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播州地方で見かけた野草(夏X)



実家近辺や兵庫県内などを移動する際に見かけた野草です。
といっても、出かけた際にちょこっと撮影しただけのため、あまり多くはないです。
今後、機会を見つけて充実させていきたいと思っています。

< トピック >
今回、新たに見かけた下記の野草を追加しました。
ベニヒダタケ、カワラタケ、ウチワタケ、ラッコタケ、オオミノコフキタケ



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
イワヒバ目
イワヒバ科(イワヒバ)
ウラジロ目
ウラジロ科(ウラジロ、コシダ)
ウラボシ目
シシガシラ科(シシガシラ)
 
イボタケ目
イボタケ科(ツブイボタケ、ボタンイボタケ)
ハラタケ目
ウラベニガサ科(ベニヒダタケ)
テングタケ科(オニテングタケ)
ハラタケ科(ノウタケ)
ヒダナシタケ目
タコウキン科(ヒイロタケ、カワラタケ、ウチワタケ)
タバコウロコタケ科(ラッコタケ)
マンネンタケ科(オオミノコフキタケ、マンネンタケ)
キノコの不明種
不明種(1)〜(5)
 
ツノホコリ目
ツノホコリ科(ツノホコリ)
播州地方で見かけた夏の野草(夏W)
和名インデックス


イワヒバ(Selaginella tamariscina)
<イワヒバ目・イワヒバ科・イワヒバ属・イワヒバ亜属>
 
イワヒバ科イワヒバ属に属するシダ植物で、在来種。
和名は、枝葉がヒノキ(桧)に似て、岩の上に自生することに由来する。
日本では、北海道から本州、四国、九州、沖縄と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、ロシア、インド、タイ、フィリピンに分布する。
草丈は10〜20cmで、根や担根体が絡み合った仮根を直立し、仮幹から多数の枝を輪生する。
仮幹から出た葉状の枝は、羽状に数回分枝しながら広がり、基部から根のような担根体を出す。
枝には、鱗片状の葉が密生し、葉には背葉と腹葉の2形態がある。
枝は数回分枝して成長を止め、先端に四角柱状の胞子嚢穂を付ける。
胞子嚢穂の多数の胞子葉には胞子嚢が1個ず付くが、2種類あり、胞子が異なる異形胞子である。
大胞子嚢は4個の大胞子を持ち、小胞子嚢は多数の小胞子を持つ。
大胞子から雌性の前葉体、小胞子から雄性の前葉体が生じ、前葉体は内生型で胞子の中で成熟する。
なお、乾燥すると枝は内側に巻き込むように丸まり、十分に水が補給されると数時間〜数日で広がる。

2022/6/7
高御座山を降り切る少し前に見かけたイワヒバです。
イワヒバが自生しているのは初めて見ました。周辺に多くあり、ちょっとした群落になっていました。

ウラジロ(Gleichenia japonica)
<ウラジロ目・ウラジロ科・ウラジロ属>

ウラジロ科ウラジロ属のシダ植物で、在来種。
日本では、本州中部以南から四国、九州、南西諸島に広く分布する。
海外では、台湾、中国からインドなど、アジアの熱帯域にまで広く分布する。
根茎は匍匐して横に這い、直径3mm前後と太くて長く、よく這い回る。
本土では低山の林内に生え、日当たりの良い疎林では大群落を作ることがある。
よく繁茂した場所では、互いに寄りかかって絡み合い、高さ2mを越える純群落になる。
葉柄は長さ30〜100cm、緑色で平滑。葉柄の先に1対の羽片からなる葉を付ける。
羽片は長さ60〜90cm、幅18〜28cmで、二回羽状複葉に切れ込む。
小羽片は長さ11〜16cm、幅1.2〜2.4cmで、 片側に25〜35個つき、 深裂する。
裂片は長さ7〜12mm、幅2〜3mmの線形で、基部は幅広く小軸に付き、葉質は薄いが硬い。
葉表はつやがあって、裏面は粉を吹いて白っぽく、ウラジロ(裏白)の和名の由来である。
この羽片の間に休止芽があり、翌春には休止芽が伸びて、葉柄の先に新たな1対の葉が出る。
このように年々、葉の段が1つずつ積み上がっていくが、本土では多くて3段(2m)程度で終わる。
しかし、湿潤な沖縄や熱帯などでは、さらに伸びて、熱帯では10mを越すこともある。
なお、羽片の長さも、本土では長くても1mほどであるが、沖縄では1対で3mを越える。
胞子嚢群は縁と中肋の間に付き、胞子嚢は3〜4個で、包膜は無い。

2022/6/7
高御座山を降り切る少し前に見かけたウラジロです。
正月に鏡餅の下に敷く小さいものしか見たことがなかったのですが、ここのは巨大です。
コシダ同様に、葉の間から葉柄を伸ばして、その先に1対の葉が大きく展開しています。
驚いたのはその高さで、私の背丈の倍以上、おそらく3mは優に超えていると思われます。
後で調べると、本土では3段に積み上がって、せいぜい2m程度にしかならないとの事。
しかし、ここのウラジロは私の背丈の倍以上あり、とても2mではききません。
その葉も巨大で、1つの長さは1m以上あると思われます。


2022/6/18
最初の網引湿原獣害防止ゲートを入った直ぐ横とか、第2湿原に向かう途中などでウラジロを見かけました。
実家近くの山では見かけませんが、少し奥の山や山裾には結構分布していそうです。
コシダ以上に新葉の展開が進み、今年の新葉が鳥が翼を開いたような感じで並んでいました。
古い昨年以前の葉は濃い緑色ですが、新葉は瑞々しい黄緑色をしています。

コシダ(Dicranopteris linearis)
<ウラジロ目・ウラジロ科・コシダ属>

ウラジロ科コシダ属のシダ植物で、在来種。アレロパシー作用を有している。
日本では、本州の福島県以南から四国、九州、南西諸島に広く分布する。
海外では、朝鮮半島から中国南部、台湾、東南アジアからインドにかけて分布する。
ウラジロにいろいろな点で似ているが、葉が繰り返して2分枝する点が異なる。
根茎は太い針金状で地下を長く横に這い、光沢のある金褐色の毛を密生する。
間隔を開けて葉を付け、葉は全体として2mを越える。
葉柄は0.2〜1mで、そこに対生する羽片を伸ばして、その間から次の葉柄が伸びる。
これを繰り返すので、全体としては羽状複葉となるが、その羽片が2分枝する。
葉柄は褐色で光沢があって硬く、角軸や成長の止まった先端に赤褐色の毛がある。
側羽片はほぼ等分に数回の二分枝を繰り返し、先端と分岐部分には一対の小羽片がつく。
小羽片は15〜40cm、幅3〜8cmの長楕円状披針形で羽状に深裂する。
裂片は15〜50対付き、長さ10〜50mm、幅2〜4mmで、先は凹頭になることが多い。
表面は艶のある黄緑で、裏面は粉を吹いたように白く、まばらに赤褐色の毛がある。
葉質は薄くて硬く、裂片は線形で縁は滑らかである。胞子嚢群は中肋と葉縁の間に一列付く。

2020/8/6
觀濤處(かんとうしょ)に上っているとき、通路脇に大きな群落を作っていました。
この辺りの山では、最も普通に見られるシダで、大きな群落を作っていることが多いです。
正月にウラジロを取りに来るのですが、生えているのはほとんどがこればかりです。
そのため、ウラジロの生えている場所は教えてもらえず、自分で探すしかないのです。
その際、厄介なのがサルトリイバラで、藪漕ぎ最大の難敵です。何度も泣かされました。


2022/6/7
高御座山を降り切る少し前に見かけたコシダで、この辺りの山では普通に見られる種類です。
しかし、その先にシュンシュンと伸びた枝のようなものが見えていて、初めて見るものでした。
後で調べてみると、ウラジロ科には休止芽が翌春に伸びて、何段にも伸びるものがあるそう。
本種もその1つで、昨年の葉の間から新しい葉柄が伸びて、二股に分かれたところでした。
まだ、葉柄が伸びたところで、先に付いた2股に分かれた葉は丸まった状態です。
そのため上記のような、見慣れない変わった形になっていたものです。
そこで気になったのが、以前に撮影した写真(2020/8/6)で、改めて見直してみました。


2020/8/6
各々の写真の一部を拡大したのが上記の写真です。
よく見ると、二股の葉柄の中心から新しい葉柄が伸び出しているのが確認できます。
左は葉柄が伸び出したばかりで、葉は展開していないので、状態としては2022/6/7と似たものです。
ただ、その違いは明らかで、葉柄の長さがまったく異なります。10倍近い差がありそうです。
おそらく、短いのが普通なのではないでしょうか。
そのため、最初の右の写真のように、葉が重なり合うように茂って見えるのだと思います。
上記右側の写真は、最初の右側の写真の右下隅を拡大したものです。
初々しい黄緑色の葉は、新たに伸びた葉柄の先で展開したばかりの新葉です。
葉柄が短いので、大きく飛び出すこともなく、ごく自然な感じで新葉が馴染んでいます。
高御座山のコシダが、この後、どのような姿になるのか興味がありますね。
ウラジロのようにもたれ合って高く伸びるのか、重さに耐えきれず倒れてしまうのか。
機会があったら、高御座山にもう一度行ってみたいと思います。


2022/6/18
網引湿原の湿原をつなぐ散策路などの脇でコシダの群落を見かけました。
今年の新葉が伸び出して2段になっています。高御座山とは異なり、かなり葉が展開しています。
新しい葉柄の長さは数十cm程度で、高御座山で見たものの半分程度の長さでした。


2022/6/18
この日、網引湿原からの帰り道、高御座山に立ち寄って様子を見てみることにしました。
まだ、日が経っていないので十分に葉は展開していませんでしたが、それらしい姿になっていました。
今のところ、葉が展開したからと言って倒れるようなことはないようです。
この葉柄の長さは、日照と関係しているのかもしれません。
日当たりの良い観涛処では短く、日蔭の高御座山は長く、多少陽の当たる網引湿原はその中間といった所です。

シシガシラ(Blechnum niponicum)
<ウラボシ目・シシガシラ科・ヒリュウシダ属>


シシガシラ科ヒリュウシダ属の常緑シダ植物で、日本固有種。木陰のやや湿った斜面に生える。
日本では、北海道から本州、四国、九州、屋久島と広範囲に分布するが、琉球列島には分布しない。
太い根茎があり、多くの葉を密集して付ける。茎は極短く立ち上がり、茎には多数の葉を密生する。
葉の大部分は栄養葉で、ロゼット状に広がる。少数の胞子葉は斜上するか立ち上がる。
茎には鱗片を密生し、葉の基部にも少し鱗片が付く。葉軸の上面に溝がある。
栄養葉は、1回羽状複葉で40cm程の長楕円形で、羽片は濃緑色で艶はなく、少し厚みがある。
個々の羽片は線形で先は丸みを帯び、軸から直角に出て葉先の方に少し曲がる。
胞子葉は斜上するか立ち上がり、全体の形状は羽片がまばらな点を除き、栄養葉と同じである。
なお、羽片の表は褐色で、緑色にはならない。 胞子葉の羽片は両縁が裏側に巻き、胞子嚢群を包み込む。

2022/6/18
最初の網引湿原獣害防止ゲートから第1湿原の獣害防止ゲートまでの林内、そこで見かけたシシガシラです。
ちょうど、胞子葉を伸ばして、展開させているところでした。
上段左は、胞子葉の展開はほぼ終わっており、右は3本の胞子葉が展開途中でした。
なお、その左右にある褐色のものは昨年の胞子葉で、枯れ残っているようです。
下段は、上段左の胞子葉を拡大したもので、左が葉表、右が葉裏になります。

ツブイボタケ(Thelephora vialis)
<イボタケ目・イボタケ科・イボタケ属>



イボタケ科イボタケ属のキノコで、日本や中国、南北アメリカに分布する。
秋に広葉樹林下の地上に発生する。
子実体は高さ10〜15cm、直径6〜8cmになる中型のキノコである。
八重咲きの花弁のように多数の傘が付き、傘は長さ4〜8cm、厚さ1〜4mmの扇形。
傘の背面は乾燥して淡黄色〜淡褐色〜青灰色で、放射状に小しわの条線があり、環紋がある。
傘の腹面は帯紫褐色で、子実層托は放射状の低いしわが畝状につき、ほぼ平滑である。
よく似たイボタケは、傘の腹面に淡褐色で先の丸い細かな突起が多数ある。

2022/8/16
網引湿原第1湿原の出口の手前で、通路脇にマイタケのような形のキノコが生えていました。
周りがきれいに整理されているので、清掃作業時に見つけられた方が手入れされたようです。
傘はマイタケのような柔らかさはないように見え、タコウキン科のように固そうです。
調べてみるとイボタケ属のようで、似たものにイボタケ、ボタンイボタケ、ツブイボタケがあります。
ボタンイボタケの傘の色は、若いときは橙黄色で、老菌だとくすんだ色になり、腹面にはイボがびっしり。
イボタケの傘の色は青黒い色で、腹面には名前の通り乳頭状のイボがびっしりと並んでいる。
ツブイボタケは背面は淡褐色〜青灰色で、腹面は帯紫褐色で皺はあるが平滑で、イボはない。
ということで、色と腹面にイボがない点で、ツブイボタケとしました。
ただ、発生時期が秋という点が引っ掛かります。



2022/8/27
時間が経ってしまったので、まだ、残っているか心配だったのですが、一部は健在でした。
前回撮った傘の背面と腹面が不鮮明だったので、撮り直したのが上記の写真です。
腹面は、低い皴のある灰紫褐色の地にポツポツと不規則な突起が見られます。
背面は、淡黄褐色の地に灰褐色の不規則な環紋が見られ、細かな皺が見られます。

ボタンイボタケ(Thelephora aurantiotincta)
<イボタケ目・イボタケ科・イボタケ属>


イボタケ科イボタケ属のキノコで、在来種。
日本では全国に、海外では朝鮮半島から中国、インドネシア〜ニューギニアに分布する。
夏から秋にかけて、コナラやアカマツの混生林の地上に発生する。
子実体は高さ5〜8cm、直径5〜15cmで、傘が八重咲きの花弁のように重なって付く。
個々の子実体は、幅広い扇形〜へら形で、表面は橙黄色〜橙褐色で縁は灰白色である。
表面には放射状の小じわが密にあり、裏面は橙黄色で、細かい乳頭状のイボに覆われる。
肉質は柔らかい革質で無味、乾くと漢方薬のような臭がある。

2022/8/27
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇に生えるボタンイボタケを見つけました。
1つは倒木の脇から生えた若い個体(左側)で、背面は白っぽくて、わずかに橙黄色が見られる程度でした。
ただ、倒木を持ち上げて腹面を見ると、橙褐色〜橙黄色、淡黄色と見事なグラデーションを見せていました。
もう1つは、地面に生えて大きく育ち、名前のようにボタンの花のような形になっていました。
背面は淡い橙黄色で、白っぽい縁取りとその内側の橙黄色の環紋が目立つ、きれいな色合いでした。



2022/8/27
前述のボタンイボタケの背面と腹面を拡大したものです。
若いボタンイボタケ(左側)では、背面全体が白っぽくて、環紋の橙黄色も淡いことが分かります。
成長の進んだもの(右側)では、白っぽい成長点の内側の橙黄色の環紋は、濃色になって目立ちます。
腹面は両者にあまり差はなくて、若い個体の成長点近くの色合いが、より白に近いくらいです。
その内側は、橙黄色〜橙褐色へと変わり、名前のとおり多くの細かい乳頭状のイボに覆われています。
その乳頭状のイボですが、若い個体ではいく分不明瞭な気がします。

ベニヒダタケ(Pluteus leoninus)
<ハラタケ目・ウラベニガサ科・ウラベニガサ属>

ウラベニガサ科ウラベニガサ属のキノコで、在来種。
日本を始め、北半球に広く分布する。
腐生菌で広葉樹の腐朽材などに群生したり、束生する。
傘は直径2〜7cmで、幼菌時は饅頭型で、徐々に傘が開いて中央が盛り上がった扁平な形になる。
傘の表面は、湿った所では黄色く、乾燥気味の所では黄色味を帯びた灰色になる。
湿っている所では、傘の周辺部分には条線が見られる。
ヒダは密に付き、最初は白いが、徐々に紅褐色を帯びて肉色に変わる。これが和名の由来。
柄は長さ3〜8cmの中空で、根本側がやや太くなり、表面は黄白色で繊維状。
肉は脆く、表面と同じような色味で、匂いや味は特にない。食用になる。

2023/8/5
網引第2湿原に入って直ぐの広場近くで、切り株から黄色いキノコが出ているのが目に留まりました。
少し離れて2個出ていたのですが、どちらも傘が開いていない幼菌で、裏面の確認ができません。
傘が黄色いキノコを調べてみると、キヌメリガサやタモギタケが見つかりました。
しかし、キヌメリガサはカラマツ林に生えるキノコだし、タモギタケの幼菌は形が異なります。
さらに調べているとベニヒダタケが見つかりました。幼菌の色や形はよく似ています。
傘裏のヒダが、時間と共に白色から紅褐色を帯びて色が変わるそうですが、確認できません。
そのため、断定はできませんが、その他の特徴から本種としています。キノコの同定は難しいですね。

オニテングタケ(Amanita perpasta)
<ハラタケ目・テングタケ科・テングタケ属・マツカサモドキ亜属・マツカサモドキ節>


テングタケ科テングタケ属のキノコで、在来種。分布の詳細は不明。
夏〜秋に、シイ・カシ・コナラなどの広葉樹林などに単生する。
傘は淡黄褐色〜淡褐色の地に、高さ2〜5mmの褐色の円錐形〜角錐形のいぼが散布する。
成菌の傘は、直径10〜17cmになる。ヒダは白色に近く、離生して密に付く。
柄は傘と同色で、下部は棍棒状に膨らみ、しばしば縦に深い割れ目が生じる。

2022/8/16
網引湿原第2湿原の手前の通路脇で、巨大なキノコが3個並んで生えていました。
こちらも周りが整理されているので、清掃作業時に見つけられた方が手入れされたようです。
まだ傘が開き切っていない幼菌で、最も奥のものが小さく、直径5cm前後でした。
中央のものが最も開いていて、直径で10cm強、手前のものは10cm弱といった所です。
調べてみると、オニテングタケかオオオニテングタケと思われます。
傘が開き切っていないので、どこまで大きくなるのか不明ですが、倍にはならない判断します。
オオオニテングタケは、傘の直径が30cmに達する巨大キノコなので、オニテングタケとしました。


2022/8/27
残っているかどうか気になっていたオニテングタケですが、傘は腐ってありませんでした。
太かった柄だけが、何とか残っているような状態でした。

ノウタケ(Calvatia craniiformis)
<ハラタケ目・ハラタケ科・ノウタケ属>


ハラタケ科ノウタケ属の1年生のキノコで、日本も含め、世界に広く分布する。
発生時期は夏〜秋で、林下の地上に発生する。
幼菌は白色〜黄褐色の半球形で、成菌は高さ5〜15cm、直径8〜15cmの倒卵形。
成菌の頭部は茶褐色の半球形で平滑であるが、成熟すると不規則な皺ができ、脳状になる。
表皮は外皮と内皮の2層構造で、内皮は褐色で、薄くてもろい。
内皮に包まれた基本体は、幼時には白いが、成熟すると黄褐色の胞子塊となり、悪臭がある。
基本体の下部は、長さ1〜3cmの逆円錐形の無性基部となる。色は頭部より淡色である。
幼菌は可食で、非常にいい出汁が出るとされるが、外観から採取の対象となることは稀。
なお、皺のない状態ではイロガワリホコリタケとよく似ているが、下記の点で識別可能。
・子実体表面は黄褐色で細かなひび割れに覆われるが、
 ノウタケよりイロガワリホコリタケの方が黄色味が強く、ひび割れが大きい
・2つに割ったとき、最初白かった肉が黄変するのがイロガワリホコリタケで、
 ノウタケは真っ白なままで、変色することはない

2022/8/27
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇に生える奇妙な幼菌を見つけました。
のっぺりとした形状で、傘と柄の区別が明確でない、見慣れない形状のキノコでした。
上段は通路側とその裏側から撮った写真で、傘らしき部分より柄らしき部分が淡色だと分かります。
下段は、その拡大写真で、左の写真は傘らしき部分と柄らしき部分の境目辺りになります。
右は、傘らしき部分の拡大ですが、どちらも表面は比較的平滑で、凹凸はあまり見られません。
いろいろ調べたのですが、なかなか似たものを見つけられませんでした。
あるとき、ノウタケの幼菌の写真を見て、これだと気が付きました。
多くがノウタケの成熟したシワシワの写真を載せていたので、気が付かなかったものです。
ただ、よく似たイロガワリホコリタケがあり、表面の色やひび割れの大きさが異なるとのこと。
そこで、両者の幼菌の写真と見比べた結果、色味やひび割れの状態から本種と判断しました。

ヒイロタケ(Pycnoporus coccineus (Fr.) Bondartsev & Singer)
<ヒダナシタケ目・タコウキン科・シュタケ属>

タコウキン科シュタケ属のキノコで、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布し、海外では中国、東南アジア、オーストラリアに分布する。
傘は4〜8pで、厚さは3〜7oと扁平で、半円形〜円形。
春から秋にかけて、広葉樹の枯れ木などに発生する。
傘表面や管孔の色は朱紅色で目立つが、古くなると退色し、灰色になる。
腹面は濃紅色で、古くなっても退色せず、菅孔状で、孔口は微細。

2022/6/18
網引湿原第2湿原の外れ、奥池の畔の樹に生えていたヒイロタケです。
湿原の中では見かけない朱紅色は、いやが上にも目を引きます。
この樹は枯れてはいませんが、弱っているのか、木肌の裂け目に広がっているようです。

カワラタケ(Trametes versicolor)
<ヒダナシタケ目・タコウキン科・シロアミタケ属>


タコウキン科シロアミタケ属のキノコで、木材を分解する白色腐朽菌で、世界で最も普通に見られる。
科名に関しては未確定で、タコウキン科、タマチョレイタケ科、サルノコシカケ科(暫定)などが使われている。
子実体は側着生で無柄であり、群生する。広葉樹または針葉樹の枯木、切株などに重なり合って群生する。
傘は幅1〜5cm、厚さ1〜2mmの半円形〜扇形で、貝殻状に湾曲する。
上面は同心円状の環紋を持ち、色の変異は多くて灰色、黄褐色、藍色、黒色などが見られ、微毛がある。
肉は薄く皮質で弾力性があり、強靭である。腹面は管孔が白色〜灰褐色で孔長は1mm前後。

2022/10/11
網引湿原第2湿原の入口近くの切り株で、大きく広がったカワラタケが見られました。
成長点近くは白色に近いのですが、そこから内側は黒褐色で、きれいな環紋が見られます。
腹面はきれいな白色で、丸い管孔がびっしりと並んでいます。

ウチワタケ(Microporus affinis)
<ヒダナシタケ目・タコウキン科・ツヤウチワタケ属>


タコウキン科ツヤウチワタケ属のキノコで、在来種。
日本、朝鮮半島から中国、台湾、タイ、ベトナムに分布する。
発生時期は初夏〜秋で、広葉樹の落枝や倒木から重なり合うようにして生える。
子実体は側着生で、柄は短いか無柄で、傘とほぼ同色である。
傘は幅2〜10cm、厚さ1〜3mmで、扇形〜半円形、ときに円形で、縁は薄い。
表面には黄褐色〜茶褐色の環紋があり、若い内は短毛が密生するが、後に無毛になる。
腹面は類白色で、孔口は微細(6〜8個/mm)。肉は白色で、薄くて硬い革質。
近縁種に傘の表面が無毛で光沢があるツヤウチワタケ(Microporus vernicipes)や
傘が厚く無毛で、光沢が鈍く環紋は不明瞭なツヤウチワタケモドキ(Microporus longisporus)がある。

2023/8/5
網引湿原第1獣害防止ゲートを入って直ぐの林内で、枯木にウチワタケが数十程度ですが、付いていました。
傘の裏も撮ったのですが、菅孔が細かいようで撮った写真では識別できませんでした。

ラッコタケ(Inonotus flavidus)
<ヒダナシタケ目・タバコウロコタケ科・カワウソタケ属>


タバコウロコタケ科カワウソタケ属の木材腐朽菌で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布する。
海外では、インド、ヒマラヤ地方に分布する。
発生時期は晩秋から初冬で、ブナやミズナラなどの広葉樹の立ち枯れや倒木に着生する。
子実体の傘は半円形で、棚状となり癒着していることがある。
傘の直径は2〜6cmで、表面は褐色。環紋と密毛で覆われ、長さ3mmほどの毛の層がある。
この毛は、やがて脱落して、地色の黒褐色となる。なお、柄はない。
傘の裏側の子実層托は管孔状である。

2022/10/11
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇の木に付いているキノコを見かけました。
傘の上面に不明瞭な環紋のようなものが見られますが、もさっとした印象を受けます。
また、上面に毛のようなものが見られ、腹面には丸い管孔がびっしりと並んでいます。
調べてみると、見た目や上面に毛があり腹面は菅孔である点から、ラッコタケではないかと判断しました。
ただ、似たものも多いので、写真だけからの判断では、間違っているかもしれません。

オオミノコフキタケ(Ganoderma austoria)
<ヒダナシタケ目・マンネンタケ科・マンネンタケ属>


マンネンタケ科マンネンタケ属の多年生のキノコ。
キノコ自体は灰褐色や茶褐色だが、ココアの粉状の胞子を撒き散らし、自身も覆われている事が多い。
しかし、不思議なことに胞子を吹き出す管孔面には全く付着せず、白いままである。
傘の形は半円形〜腎臓形で、傘の色は淡灰色〜灰褐色〜暗褐色と個体差があり、同心円状の環溝がある。
子実層托は管孔状で、白色〜淡黄白色。孔口は円形で4〜5個/mm。管孔は擦ると茶褐色に変色する。
近年、コフキサルノコシカケと思われていたものが、実は、本種であった事が分かっている。
特に、低地で見られるものは、ほとんど本種で、コフキサルノコシカケは深山で見られるとのこと。
ただ、見かけはコフキサルノコシカケと酷似しており、外見での判別は困難で、下記の点が異なるとされる。
・断面を見ると管孔と肉質部分の境界に黒い線が入るのがオオミノコフキタケ(コフキサルノコシカケにはない)
・殻皮の厚さが3o以上あるのがオオミノコフキタケ(コフキサルノコシカケは3o以下)
・胞子の大きさの違いがあり、オオミノコフキタケは8.5μm以上ある(コフキサルノコシカケはこの半分程度)
ただし、両者の特徴を併せ持つ中間型も見つかり、上記の判別法も決め手にならないとのこと。

2022/10/11
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇の木に付いているオオミノコフキタケを見かけました。
近づいて良く見ると、上の方にも1個付いていて、2個確認することができます。
まだ、胞子を放出していないので、傘の上面の環溝がきれいに見えています。
腹面はきれいな白色で、全面が丸い管孔で覆われています。

マンネンタケ(Ganoderma lucidum (Leyss. ex. Fr.) Karst)
<ヒダナシタケ目・タコウキン科・マンネンタケ属>



タコウキン科マンネンタケ属の1年生のキノコ。
レイシの別名で呼ばれることも多いキノコで、表面に光沢がある事が特徴。
子実体は1年生、初期にはこぶ状、成長すると偏心生の扇状になり、ときに中心生になり、直立する。
傘は5〜20cmと幅があり、扁平か多少中央が盛り上がる。
傘の表面は、最初は黄色であるが、茶褐色、褐色と変わっていく。
傘の背面は環溝と放射状のしわがあり、黄褐色、赤褐色、紫褐色と変異がある。
成長すると表層は硬い殻皮となり、表面に光沢がでてくる。
柄は硬く、中実で長さは5〜15cm、不規則に曲がり、凹凸がある。

2022/8/16
網引湿原第1湿原を出て、駐車場に戻る途中、小川の畔の樹の根元でマンネンタケを見つけました。
近づいて良く見ると、昨年の古い子実体と、初期のこぶ状で傘の部分がない幼菌が直ぐ側にありました(上段)。
上段の写真で、中央左寄りに暗褐色の昨年の子実体、左下に今年の子実体、右下に棒状の幼菌が見えます。
下段は各々を拡大したもので、今年の子実体は既に成長が止まっているように見えます。



2022/8/27
左側は、前回、成長が止まっているように見えた今年の子実体です。
今回は、裏側から撮ってみました。艶のある褐色の背面と淡黄色の腹面がくっきりと分かれています。
右側は、前回、棒状だった幼菌で、ずいぶんと傘が大きく育っていました。
成長点近くの淡黄色から基部の褐色の部分まで、きれいなグラデーションになっています。


2022/8/27
前回、写真を撮っていなかった昨年の古い子実体です。
傘の背面が艶のない暗褐色になって、虫に食われたのか穴が空いています。
今回、気が付いたのですが、手前に棒状の古い子実体があり、こちらも穴が空いています。
傘がないので、幼菌が十分に成長する前に気温が低下して、成長が止まってしまったようです。


2022/8/16
横にある樹の幹にも2個付いていて、こちらは柄の部分がほとんどないように見えます。
こちらは、どちらも成長中のようで、傘の周辺部の成長点の近くは淡黄色で若々しく見えます。
地面に生えている物とは異なり、柄の部分は短くて、大きな方では柄がないように見えます。


2022/8/27
前回、旺盛な成長を見せていた個体ですが、ほぼ、成長は止まったようです。
外周の部分が3段腹のようになって、下の部分が淡黄白色なので、成長は続いているのでしょうか。
右側の小さかった個体もずいぶん大きくなり、その右側に小さな幼菌も顔を出していました。


2022/10/11
マンネンタケもすっかり成長が止まって、傘の色もエンジ色に変わっていました。
左の写真は、上記の右側の写真の左側の個体です。
右の写真は、上記の右側の写真の奥に写っている若い個体です。

キノコの不明種

キノコの不明種(1)


<ハラタケ目・テングタケ科・テングタケ属?>
2022/8/27
傘は開き切って皿状になり、放射状に裂け目が出来ています。
背面は淡褐色で、少し濃色の長毛で覆われ、毛の多少が模様となり、中央部は毛が多くて褐色です。
ひだは淡暗褐色で密に付き、暗褐色で、肉は白色です。
柄は白色で中央より上側にツバがあり、その下部にはささくれ状の鱗片が付いています。
コテングタケモドキではないかと思っていますが、確証はありません。

キノコの不明種(2)


2022/8/27
まだ、傘が開いていない状態で、背面に丸くて先の尖ったイボが密生しています。
傘の末端側では、イボがきれいに列をなしており、放射状の筋模様になっています。
いろいろ調べてはみましたが、このような形状のイボがきれいに並んでいるものは見つけられませんでした。

キノコの不明種(3)

2022/8/27
切り株の近くで3つ並んでいた内の左端のキノコで、傘の背面は黄褐色でした。
右端のキノコも、半分ほどの大きさですが同じような色合いで、同一種と思われます。
比較的平滑で、ランダムにポツポツと凹みや穴が見られます。
腹面は白っぽい菅孔で、柄は背面と同じような色合いで、淡い縦筋が見られます。
背面の色などからヤマイグチの可能性があると思っていますが、確証はありません。

キノコの不明種(4)

2022/8/27
切り株の近くで3つ並んでいた内の中央のキノコで、傘の背面は灰褐色でした。
傘の背面や柄は、白い粉を吹いたようになっていて、そのために全体に白っぽく見えます。
いろいろ調べてはみましたが、このような特徴を持つキノコは見つけられませんでした。

キノコの不明種(5)

2022/10/11
網引湿原第1湿原手前の林内で、通路脇の倒木に点々と付いているキノコと見かけました。
傘の上面が茶褐色で、柄も少し濃色の茶褐色と、模様などのこれといった特徴はありません。
そのため、似たようなキノコが多くて、この写真から同定することはできませんでした。

ツノホコリ(Ceratiomyxa fruticulosa)
<ツノホコリ目・ツノホコリ科・ツノホコリ属>


ツノホコリ属は原生粘菌の一部に近縁であり、まとめてツノホコリ綱とすることが提唱されている。
ツノホコリ属は腐朽木上などに眼で見えるサイズのゼラチン質の子実体(担子体)を形成する。
その表面には、1個ずつ胞子をつけた柄が多数生じる。
個々の子実体の大きさは数mm程度であるが、群生するために目立つ。
色は白色のものが多いが、黄色のものや桃色、青色のものもいる。

ツノホコリは、世界に広く分布し、日本でも北海道から南西諸島まで、全国に分布する。
発生は春から秋であるが、特に梅雨明け頃に腐った木の上、稀に生木の樹皮の上に発生する。
ツノホコリの子実体は、普通、高さ1〜2mmほどであるが、10mmに達することもある。
まばらに分枝するものが最も普通であるが、下記のような変種もある。
・エダナシツノホコリ(var. descendens Emoto):坦子体は円柱状で分枝しない
・カンボクツノホコリ(var. arbuscula):坦子体は円柱の先端から放射状に枝が出る
・ナミウチツノホコリ(var. flexuosa):坦子体の分枝が少なく、枝が長く、曲がる
・タマツノホコリ(var. porioides):坦子体がハチの巣状の球形

2022/8/27
網引湿原第1湿原の外を周る通路脇で見かけたガンクビソウ、その通路の反対側で見かけました。
苔生した倒木の側面に沿って、小さな白いものが点々と並んでいて、けっこう目立っていました。
近づいて良く見ると、白くて細いひも状のものが多数集まった球状のものが、寄り集まっていました。
調べてみると、ツノホコリ属の1種であるツノホコリと分かりました。
上記のようにいくつかの変種もあるようですが、最も普通のツノホコリのようです。









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