロ属の多年草で、日本固有種。
ホタルブクロの変種で、東北地方南部から近畿地方東部にかけて分布する。
ホタルブクロは、東北部を除く北海道から、本州、四国、九州に分布し、両者の分布域は重なる。
海外では、ホタルブクロが朝鮮半島から中国にかけて分布する。
草丈は、20〜50cmと幅があり、葉は互生する。
花は、長さ5cmほどの壺型で、先が浅く5裂する。
花色は、淡紅紫色で淡いものから濃いものまで変異がある。

※ ホタルブクロとヤマホタルブクロの違いは萼片の形状で、これで容易に見分けられる。
ホタルブクロでは、萼片の間にある付属体の副萼片が発達して、上方に大きく反り返っている。
それに対して、ヤマホタルブクロは、萼片と萼片の間が盛り上がる程度でしかない。

2018/6/1
実家の庭にホタルブクロとヤマホタルブクロが混生して咲いていました。
花色は、濃い目の赤紫色で、そのため斑点ははっきりしません。


2021/5/28
今年もホタルブクロとヤマホタルブクロがたくさんの花を咲かせました。
ヤマホタルブクロの開花は、ホタルブクロより1週間ほど遅いようですが、例年よりは早めです。
その花を訪花する真っ黒なハチが居て、常に数匹が飛び回っていました。
その真っ黒なハチと、バラハキリバチのようなハチが縺れるように飛んだりしていました。
気になって調べると、スミゾメハキリバチのオスとメスと分かりました。

ノアザミ(Cirsium japonicum)
<キク目・キク科・アザミ亜科・アザミ連・アザミ属>

キク科アザミ属の多年草で、日本固有種。
日本では、本州から四国、九州と比較的広範囲に分布する。
海外で、朝鮮半島から中国にかけて分布するものは、貯蔵根が肥大するので別種カラノアザミと思われる。
草丈は50〜100cmで、根生葉は花期でも残っており、長さ15cm前後で羽状に中裂する。
茎葉は、基部が茎を抱き、上部の葉ほど小さくなる。葉には、鋭い刺が多数ある。
花期は5月〜8月であるが、稀に秋まで咲いている場合もある。なお、春に花を付けるのは本種のみである。
頭花は茎頂に上向きに咲き、直径は4〜5cm。筒状化のみで、花色は紅紫色。稀に白花もある。
総苞は幅2〜4cmの球形で、総苞片は直立して粘液を出し、よく粘る。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場から最初の獣害防止ゲートの間には、ノアザミが点々と咲いていました。
春から咲いているアザミは、このノアザミだけなので早い時期なら区別は容易です。
右端は帰りに見かけた、畑の脇にあった巨大なノアザミの株です。茎は幅5cmほどで扁平でした。

キセルアザミ(Cirsium sieboldii)
<キク目・キク科・アザミ亜科・アザミ連・アザミ属>

キク科アザミ属の多年草で、日本固有種。別名は、マアザミ、サワアザミ。
日本では、本州から四国、九州と比較的広範囲に分布する。
山野の湿り気のある場所や湿原で、普通に見られる。
草丈は50〜100cmで、茎葉は小さく、少数付き、羽状に分裂する。
和名は、茎葉の少ない茎と下向きに付くツボミがキセル(喫煙具)に似ることに由来する。
根生葉は多数出て花期にも残り、長さ15〜50cmで、羽状に裂けて両面無毛。
花期は9月〜10月で、茎葉先で分枝して、各枝先に頭花を単生する。
頭花は初めは下向きに咲くが、徐々に起き上がり、果時には完全に上向きになる。
総苞は鐘形〜筒形で、総苞片は重なり合って付き開出するが、反り返ることはない。
花冠は長さ16〜20mmの紅紫色で、狭頭部は広筒部より長い。

2022/6/18
秋咲きのアザミなので、この時期は、まだ根生葉が出ているだけですね。
網引湿原第1湿原のような場所に生えるアザミは限られるので、このような状態でも種類が分かります。


 
2022/8/16
網引湿原第3湿原の獣害防止ゲートを入った少し先で見かけたキセルアザミです。
まだ、開花には時間がかかる状態ですが、ツボミの先が淡赤紫色に色付いていました。
背が低いなと思い、もう少し大きな株は無いかと辺りを見渡すと、ありました。
下段のキセルアザミは、先ほどの株とは一線を画すほどの立派さで、草丈は数倍はあります。
茎の太さもそうですが、付いているツボミの数も4個と多く、開花が楽しみです。


2022/8/27
前回、ここで見たときには硬かったツボミも、多くがほころび始めていました。
また、左の写真のように外周部の筒状花の一部が開花して、オシベが伸び出したものもありました。

ガンクビソウ(Carpesium divaricatum)
<キク目・キク科・キク亜科・オグルマ連・ガンクビソウ属>


キク科ガンクビソウ属の多年草で、在来種。別名はキバナガンクビソウ。
日本では、本州から四国、九州、南西列島に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
草丈は25〜150cmで、茎は直立して軟毛が密生し、中部以上でよく分枝して開出気味に広がる。
根生葉は花期にはなく、下部の茎葉は長い柄があり、葉身は長さは7〜20cmの卵形〜長楕円形。
葉身の基部は円形〜くさび形で、不揃いな波状の低い鋸歯があり、葉先は鋭形〜鈍形。
葉表は緑色で、葉裏は淡色で腺点があり、両面に軟毛がある。
中部の葉は長楕円形で、基部は楔状漸尖し、先は鋭く尖る。
上部の葉は小さく、長楕円形〜長楕円状披針形で先が尖り、無柄である
花期は6月〜10月で、直径6〜8mmの頭花は枝先に1個ずつ点頭し、開花時に下向きになる。
総苞は長さ6mm前後の卵球形で、総苞片は4列で覆瓦状に並び、外片は短い。内片は鈍頭。
小花は黄色で、舌状花はなく、周囲に雌性の小花が並び、その内側に両性の小花が並ぶ。
雌性小花の花冠は円筒形で、先が細く4裂する。両性小花の花冠は長さ3mmほどで、先が5裂する。
頭花の基部には、2〜4個の反曲した披針形の葉状苞が輪生し、長さは頭花の2〜5倍ある。
子房の上部と基部に粘液腺があり、痩果にも残る。痩果は長さ3mm前後で、上部と基部が粘る。

2022/8/27
網引湿原第1湿原の外を周る通路脇で見かけたガンクビソウです。
以前、見かけたときはヤブタバコではと思っていたのですが、長い花柄がありガンクビソウと分かりました。
頭花はヤブタバコに似ていますが、ヤブタバコの花柄はないか、あっても極短いです。


ガンクビソウ属の花

   .
   .
<ガンクビソウ>    <オオガンクビソウ>   <サジガンクビソウ>     <ヤブタバコ> 
網引湿原の近くで見かけたガンクビソウです。ヤブタバコとは花の付き方が異なります。
八ヶ岳自然文化園の林内で見かけたオオガンクビソウの花です。
日本に自生するガンクビソウの中では、ずば抜けて大きな直径数cmの頭花を持っています。
サジガンクビソウは、東京都町田市の薬師池公園で見かけたものです。
サジガンクビソウの頭花は、大きさがオオガンクビソウの半分程度で、緑白色です。
神代植物公園の近くで見かけたヤブタバコです。葉腋毎に黄色い花を付けます。


サジガンクビソウ(Carpesium glossophyllum Maxim. )
<キク目・キク科・キク亜科・オグルマ連・ガンクビソウ属>


キク科ガンクビソウ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州と琉球列島に分布する。国外では済州島に分布する。
草丈は30〜50cm前後になり、茎は直立して分枝が少なく、上部は曲がり、開出毛が密に付く。
根出葉がロゼット状に残り、長さ15p程の楕円形で鋸歯はほとんどない。
茎葉は小さく、まばらで、上部では線状披針形になる。
花期は8月〜10月で、枝先に緑白色の頭花を下向きに付け、頭花の基部には大きな苞葉が付く。
頭花は、直径15mm前後で、筒状花のみからなり、周囲に雌性、中央に両性花が付く。

2022/8/27
網引湿原第1湿原の外を周る通路脇で見かけたサギガンクビソウです。
以前、この場所でヤブタバコらしいを草本を見たので、その確認に行って見つけました。
ヤブタバコではなくガンクビソウで、重なり合うように生えていて、花を付けていました(下段左側の写真)。
サジガンクビソウとコヤブタバコの花は似ていますが、コヤブタバコには多数の葉状苞が付きます。
葉状苞は確認できますが多くはなく、また、茎葉が披針形で葉幅がそれほどありません。
これらの点から、サジガンクビソウと判断しました。

キバナノコギリソウ(Achillea filipendulina)
<キク目・キク科・キク亜科・キク連・ノコギリソウ属>

キク科ノコギリソウ属の多年草で、コーカサス地方、南西アジア〜中央アジアが原産地。
日本へは、明治になって鑑賞用として移入されたもで、一部で野生化している。
草丈は70〜130cmで、茎は直立し、よく分枝する。茎や葉など全体に白毛がある。
葉は互生し、長さ5〜15cmで羽状に深裂し、裂片はさらに中〜深裂する。両面とも白緑色。
花期は5月〜8月で、茎頂に直径が10〜15cmの散房花序を付け、黄色い頭花が密に付く。
頭花は直径3mm前後で、冠毛はなく、舌状花と筒状花からなる。総苞の長さは3〜4mmある。
舌状花は雌性で舌部は幅が広くて短く、無いかあっても数個。筒状花は15〜20個ある。
筒状花は周辺部から開花し、花冠の先は5裂する。

2017/6/30
実家の庭に、黄色いノコギリソウらしき花が咲いていました。
セイヨウノコギリソウとも少し異なっている点があったので、後で調べ、キバナノコギリソウと分かりました。
ノコギリソウやセイヨウノコギリソウの花とは、舌状花の様子が異なります。


2019/7/3
実家の庭にあるキバナノコギリソウですが、葉の写真がなかったので追加しました。
セイヨウノコギリソウ同様、2回羽状複葉ですが、裂片はあまり深く裂けません。

セイヨウノコギリソウ(Achillea millefolium)
<キク目・キク科・キク亜科・キク連・ノコギリソウ属>

キク科ノコギリソウ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本では、北海道から本州に分布する。
草丈は50〜100cmほどで、葉は互生し、2〜3回羽状複葉に細裂して柔らかい。
茎頂に散房花序を付け、直径5o程の頭花をたくさん付ける。
普通、周囲に5個の舌状花(雌花)が並び、中心に両性花の筒状花が複数ある。
花色は白や淡紅色が多いが、赤や黄色などの園芸品種も出回っている。床には膜質の鱗片がある。
花後、花床がふくれて円錐形になり、痩果は長さ2mmほどになる。

2017/6/30
キバナノコギリソウの側には、セイヨウノコギリソウが花を咲かせていました。
舌状花が大きめなので、キバナノコギリソウとは見た目がかなり異なります。


2019/7/3                  2019/7/6
実家の庭にあるセイヨウノコギリソウですが、上部の葉はノコギリソウに似ています。
裂片が細く尖って、裂片の切れ込みが極浅いためです。
ただ、下部の葉を見ると裂片が横に張り出し、裂片の切れ込みが明瞭になっています。
初期の頃の葉と、大きく成長した時の葉では、裂片の大きさや切れ込み具合に大きな差があるようです。


ノコギリソウの仲間

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   2017/8/5<ノコギリソウ>       2017/5/19<セイヨウノコギリソウ>
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2017/9/5<セイヨウノコギリソウ>     2017/6/30<キバナノコギリソウ>
ノコギリソウと白花のセイヨウノコギリソウはよく似ていて、花だけで区別するのは難しいです。
ただ、葉の形がノコギリソウは羽状深裂ですが、セイヨウノコギリソウは2〜3回羽状複葉に細裂します。
キバナノコギリソウも羽状複葉ですが、裂片はあまり深く切れ込みません。
また、セイヨウノコギリソウの花色には白以外に淡紅色、赤、黄色などの園芸品種が売られています。
キバナノコギリソウは、名前の通り黄色だけですが、舌状花が幅広で短く、無いか数個と少ない点が特徴です。


フランスギク(Leucanthemum vulgare)
<キク目・キク科・キク亜科・キク連・フランスギク属>

キク科フランスギク属の多年草で、ヨーロッパ原産の移入種。
庭園用に移入されたが、現在では逸出して野生化し、各地で見られる。
草丈は30〜80cmになり、茎は基部で分枝して直立し、粗い毛がある。
葉は、根生葉があり、長さ6〜9cmのさじ型で、鋸歯と粗い毛がある。
茎葉は互生し、へら型で鋸歯があり、基部は少し茎を抱く。
花期は6月で、茎頂に直径5cmほどの白い頭状花を単生し、総苞は皿形。
総苞片は長楕円形で、3〜4列になり、縁の膜は広い。
果実は黒色で、10条の隆起線があり、冠毛は合着して皿状の突起となる。
よく似た花にマーガレットがあるが、葉が羽状に切れ込むことで判別できる。

2019/6/29
実家の庭で、子供の頃から咲き続けているフランスギクです。
ずっと、マーガレットと聞いていたのですが、調べてみるとよく似たフランスギクでした。
マーガレットは、葉が羽状に切れ込みますが、フランスギクはへら型で鋸歯がある程度です。

サワシロギク(Aster rugulosus Maxim.)
<キク目・キク科・キク亜科・シオン連・シオン属>

キク亜科シオン属の多年草で、日本固有種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、 日当たりの良い酸性湿地を好む。
草丈は40〜60cmで、地下茎が湿地の中を横に這って広がる。
茎は直立して細く、あまり分枝しない。茎にはまばらに毛がある。
葉は長さ7〜17cmの線状披針形で、やや硬く、ざらつき、縁にまばらに低い鋸歯がある。
花期は8月〜10月で、茎頂に散房状にまばらに、直径2〜3cmの頭花を付ける。
舌状花は7〜12個付き、最初は白色。しだいに淡紅色〜紅紫色に変わる。
総苞は長さ4.5〜5mmで、総苞片は3列、外片は短い。
痩果は長さ2.5mm前後で、熟すと総苞が開出する。冠毛は長さ4mm前後で褐色。

2022/8/9
網引湿原第1湿原横の通路から第3湿原に至るまで、あちらこちらで見かけました。
群生している所はほとんどなくて、ポツリポツリとそこここで花を付けていました。
花色が、時間の経過とともに白から淡紅色に変化するようですが、白以外の花は見かけませんでした。
おそらく、開花してからそう時間が経過していないためでしょう。



2022/8/16
奥池の畔の通路脇で咲いていたサワシロギクです。
湿原の中にも見られるのですが、他の野草と混生していて写真が撮りにくいのです。
前回来た時、葉の写真は撮っていなかったので、今回、アップで撮影しています。

シラヤマギク(Aster scaber)
<キク目・キク科・キク亜科・シオン連・シオン属>

キク科シオン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国に分布している。
草丈は1〜1.5mで、茎は高く伸び上がって上部で分枝し、短毛があってざらつく。
根出葉は、葉身は長さ10〜20cmの卵心形で、縁に粗い鋸歯があり、表裏に短毛がある。
長さ10〜15cmの長い葉柄があり、翼がある事が多い。なお、花時には枯れる。
上部の葉は、先が尖った卵形になり、上部になるほど小さく、葉柄も短くなる。
花期は8月〜11月で、茎の先端に粗い散房状に白花を多数付ける。
頭花は直径20mm前後で、舌状花は4〜9個と少なめ。数が一定せず、まばら。
総苞は直径5〜6mmの鐘形で、総苞片は3列が重なり、瓦を葺くように並ぶ。
痩果は長さ3mm前後で、長さ4mm前後の淡褐色を帯びた冠毛が付く。

2022/8/9
第3湿原の通路際で何株か花を付けているシラヤマギクを見かけました。
写真を撮った時は、所々で見かけたサワシロギクであろうと思っていました。
後で確認しているとき、舌状花が少なく、不揃いな感じの花で、ちょっと違和感を覚えました。
それで、後日、サギソウを見に行ったときに葉を確認して、シラヤマギクと判明した次第です。



2022/8/16
第3湿原の通路際で見かけたシラヤマギクですが、前回よりも開花が進み立派になっていました。
前回は、サワシロギクだと思って良く見ていなかったのですが、葉を見て本種と確認しました。
下段のように、サワシロギクのスリムな葉ではなく、下部には幅の広い卵心形の葉が付いていました。
花を見ると、サワシロギクより舌状花の数が半分ほどと少なく、ばらけた感じなのが分かると思います。

ヒロハホウキギク(Aster subulatus var. sandwicensis)
<キク目・キク科・キク亜科・シオン連・シオン属>


キク科シオン属(シムフィヨトリクム属とすることもある)の1年草で、原産地は北アメリカ。
学名のシノニムは、「Symphyotrichum subulatum var. parviflorum」である。
日本では、1960年代に北九州で帰化が確認され、現在は本州中部以西の各地で広く分布する。
草丈は1〜2mで、茎は直立し、枝が横に60〜90°と大きく広がる。
葉は長さ10〜15cm、幅7〜10mmで、縁に5〜10対の鋸歯がある。
花期は8月〜10月で、分枝した茎先に多数の花を付ける。
花は直径7〜9mmの白色〜淡紅紫色で、筒状花は冠毛より長く、舌状花の筒部も冠毛とほぼ同長。
総苞は長さ5mm前後。痩果は淡褐色で、長さは2mm前後あり、冠毛は長さ3〜3.5mm。
ホウキギクと似ているが、枝が横に大きく広がる(ホウキギクは枝が斜上してスリム)。
また、ホウキギクの葉は長さ5〜10cm、幅3〜6mm、花の直径が5〜6mmと一回り小さい。
どちらも葉が茎を抱くが、ホウキギクは半分ほど、ヒロハホウキギクは少し抱く程度である。

2021/8/22
昨年、実家近くを散歩中に生コン工場脇の側溝で見かけたヒロハホウキギク。
見かけたのが晩秋だったので、茎は赤褐色になり、花も淡紅紫色でした。
その夏場の姿を確認しようと、以前見かけた所に行ってみると、数本を確認できました。
茎は緑色で、白い花を付けています。昨年は見られなかった葉も確認できました。
基部の大きな葉は、長さが11〜12cm、幅が8mm前後あり、鋸歯は確認できませんでした。
昨年は頭花の直径(約8o)からの判断でしたが、葉の大きさからもヒロハホウキギクと判断できます。


2021/9/7
川沿いを散歩中、上記の側溝がある場所からかなり上流部で見かけたヒロハホウキギクです。
このヒロハホウキギクは草丈が2m近くあり、舌状花の色が淡紅紫色でした。

ヨメナ(Aster yomena)
<キク目・キク科・キク亜科・シオン連・シオン属>

キク科シオン属の多年草で、日本固有種。
日本では、本州の中部地方以西、四国、九州に分布する。
草丈は50〜120cmで、地下茎があり、小さな群落を作る。
茎は始め赤味を帯びていて、上部でよく分枝して、群落では小さな茂みとなる。
葉には、根出葉と茎葉があり、茎葉は長さ5〜10cmの卵状長楕円形で互生する。
茎葉には粗い鋸歯があり、葉縁には微毛がある。葉表にはやや光沢がある。
花期は7月〜10月で、枝先に直径25〜35mmの頭花を1〜数個付ける。
舌状花は10〜20個あり、雌性で淡紫色〜白色。筒状花は両性で黄色い。
筒状花の花柱の先は2分岐し、扁平で先端が三角形をしていて、内側に向かい合って曲がる。
総苞は鐘形で、総苞片は3列につき、縁に毛があって、先が尖る。
痩果は長さ3mmの倒卵形で、腺毛と剛毛があり、冠毛は長さ0.5mmと極短い。
春の若葉は山菜で、良い香りがして、菜飯、和え物、天ぷらなどに利用される。

2022/8/9
網引湿原の最初のゲートを出て、少し行ったところで見かけたヨメナです。
関東在住のため見かけるのはカントウヨメナばかりでしたので、ヨメナは初見になります。
おそらく、子供の頃にはよく見かけていたのではないかと思いますが、記憶がありません。
小学生がこれがヨメナでなどという訳がないですよね。でも、ノジギクは覚えています。

ヒメジョオン(Erigeron annuus)
<キク目・キク科・キク亜科・シオン連・ムカシヨモギ属>



キク科ムカシヨモギ属の多年草で、北アメリカ原産の帰化植物。
明治維新の頃に渡来し、現在では日本中に広がっている。
草丈は30〜130cmで、茎は直立して分枝し、白いずいが詰まって中実。粗い毛がまばらにある。
根生葉は長い柄があり、花期には枯れてしまう。
上部の茎葉は披針形で、先が尖り、葉柄はほとんどない。
下部の茎葉は卵形で、基部が狭まって、翼のある葉柄のようになる。
縁の鋸歯は先が鋭く尖がり、基部が茎を抱くことはない。
花期は5月〜10月と長く、頭花は上部の枝先に多数ついて、直径は20o前後。
舌状花の花弁はごく細く、白色〜淡青紫色で雌性、オシベも冠毛もない。
なお、花弁が白色ではなく青紫色がかるのは、清浄な空気の中で育った時のみ。
筒状花は、黄色で両性、長さ2mm前後の冠毛がある。
総苞片は披針形〜線状披針形で2〜3列に並ぶ。
痩果は長さ1mmに満たない長楕円形で、その寿命は35年とされる。
そのため、多数の種子を作ることと相まって、驚異的な繁殖能力を持ち、駆除は極めて困難。

※ よく似たハルジオンとの比較に付いては、こちらに比較写真を掲載しました。

2021/6/5
実家近くの川沿いを散歩中、土手の脇で咲いていたヒメジョオンです。
良く似たハルジオンとは、舌状花の幅が広めで数が少ないとか、ツボミが下を向かないなど見た目が異なります。
また、茎葉が茎を抱くことはなく、折ったときに茎が中実であることでも区別できます。
ハルジオンもどこかに咲いているのではと思ったのですが、近くでは見つけられませんでした。

オオキンケイギク(Coreopsis lanceolata)
<キク目・キク科・キク亜科・ハルシャギク連・ハルシャギク属>

2019/6/29             2019/7/6
キク科ハルシャギク属の多年草で、米国中部、南東部原産の帰化植物。
日本では全国に分布しているが、現在、外来生物法により輸入や流通は規制(※)されている。
草丈は30〜70cmで、根元から叢生する。そのため、2年目以降は株立ち上になることが多い。
根生葉は、生育初期は細長いへら状で、成長すると3〜5深裂する。
茎葉も同様であるが、葉柄は短く、対生することが多い。葉の両面には粗い毛がある。
花期は5月〜7月で、頭状花は直径5cm前後。舌状花は橙黄色で花冠の先は不規則に分かれる。
筒状花も橙黄色で、花床に細長い鱗片がある。頭状花は総苞片が二重に取り巻いている。

※ 違反した場合、個人の場合、最高で懲役3年以下、あるいは罰金300万円以下となっています。
法人の場合は、罰金は1億円以下となります。下手に捨てたりすると違反になることがあるのでご注意を。
下記の環境省の資料に解説があります。
オオキンケイギクは、「特定外来生物」です!
みんなで駆除しようオオキンケイギク[PDF]

2019/6/29,7/6
実家の庭の片隅で、オオキンケイギクが大きく育ち、倒れながらも花を付けていました。
多くの花が枯れており、花期も終盤だったようです。厄介者なので、一部残して処分しました。
もちろん、種がこぼれたりしないよう、ビニールの袋にしっかりと入れて収集に出しました。
右の写真は、1本だけ残っていた脇芽です。後は、ごらんの様に切り取ってしまいました。

ハルシャギク(Coreopsis tinctoria)
<キク目・キク科・キク亜科・ハルシャギク連・ハルシャギク属>

キク科ハルシャギク属の一年草で、北アメリカ原産の帰化植物。
日本では各地で逸出して野生化し、全国的に見られる。
草丈は60〜120cmで、葉は対生して、下部では1羽状に分裂し、頂裂片は長さ10〜60mmの倒披針形。
茎葉は1〜3回羽状に分裂し、頂裂片は長さ10〜45mmの線状披針形。稀に単葉となる。
花期は7月〜9月で、花序柄は長さ1〜15cm。茎先に直径3〜5cmの頭状花を付ける。
総苞は皿状で、舌状花は8個前後ある。舌状花は先が黄色で、基部が紫褐色になることが多い。
筒状花の花冠は長さ3mm弱で暗赤褐色で冠毛はなく、花床には鱗片がある。

2019/6/29,7/6
実家の庭に植えられていたこともあるのですが、市ノ池公園で雑草に混ざって咲いていました。
単色のオオキンケイギクと異なり、中心部の紫褐色の部分がアクセントになっています。

アメリカタカサブロウ(Eclipta alba)
<キク目・キク科・キク亜科・ヒマワリ連・タカサブロウ属>


キク科タカサブロウ属の1年草で、南米原産の帰化植物。
草丈は20〜70cmで、茎には伏した剛毛があり、よく分枝する。
下部の茎は横に這い、上部の茎は直立して、折ると傷口がすぐに黒くなる。
葉は節毎に対生し、長さ6〜10cmの長楕円形で、縁に浅く粗い鋸歯があり、粗い毛がある。
下部の葉は、基部に向かって幅が狭くなり、翼状となる。
上部の葉は、狭披針形になり、葉柄はないか、極短い。
花期は8月〜10月で、葉腋から花茎を伸ばし、白い頭花を1つ付ける。
なお、花茎の長さに関しては、タカサブロウより短くなる傾向がある。
頭花の直径は8〜10mmで、よく似たタカサブロウより一回り小さい。
舌状花は雌性花で2列に並び、中央の筒状花は両性花で、花冠の先は4裂する。
総苞片の先は三角状の尖り、幅が狭くて大きさにばらつきがあり、隙間が多い。
タカサブロウの総苞片は幅が広くて丸みを帯び、その分、隙間は狭くなる。
痩果を上から見たとき、4綾の菱形(舌状花は3綾)で、長さは2o前後ある。
タカサブロウの痩果には翼があり、上から見ると切れ長の眼のようで、長さは3mm前後ある。
かつては、どちらもタカサブロウとされていたが、別種と認識され、現在に至っている。

2017/8/17
実家近くの側溝内で、白い小さな花を咲かせているアメリカタカサブロウを見かけました。
最初、タカサブロウか迷ったのですが、総苞片の形や痩果の上面の形から本種としました。

タカサブロウ(Eclipta thermalis)
<キク目・キク科・キク亜科・ヒマワリ連・タカサブロウ属>


キク科タカサブロウ属の1年草で、在来種。別名はモトタカサブロウ。
日本では、本州から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、東南アジア、南アジアに広く分布する。
そのため、日本に分布するものは、史前帰化植物とも言われている。
草丈は10〜70cmで、茎は赤紫色で、伏した剛毛があり、よく分枝する。
下部の茎は横に這い、上部の茎は直立して、折ると傷口がすぐに黒くなる。
葉は対生し、長さ3〜10cmの披針形で、縁に浅く粗い鋸歯があり、両面には伏毛がある。
葉柄がなく、基部に向って幅がしだいに狭くなり、基部はやや広がる傾向がある。
花期は7月〜9月で、葉腋や茎先に頭花を付け、直径は7〜10mmである。
外周に雌性で白色の舌状花が2列に並び、内側に両性で緑白色の筒状花が付き、先は4裂する。
総苞片は2列で三角状に尖り、幅が広めで丸みを帯び、草質で毛があり内片が短い。
痩果は冠毛がなく、上から見たとき4綾の菱形(舌状花は3綾)で、縁は平滑で翼がある。
なお、痩果の上面が緑色の未熟な状態の場合、痩果の翼が白色である。
かつては、どちらもタカサブロウとされていたが、別種と認識され、現在に至っている。
よく似たアメリカタカサブロウとは以下の点で識別できる。
・葉の鋸歯は、タカサブロウの方が細かく、やや不明瞭である
・総苞片の間はアメリカタカサブロウは広く、タカサブロウは狭い
・タカサブロウの痩果には翼があるが、アメリカタカサブロウにはない

2022/8/27
網引湿原のバイオトイレ、その横にある側溝の中でタカサブロウが花を咲かせていました。
アメリカタカサブロウと区別がつかなかったので、痩果の形状を確認することにしました。
下段がその結果ですが、痩果の上面の形では判断できず、ばらしてみました。
その結果、痩果の周りに翼(未熟なうちは白い)が確認できたので、タカサブロウと判明しました。


アメリカタカサブロウとタカサブロウ

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<アメリカタカサブロウ>            <タカサブロウ>  .
よく似たアメリカタカサブロウとタカサブロウの識別点は、下記の通りです。
・葉の鋸歯は、タカサブロウの方が細かく、やや不明瞭である
・総苞片の間はアメリカタカサブロウは広く、タカサブロウは狭い
・タカサブロウの痩果には翼があるが、アメリカタカサブロウにはない
写真のように明確に区別できるのは、痩果の翼の有無のみで、他の識別点には微妙な所があります。


サワヒヨドリ(Eupatorium lindleyanum var. lindleyanum)
<キク目・キク科・キク亜科・ヒヨドリバナ連・ヒヨドリバナ属>


キク科ヒヨドリバナ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア、ミャンマー、フィリピンに分布する。
草丈は40〜80cmになり、葉は長さ6〜12cmで、無柄で対生し、鋸歯がある。
育ちの良い個体では、3深裂、3全裂し、6個が輪生しているように見えるものもある。
良く似たヒヨドリバナとは、一回り小さく、葉が細く、葉柄がない点で区別できる。
上部に散房状に多数の頭花を付ける。頭花は、5個の両性の筒状花からなるものが多い。
筒状花は、花冠の先が浅く5裂し、メシベの花柱は花冠から飛び出して、先端は2裂する。
花冠の花色は、淡い紅紫色を帯びたものが多いが、色の濃いものから白色のものまで変異が大きい。
よく似た花が幾つかあるが、葉の特徴から識別することができる。
・ヒヨドリバナ  葉は対生し、短い葉柄がある
・サワヒヨドリ  葉は対生し、葉柄がない。葉は3脈が目立つ
         ※ 3深裂〜3全裂して6個が輪生しているように見えることがある
・ヨツバヒヨドリ 葉は4個(3個〜5個)が輪生する
・フジバカマ   葉は対生して、下部では3深裂する

2022/8/9
網引湿原第2〜第3湿原では、所々でサワヒヨドリが花を咲かせ始めていました。
花の色は、淡紅紫色のものから純白のものまであり、それらがバラバラに散らばっています。


2022/10/11
8月のときよりは咲き進んでいて、ちょうど花の盛りといった所です。
葉の写真が今一つ分かりにくかったので、撮り直しました。3脈が良く分かると思います。


2023/8/5
今年もサワヒヨドリが咲き始めていました。この個体は純白に近い花を付けています。
サワヒヨドリの特徴である、対生する葉の3脈も見えています。

ヒヨドリバナ(Eupatorium makinoi)
<キク目・キク科・キク亜科・ヒヨドリバナ連・ヒヨドリバナ属>

 
キク科ヒヨドリバナ属の多年草で、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布する。
草丈は1mを超え、葉には短い葉柄があり対生する。葉は長楕円形で先が尖り、鋸歯がある。
良く似たサワヒヨドリより一回り大きく、葉幅があって、葉柄がある点で区別できる。
なお、葉の脈が黄色くなり、斑紋のように見えるものはジェミニウィルスに感染したものである。
花期は8月〜10月で、上部に散房状に多数の頭花を付ける。頭花は、両性の筒状花が5個のものが多い。
筒状花は、花冠の先が浅く5裂し、メシベの花柱は花冠から飛び出して、先端は2裂する。
花冠の花色は、白色のものが多いが、淡紅紫色を帯びるものもある。
和名は、ヒヨドリが鳴く頃に花を咲かせることに由来するとのこと。
よく似た花が幾つかあるが、葉の特徴から識別することができる。
・ヒヨドリバナ  葉は対生し、短い葉柄がある
・サワヒヨドリ  葉は対生し、葉柄がない。葉は3脈が目立つ
         ※ 3深裂〜3全裂して6個が輪生しているように見えることがある
・ヨツバヒヨドリ 葉は4個(3個〜5個)が輪生する
・フジバカマ   葉は対生して、下部では3深裂する

2022/8/16
網引湿原の駐車場から少し最初の獣害防止ゲートの方に進んだ所で見かけたヒヨドリバナです。
湿原の方ではサワヒヨドリが多く見られたのですが、ここは湿地ではないので、ヒヨドリバナです。
ヒヨドリバナの葉には、下段の写真のように葉柄があることで確認できます。
また、サワヒヨドリの葉では目立つ3脈が、このヒヨドリバナの葉にはありません。


2022/10/11
8月のときよりは咲き進んでいて、ちょうど花の盛りといった所です。
葉の写真が今一つ分かりにくかったので、撮り直しました。
サワヒヨドリの葉との違いが良く分かると思います。

ハキダメギク(Galinosoga ciliata)
<キク目・キク科・キク亜科・メナモミ連・コゴメギク属>

キク科コゴメギク属の1年草で、メキシコ原産の帰化植物。
和名は、牧野富太郎博士が東京世田谷のはきだめで見つけた事に由来するとか。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に定着している。
海外でも、南アメリカやヨーロッパ、アフリカ、アジアと広範囲に帰化し、分布している。
茎は、根元から2つに分枝する事を繰り返し、高さ15〜60cmになる。
葉は対生し、卵形〜卵状被針形で、波状の浅い鋸歯がある。茎や葉など全体に軟毛がある。
花期は6月〜11月で、上部の枝先に、直径5oほどの小さな頭花を1個付ける。
頭花の周りには、白い舌状花が普通は5個並び、その内側に多数の黄色い筒状花が付く。
総苞は半球状で、総苞片と花柄には腺毛がある。冠毛は薄い鱗片状で、縁が羽毛状に裂け、先が尖る。

2022/6/18
網引湿原のバイオトイレの裏手で、元畑と思われる所に、ハキダメギクがびっしりと生えていました。
ごらんの通り、一面を隙間もないくらいに覆い尽くしていました。

トゲチシャ(Lactuca serriola)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・アキノノゲシ属>



キク科アキノノゲシ属の一年草で、ヨーロッパ〜西アジア原産の帰化植物。
海外では、ほぼ全世界に侵入し、帰化している。
草丈は50〜200cmで、茎は直立して赤みを帯び、長い棘を散生する。
根出葉は長さ14cmの倒長卵形で、ロゼット状に付き、羽状に切れ込む。
茎葉は互生し、下部の茎葉は長さ3〜8pの倒披針形で、羽状に中〜深裂する。
無柄で茎を抱き、葉の基部は耳状に張り出し、その先は尖る。
縁には刺状の鋸歯があり、葉脈が白く目立つ。葉裏の中央脈に1列に刺が並ぶ。
なお、茎葉は基部で捻じれて葉面が横を向き、葉身が垂直になる。
花期は7月〜9月で、茎の上部で多数の枝を出し、円錐花序を形成して多数の頭花を付ける。
頭花には長い花柄があり、直径10〜12mm。淡黄色の舌状花15〜25個からなる。
総苞は円柱形で長さ5〜6mmであるが、果時には12〜13mmに伸びる。
痩果は長さ3.5mm前後の淡褐色の挟倒卵形で、4o前後の細長い嘴がある。
冠毛は白色で、長さは4〜5mm。早落性である。

2020/8/14
久しぶりに川岸を散歩していた時、葉が横向きになったノゲシのようなものを見つけました。
場所によっては、ちょっとした群落になっている所もありました。
葉は、アキノノゲシに似たトゲチシャの特徴に似ていますので、葉裏を確認しました。
主脈に沿って刺が並んでいますので、トゲチシャに間違いはないようです。
残念ながら花期は終わって、綿毛が開いています。ツボミ状のものも、綿毛が開く前のものです。


トゲチシャの花

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2019/8/1
双葉SA奥の展望台と遊歩道のある場所で見かけたトゲチシャの花です。
花の形はアキノノゲシとよく似ていますが、花色がアキノノゲシよりも濃い黄色です。


ブタナ(Hypochaeris radicata)
<キク目・キク科・タンポポ亜科・タンポポ連・エゾコウゾリナ属>

キク科エゾコウゾリナ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本では、北海道から本州の広い範囲に分布する。
海外でも、アメリカ大陸やオーストラリア、ニュージーランドなど多くの地域に帰化している。
葉はロゼット状で裏面には毛がびっしりと生えている。
その中心から30〜50cm程の花茎を出し、花茎は途中で枝分かれする。
花茎には、葉は付かないが、葉が退化した鱗片状のものは付いている。
花茎の頂部に、直径3cm程の黄色い舌状花のみからなる頭花を付ける。
ブタナの名前は、フランス語の「Salade de porc」(ブタのサラダ)に由来する。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場、その近くで見かけたブタナです。
どこででも見かけることが多いブタナですが、ここで見たのは1ヶ所だけでした。
おそらく、除草作業などで手入れが行き届いているからでしょうか。
ちなみに、左の写真の左下にはオオニワゼキショウが写っています。ブタナよりかなり小さいです。









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