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相模原北公園・道保川公園 野草編(春)



自宅から少し離れた所に相模原北公園があり、バラの庭園には多くの人が訪れます。
また、公園の一部では、自然が手つかずで残されており、いろいろな野草も楽しめます。
道保川公園は、住宅街の中にある小さな公園ですが、湧水があり、ゲンジボタルが自然分布しています。
これらの公園に、時々出かけて撮りためた四季折々の植栽や野草をご紹介したいと思います。
限られた時期だけですが、何かの参考にしていただければ幸いです。



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
キジカクシ目
アヤメ科(チリアヤメ)
キンポウゲ目
キンポウゲ科(キクザキイチゲ、スハマソウ)
バラ目
バラ科(ウメ、ノイバラ、バラ)
フトモモ目
ジンチョウゲ科(ミツマタ)
ミズキ目
ミズキ科(ヤマボウシ)
ユリ目
ユリ科(カタクリ)
相模原北公園・道保川公園の野草(春)
和名インデックス


チリアヤメ(Herbertia lahue)
<キジカクシ目・アヤメ科・ヘルベルティア属>
 
アヤメ科ヘルベルティア属の多年草で、チリ、アルゼンチンが原産地。
日本では、園芸品種として栽培されているが、関東以西の平野部では逸脱して野生化しているところもある。
条件が良いとこぼれ種で自然に増え、芝生の中などで点々と可憐な花を咲かせていることがある。
草丈は5〜10cmで、夏の間は休眠し、秋にひだのある針状の葉を四方に数枚出す。
花期は4月〜5月中旬で、草丈の割に直径3cmほどと大きめの濃青色の花を付ける。
花は、丸みのある3個の外花被片と、小さな3個の内花被片からなり、中心部に濃淡の模様がある。
なお、花は朝に開花して、夕方にはしぼむ1日花であるが、次々と咲き続ける。
球根は小さな紡錘形で、下方に伸長肥大し、さらにけん引根に引かれて、地中深くに潜る。

2017/5/24
バラ園の外れにあった裸地、その一部に本種が緑色の花茎を点々と立ち上げていました。
半分以上は既に果実になっていましたが、まだ、ポツリポツリと花を付けていました。
撮影したのが午後だったので、既にしぼみかけていたのか、大きく開いたものは見当たりませんでした。


チリアヤメの花

     .
2019/6/5
灯台下暗しではないのですが、何の気なしに自宅のベランダから下の覗いたときに気が付きました。
何時からあったのか分かりませんが、たくさんのチリアヤメが花を咲かせていたのです。
個々の花はそれほど大きくはないのですが、たくさん咲くと見栄えがしますね。


キクザキイチゲ(Anemone pseudoaltaica H.Hara)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・イチリンソウ属>
 
キンポウゲ科・イチリンソウ属の多年草で、在来種。
日本では北海道から本州の近畿以北に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は10〜20cmで、茎は直立して、茎葉が3枚輪生する。
葉は、長さが3〜10cmの3出複葉で、小葉は深裂する。
花期は3月〜5月で、茎頂に直径2〜3cmの花を1個付ける。
なお、花弁に見えるのは萼片で、淡青紫色〜白色と変異があり、長楕円形で8〜13個付く。
和名は、花の形が菊に似ることに由来する。
花後、落葉広葉樹林の若葉が広がる頃には地上部は枯れてなくなり、翌春まで休眠する。

アズマイチゲによく似ているが、葉の切れ込みが本種の方が深く、その点で区別可能。

2008/3/16
林内の落ち葉の間からキクザキイチゲが顔を出して、可憐な花を咲かせていました。
花弁のように見える萼片の色は、淡赤紫色のものや極淡い紫や白色に近いものもありました。

スハマソウ(Hepatica nobilis var. japonica f. variegata)
<キンポウゲ目・キンポウゲ科・ミスミソウ属>
 
キンポウゲ科ミスミソウ属の多年草で、在来種。
雪の下でも常緑であることからユキワリソウ(雪割草)の名でも知られる。
北半球の温帯に自生し、日本では東北と関東地方、四国に分布する。
3裂した葉の裂片の先は尖らず、円頭となる。葉には白斑が入ることが多い。
花期は3月〜4月で花茎の頂端に1つの花を付ける。萼片のように見えるのは茎葉。
花弁のように見えるのは萼片で、直径10〜15oで7個前後。花弁はない。
色は太平洋側のものは白色が大半だが、日本海側のものは紅色から紫色を帯び、変異は少ない。

2008/3/16
ユキワリソウと呼ばれるのは、本種以外にミスミソウ、オオミスミソウがあります。
大まかには、ミスミソウは西日本、オオミスミソウは本州日本海側、スハマソウは東日本に分布しています。
そして、ミスミソウは葉の先端が少し尖り、スハマソウは尖らずに丸いのが特徴です。
花の直径はスハマソウが10〜15mmなのに対して、オオミスミソウは15〜20oとやや大きいです。
本種の場合、撮影地が関東であり、葉の先が丸い点から、スハマソウと判断しました。
なお、萼片が紅色なので、日本海側のものを植栽している可能性もあります。

ウメ(Prunus mume)
<バラ目・バラ科・サクラ属>
 

     

   
バラ科サクラ属の落葉高木で、中国原産とされる。
日本には古代に持ち込まれたとの説や日本原産との説もあり、明確ではない。
ウメは、花を楽しむ観賞用品種と、実を取るための実梅品種がある。
また、ウメは、「自花不結実性」が強く、2品種以上混生させないと結実しない品種がある。
ウメは、一節に花が一つしか付かないため、複数の花が付くモモよりも華やかさは劣る。
花色は、白からピンク、赤まで種類は多く、一重と八重がある。
※ 果肉には、クエン酸をはじめとする有機酸が多く含まれるため、健康食品として販売される。
しかし、未成熟な果実や核の中の種子には、青酸配糖体が含まれ、条件によっては有毒となる。
といっても、梅酒の未成熟な実や梅干しの種は、アルコールや塩分で毒性は低下している。

2008/3/16
相模原北公園の一角には、梅園があり、木の数はそう多くはありませんが、ウメの花を楽しめます。
樹種は普通のものや枝垂れがあり、花も白梅から紅梅まで様々な花色のものが植えられています。

ノイバラ(Rosa multiflora)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>


 
バラ科バラ属のつる性落葉低木で、日本のノバラの代表種。
沖縄以外の日本各地の山野に多く自生する。
日本以外では朝鮮半島に分布する。
樹高は2mほどになり、茎は枝分かれして直立するが、他のものに寄り掛かって這い登ることも多い。
葉は互生し、長さ10pほどの奇数羽状複葉で、小葉数は7〜9個。
小葉は楕円形で細かい鋸歯があり、表面に艶がない(テリハノイバラは艶がある)。
花期は5月〜6月で、枝先に円錐花序枝を付け、白色または淡紅色の花を多数付ける。
花は直径2cmほどで、5個の花弁は倒卵形。オシベは多数。
メシベは無毛で、花柱はゆるやかに合着して柱状になる。
果実に見えるのは偽果で、萼筒が肥大したもの。直径8mm前後の卵球形で、秋に赤く熟す。

2017/5/24
バラ園の一角にノイバラが植えられていました。
野生のノイバラと違って、しっかりと手入れされているので、花が一回り大きいように思います。
なお、右下の葉の写真を見ればわかる通り、葉に艶がないので、ノイバラで間違いはないと思います。


ノイバラとテリハノイバラ

     .

     .
  <ノイバラ>               <テリハノイバラ>
ノイバラとテリハノイバラは、非常によく似ています。
しかし、名前の「テリハ」が示す通り葉に艶があり、葉を見れば区別は容易です。
なお、花はテリハノイバラの方が一回り大きく、直径は30mmほどになります。
写真のオシベですが、開花して間もないものは花糸も葯もが黄色い色をしています。
しかし、時間の経過とともに葯は褐色に、花糸は白く変わっていきます。
これは両方とも同じで、テリハノイバラは開花間もない状態で、ノイバラは時間が経過した状態です。


バラ(Rosa)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>





バラ科バラ属の総称がバラで、また、特に園芸種の総称として使用される。
バラの分類方法には確定したものはなく、いろいろな分類方法がある。
系統による分類、花弁の数による分類、花の形による分類、花期による分類、樹形による分類などがある。

・系統による分類(原種の原産地、園芸品種[オールドローズ、モダンローズ])
・花弁の数による分類(一重咲き、半八重咲き、八重咲き)            .
・花の形による分類(平咲き、カップ咲き、ロゼット咲き、ポンポン咲きなど)  .
・花期による分類(一季咲き、返り咲き、繰り返し咲き、四季咲き)        .
・樹形による分類(立木性、半つる性、つる性など)                 .

バラの人類との関わりは古く、古代バビロニアに遡る。
古代ギリシア、ローマでは、愛の女神アプロディテ、ヴィーナスと関係付けられていた。
近代になって1867年にフランスでハイブリッド・ティー(HT)系が作出され、モダンローズの幕開けとなった。
1900年には黄色いバラが作出されるなど、欧米での品種改良が進んだ。
1911年にデンマークで耐寒性の高い品種としてハイブリッド・ポリアンサ系が作出された。
これを受けてアメリカで改良が続けられ、フロリバンダ系(FL)と命名されている。

2017/5/24
相模原北公園の花木園にあるバラ園。5月下旬から6月上旬にかけて、春のバラが満開になります。
バラ園に降りる階段やその周りにも多くのバラが植えられており、花や香りを楽しむことができます。
なお、この時確認できた品種に関しては、こちらの一覧を参照ください。

ミツマタ(Edgeworthia chrysantha)
<フトモモ目・ジンチョウゲ科・ミツマタ属>


 
   <ミツマタ>               <アカバナミツマタ>
ジンチョウゲ科ミツマタ属の落葉低木で、中国〜ヒマラヤが原産地。
日本では林内で野生化しているものも多い。
樹高は1〜2mで、よく分枝して半球形の樹形を作る。樹皮は灰色で縦の筋がある。
本年枝は必ず三つ又になって出てくるため、これが和名の由来。
葉は互生し、葉身は長さ5〜20cmの長楕円形で、先は尖り、基部はくさび形。
縁は全縁で、両面に白灰色の柔毛があり、特に裏面に多い。葉柄は長さ5〜10mm。
花期は3月〜4月で、葉の展開前に開花する。枝先や葉腋に頭状花序を付ける。
花序には小花が30〜50個ほど下向きに集まって付く。
花は両性花で、花弁はなく、萼は長さ13〜20oで、長さ13〜20oで先が4裂する。
萼裂片の外側には白い絹毛が密生し、内側は鮮黄色。
なお、園芸品種には内側がオレンジ色〜朱色のアカバナミツマタがある。
オシベは8個で、4個ずつ2段になって短い花糸で萼に付く。メシベは1個。
果実は核果で、堅果は長さ8mmほどの楕円体。6月〜7月に熟し、緑色で有毛。

2008/3/16
相模原北公園の花木園には、多くのミツマタが植栽されています。
その多くはミツマタですが、アカバナミツマタも所々に植えられており、赤と黄色のコントラストが楽しめます。

ヤマボウシ(Benthamidia florida)
<ミズキ目・ミズキ科・ミズキ亜科・ヤマボウシ属>
 
ミズキ科ヤマボウシ属の落葉高木で、自生種。
日本では、本州から四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島から中国に分布する。
花は5〜6月に開き、淡黄色から淡緑色で小さく、多数が球状に集合している。
白い大きな花弁のように見える総包片が4枚あり、その中央に花が付く。
花弁は数mm程で4枚、オシベも4本で、花柱は1個である。
ハナミズキの果実は、個々の果実が分かれて赤く熟するのに対し、本種は集合果になる。
直径10〜15mm程の球形の集合果は、熟すると赤くなり、食用になる。

2017/5/24
相模原北公園の花木園で、満開のヤマボウシを見かけました。
枝の上に雪が積もったように、白い花(正しくは萼ですが)を咲かせていました。

カタクリ(Erythronium japonicum Decne.)
<ユリ目・ユリ科・カタクリ属>

ユリ科カタクリ属の多年草で、在来種。古語での呼称は「堅香子(かたかご)」。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布しているが、四国と九州では少ない。
海外では、朝鮮半島から中国に分布している。
草丈は20〜30pで、鱗茎は長さ5〜6cmの長楕円体で、地中深くにある。
葉は通常2個付き、長さ6〜12cm、幅は2.5〜6.5cmの長楕円形で、暗紫色の模様がある。
なお、花が付かない2〜7、8年の株の葉は、より葉幅が広くなる。ちなみに1年目の葉は糸状。
花期は3月〜5月で、花茎の先に下向きに淡紅紫色の花を1個付ける。
花被片とオシベは共に6個。オシベは長短3個ずつあり、葯は暗紫色。
花被片は長さ35〜50mmで、日中に光が当たると開いて反り返り、夕方には閉じる。
日差しがない日は、終日花は閉じたままで開くことはない。
長いオシベの葯は、短いオシベより外側にあり、先に成熟して裂開する。
花後、長さ15o程の卵形の刮ハができ、熟すと3裂する。
果実が熟す頃には、地上部は枯れてしまうので、地上部が姿を見せるのは4〜5週間程しかない。
稀に、白花の個体があり、シロバナカタクリという。

2008/3/16
林内の落ち葉の間からカタクリが顔を出して、可憐な花を咲かせていました。
所々で顔を出している程度と花数は少ないですが、それでも見とれてしまいます。
なお、花の下あたりに褐色の円錐状のものが見えていますが、未開花のカタクリの葉の裏です。
これから2つに割れて、葉を左右に展開し、それと同時に花茎を伸ばして花を咲かせます。









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