ホーム相模原 ブラブラ録>城山湖、城山周辺 野草編(春V)


城山湖、城山周辺 野草編(春V)



純揚水式の城山発電所建設にともなって誕生したのが人造湖の城山湖。
その城山湖を周回する散策路があり、その近くでは、いろいろな野草が楽しませてくれます。
また、そこに至る城山の周辺や相模川周辺にもいろいろな野草が見られます。



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
センリョウ目
センリョウ科(フタリシズカ)
ツツジ目
ツツジ科(ヤマツツジ)
ナデシコ目
ナデシコ科(ミドリハコベ)
タデ科(スイバ)
ニシキギ目
ニシキギ科(マユミ)
バラ目
クワ科(ヤマグワ)
バラ科(クサイチゴ、キジムシロ、ヘビイチゴ、ヤブヘビイチゴ、ノイバラ、コゴメウツギ)
フトモモ目
アカバナ科(ユウゲショウ)
ブナ目
クルミ科(オニグルミ)
マツ目
マツ科(ヒマラヤスギ)
マツムシソウ目
スイカズラ科(ハコネウツギ)
レンプクソウ科(ガマズミ、ヤブデマリ)
城山湖、城山周辺の野草(春V)
和名インデックス


フタリシズカ(Chloranthus serratus)
<センリョウ目・センリョウ科・チャラン属>
   

   
センリョウ科チャラン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国にかけて分布する。
高さは30〜60cm。花期は4〜6月。
茎の先に数本(2本の場合が多い)の穂状花序を出し、小さな白い花をつける。
花には花弁も萼もなく、3個の雄しべが丸く子房を抱いている。
花序は立っているが、果実ができると下に曲がる。夏頃(果実の成熟期)に閉鎖花をつける。
和名は、2本の花序を、能楽「二人静」の静御前とその亡霊の舞姿にたとえたもの。
ヒトリシズカと対を成す。ただし、花序は2本とは限らず、3〜4本の例もある。

2017/5/19
城山湖の遊歩道脇で、フタリシズカが所々で花を付けていました。
その独特の草姿を見れば直ぐに分かりますね。
下段は、穂状花穂が成長していく様子です。
緑色の3個のオシベが、徐々に大きく白くなっていきます。

※ 果実の様子は、初夏の様子八ヶ岳での写真をご覧ください。
分かってしまえば、間違えることはないですが、最初は全く分かりませんでした。

ヤマツツジ(Rhododendron kaempferi)
<ツツジ目・ツツジ科・ツツジ亜科・ツツジ属・ツツジ亜属・ツツジ節・ヤマツツジ列>
 
ツツジ科ツツジ属の半落葉低木で、日本固有種。
日本の野生ツツジの代表種で、北海道南部から本州、四国、九州に分布に分布する。
樹高は1〜5mで、若い枝には伏した淡褐色の剛毛が密生する。
葉は互生し、春葉と夏葉がある。春葉は、春に展開して秋には落葉する。
夏葉は、夏から秋にかけて展開し、一部の葉は越冬する。
春葉は、長さ2〜5cmで、長楕円形〜卵形と変化が多く、先は短く尖り、両面に粗い褐色の毛がある。
夏葉は、長さ1〜2cmと小さく、倒披針状長楕円形で先が丸く、葉の両面に毛が生える。
なお、葉柄はいずれも数mmで、葉裏の脈上には、特に長毛が多い。
花期は4月〜6月で、枝先に数個の花を付ける。花柄は長さ4mm前後ある。
花色は朱色が多いが、稀に紅紫色や白色のものがある。花冠は直径3〜4cmの漏斗型で、5中裂する。
花冠の上側内面に濃色の斑点があり、内面に短毛が散生する。オシベは5個で、花柱の長さは3〜4cm。

2001/5/4
城山湖の遊歩道脇の斜面の上の方で、ヤマツツジが花を付けていました。
時期的にはちょうど良い頃なのでしょうか、多くの花が咲いていました。


2017/5/17
城山湖の駐車場近くの斜面上で、花のピークが過ぎたヤマツツジを見かけました。
枯れた花や色あせた花が多い中、少しですが鮮やかな色の花も見られました。
この時には、若々しい緑色の大きな春葉が展開し、花よりも目を引きます。

スイバ(Rumex acetosa)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・ギシギシ属>


   
タデ科ギシギシ属の多年草で、広く日本に分布している。
世界的にも、北半球の温帯に分布している。
雌雄異株で、葉には酸味があり、スイバ(酸い葉)の名前の語源になっている。
花期は、ギシギシよる1ヶ月程早く、茎の中程の葉には柄がなく、茎を抱くことで区別可能。
食べられるが、茎や葉にシュウ酸の酸味があり、すっぱいので酸い葉と呼ばれる。
若葉は赤色を帯び、上部の葉は柄がなく、下部の葉には長い柄がある。
葉身は長さ10pほどの長楕円状披針形、基部は矢じり形で、上部の無柄の葉は茎を抱く。
葉柄の基部の托葉は鞘状の托葉鞘となり、縁が不規則に切れ込む。雌雄異株。
茎頂の円錐状総状花序に小さな花を多数付つける。雄花は花被片が6個、オシベも6個。
雌花は柱頭が赤く目だつ。果期には内花被が直径4oのうちわのように大きくなって痩果を包む。
外花被は小さい。痩果は長さ2oほどで、黒褐色で光沢がある。

2017/5/10
城山湖に行く途中、相模川の上流の河川敷の土手で見かけました。
果実の特徴からスイバと分かりましたが、赤みの少ないものから緋色のものまで様々です。
果実を包む内花被片が赤みを帯びることがあるのは知っていました。
しかし、ここまで真っ赤なものを見たのは初めてです。

ミドリハコベ(Stellaria neglecta Weihe)
<ナデシコ目・ナデシコ科・ハコベ属>
 
ナデシコ科ハコベ属の越年草で、日本では全国的にみられる。
海外でもアジア、ヨーロッパにも広く分布している。
草丈は20〜60cmで、茎はたいがい緑色で、茎の片側に1列に毛が生える。
葉は対生し、葉身は長さ15〜30mmの広卵形で、先が尖る。下部の葉には長い葉柄があるが、上部では無柄。
花期は3月〜9月で、白い花は直径10mm前後。花弁は5個だが、2深裂しているので10個に見える。
萼片は5個で、メシベの花柱の数が3個、オシベの数が5個以上ある。
似たものにコハコベ(茎が紫色を帯びる)や、ウシハコベ(大型で、メシベの花柱が5個)がある。

2017/5/19
城山発電所の管理棟横の通路脇で、ミドリハコベが花を付けていました。
鮮やかな緑色の茎とそこに1列に生える毛、2裂した花弁と3裂した花柱が確認できます。

マユミ(Euonymus sieboldianus)
<ニシキギ目・ニシキギ科・ニシキギ属>
 


ニシキギ科ニシキギ属の落葉小高木で、在来種。
材質が強い上によくしなるため、古来より弓の材料として知られ、それが和名の由来になっている。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシア、インド、ネパール、アフガニスタン、タイなどに広く分布する。
樹高は3〜5mで、幹は灰褐色。古くなると縦に筋が入り裂ける。枝には鈍い4稜がある。
葉は対生して無毛。葉柄は長さ10o程で、葉身は長さ10p前後の長楕円形。縁に細かい鋸歯がある。
花期は5月〜6月。本年枝の葉より下の芽鱗痕の脇から集散花序が出る。
花序には、まばらに1〜7個、直径10o程の緑白色の小花を付ける。
花弁は4個、オシベは緑色の四角形の花盤の上に4個付く。
花柱には長短の2型あり、花柱の長いものは雄しべが短い。
果実(刮ハ)は、長さ1p程の倒三角形、4個の稜があり、10〜11月に淡紅色に熟す。
熟すと4裂し、橙赤色の仮種皮に包まれた種子が顔をだす。

2017/5/17,19
城山湖の遊歩道から城山湖畔に降りる所で、マユミがたくさんの花を付けていました。
この樹の花は、オシベが長く、花柱が短いタイプのようです。


マユミの果実

     .
2016/9/4
富士山駅の駐車場で見かけたまゆみの果実です。
淡紅色に色づいてはいましたが、まだ、裂開には至らず、種子は見られませんでした。


ヤマグワ(Morus australis)
<バラ目・クワ科・クワ属>
 
クワ科クワ属の落葉高木で、在来種。雌雄異株。稀に雌雄同株。
日本では、北海道から本州、四国、九州と広く分布し、丘陵や低山地に多い。
海外では、東アジアから南アジアにかけて広く分布している。
樹高は3〜15mになり、樹皮は褐色で縦に筋が入り、薄くはがれる。
葉は互生し、葉身は6〜14cm程の広卵形。切れ込みの無いものから数裂するものまである。
葉先は尾状に尖り、基部は心形で、縁には粗い鋸歯がある。葉柄は長さ数cmで、無毛。
花期は4月〜5月で、本年枝の葉腋に花序が1個ずつ付く。
雄花序は、長さ2cm前後で、多数の雄花が付く。花被片とオシベが各々4個ある。
雌花序は、長さ5mm前後で、多数の雌花が付く。メシベの花柱は2mmほどあり、柱頭は2個ある。
果実は集合果で、長さ10〜15mmほど。始めは淡緑色であるが、6月〜7月に赤から黒紫色に成熟する。
なお、マグワの果実では花柱は目立たないが、ヤマグワの果実には髭状に花柱が残る。
抗酸化作用のあるアントシアニン、ポリフェノールを多く含み、生食も可能。
また、果実はジャムにしたり、果実酒の材料にも利用される。

2017/5/17,19
城山湖の遊歩道から城山湖畔に降りる所で、ヤマグワがたくさんの果実を付けていました。
花期は過ぎているようで、花は見当たりませんでしたが、若い果実はありました。


マグワとヤマグワの果実

       .
2017/6/9<マグワ>
       .
2017/5/17,19<ヤマグワ>
マグワとヤマグワのいろいろな熟し具合の果実です。
撮影時期が異なるので、マグワは若い果実がなくて、黒紫色に熟した果実の写真があります。
一方、ヤマグワは若い果実の写真はありますが、完全に熟した写真がありません。
どちらも完熟すると黒紫色になりますが、ヤマグワは完熟しても髭状の花柱は残ります。
どちらも生食可能ですが、ヤマグワの果実には花柱が残るので、食べにくくはあります。


クサイチゴ(Rubus hirsutus)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キイチゴ属>
 
バラ科キイチゴ属の落葉小低木で、在来種。
日本では、本州から四国、九州の山野に普通に自生している。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
草丈は高くても50cm程度で、それほど高くならない。
茎や枝には短い軟毛や腺毛があり、細かい棘がまばらにある。
葉は互生し、長さ15cmほどの奇数羽状複葉で、小葉は1対か2対。
頂小葉は、長さ5p前後の卵形でで、小葉の縁には細かい重鋸歯がある。
葉の表面には軟毛が、裏面の葉脈上には軟毛と細かい棘がある。
葉柄には、軟毛と腺毛が混生し、細かい棘がある。
花期は4〜5月で、直径4cmほどの白い花を付ける。
花柄や萼の外側にも軟毛と腺毛が混生する。
果実は、直径1p程の球形の集合果で、1ヶ月ほどで赤く熟す。

2001/5/4
城山湖の遊歩道脇で見かけた大きなクサイチゴの株です。
1本の木なのかどうかは分かりませんが、辺り一面に広がって花を付けていました。

 

 
2017/5/17,19
城山湖の遊歩道脇では、所々にクサイチゴが見られました。
場所によって、花が見られる木と果実のみになった木がありましたが、日当たりの差のようです。
左の果実は、まだ未熟でオレンジ色ですが、右のように真っ赤に熟したものは生食できます。

キジムシロ(Potentilla fragarioides var. major)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キジムシロ連・キジムシロ属>

バラ科キジムシロ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、モンゴル、ロシアに分布する。
日当たりのよい雑木林、丘陵地、草原、海岸の岩場などに普通に見られる。
草丈は5〜30cmで、根茎は垂直に肥厚して短く、太めの根がある。
茎は赤みを帯びていることが多く、匍匐茎は出さない。
葉は長さ5〜15cmの奇数羽状複葉で、小葉は3〜9個からなり、先端の3小葉が大きい。
小葉は長さ2〜5cmの楕円形で、先が尖らず、縁には鋸歯がある。
花期は3月〜8月で、長さ5〜30cmの花茎を伸ばして散形状に多数の花を付ける。
花は直径15〜20oの黄色い5弁花で、オシベ、メシベとも多数ある。
萼片(内萼片)5個は間がさ4〜8oの卵状披針形で鋭頭。副萼片はやや小さい披針形で5個。
果実は淡褐色の痩果で、長さ1.5mm弱の卵形。
表面にしわと微細な凹凸があり、腹面に細長い付属体が付く。

※ 本種に似て匍匐茎を出すツルキジムシロは、小葉の鋸歯が粗く大きい。

2017/5/17
城山湖の手前にある本沢梅園。その斜面で見かけたキジムシロの葉です。
残念ながら、花期ではありますが、花は見られませんでした。
この辺りはよく除草される場所のようなので、何度か除草された結果、若葉のみになったようです。

ヘビイチゴ(Potentilla hebiichigo)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キジムシロ連・キジムシロ属>
 
バラ科キジムシロ属の多年草で、在来種。
以前はヘビイチゴ属とされていたが、遺伝的な解析で、キジムシロ属に含められるようになった。
日本ではも北海道から九州、沖縄まで全国に分布し、海外では朝鮮半島から中国とアジア南東部に分布する。
茎は地を這い、節から根を出して増える。葉は互生し、長い葉柄の先に3小葉からなる葉が付く。
小葉は長さ3p前後の楕円形か倒卵形で、葉先は鈍頭、基部はくさび形。粗い鋸歯がある。
花期は4月〜5月で、葉対生で、葉柄の反対側から花柄を出し、黄花を付ける。
花の直径は15oほどで、先の3裂した副萼片は、萼片と同じか幾分大き目。
黄色い花被片、萼片、副萼片とも5個あり、オシベは多数ある。
また、中心の花床上に心皮が多数離生して付き、花床は果時には肥大して果床となる。
果実は真っ赤に熟すが、果床には光沢がなく、淡紅色。痩果が多数付き、痩果には皴がある。
果実に毒はないが、無味乾燥で味がなく、食用には向かない。

※ヤブヘビイチゴは、副萼片が萼片より有意に大きく、果床が光沢ある赤で、痩果に皴がない。

2017/5/19
城山湖の手前にある本沢梅園。その駐車場横の草原で見かけたヘビイチゴです。
黄色い花と真っ赤な果実のコントラストで、眼を引いていました。
そのヘビイチゴの果実と思っていたものですが、ヤブヘビイチゴの果実でした。
ヘビイチゴの果床は白っぽいのですが、真っ赤で、痩果に皴が見られないためです。
しかし、その葉の形状はヘビイチゴの葉の特徴持っています。
また、花の副萼片と萼片の長さは、萼片が若干長いのでヘビイチゴと判断しました。

両者の比較に関しては、こちらに詳しく記載いたしました。

ヤブヘビイチゴ(Potentilla indica)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キジムシロ連・キジムシロ属>
 
2017/5/19
 
2017/5/17
バラ科キジムシロ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から、四国、九州に分布する。海外では、東アジア、南アジアに分布する。
草丈は10pほどにしかならず、匍匐茎を出して広がる。
葉は濃緑色の三出複葉で、楕円形の小葉には細かい鋸歯があり、長い葉柄がある。
頂小葉は長さが数cmの長楕円形で、広卵形のヘビイチゴとは形が異なる。
また、ヤブヘビイチゴでは重鋸歯にならないが、ヘビイチゴは重鋸歯になることが多い。
花期は4月〜6月で、葉腋から花柄を出して、直径20mmほどの黄色い花を1つ付ける。
5個の三角形状の萼片と葉状の副萼片が交互に付き、副萼片が萼片より大きい。
果実は花托が肥大した偽果で、果床は濃紅色で赤い痩果にはしわがない。
この果実は食べられるが、味はほとんどしないので、生食には向かない。
本種では、果期にも花が見られるので、黄色い花と赤い果実を同時に見られる。

※ヘビイチゴは、副萼片と萼片がほぼ同大で、果床は白っぽくて光沢がなく、痩果に皴がある。

2017/5/17,19
城山湖の遊歩道脇で見かけたヤブヘビイチゴの花と果実です。
5/17に見かけた果実は、最初、周りの葉の特徴からヘビイチゴだと思っていました。
しかし、果床が赤い点や痩果の皺がない点はヤブヘビイチゴの特徴で、その点でヤブヘビイチゴと判断しました。
5/19に見かけた花の特徴は、萼片より副萼片が長くはないので、ヘビイチゴの花の特徴を持っています。
しかし、その周りの葉の特徴はヤブヘビイチゴの葉の特徴を持っています。
周りにヘビイチゴの葉は見られなかったので、ヤブヘビイチゴの花としました。


良く似たキジムシロ属の仲間

この4種は、花茎の先に散形状に複数の花を付ける。
オヘビイチゴの小葉は5枚で、他の3種の小葉は3枚。ただ、小葉の形が異なる。
ミツバツチぐりの小葉は細長く、鋸歯が丸いのが特徴。
イワキンバイの小葉は鋸歯の切れ込みが浅く、小葉が菱形で、花茎に葉を付けるのが特徴。
ミヤマキンバイの小葉の鋸歯の切れ込みはかなり深くて粗く、小葉が扇型で丸みが強い。

この2種は、元ヘビイチゴ属とされていたもので、花茎の先に花は1個だけ付く。
また、花床が丸く膨らみ、痩果が付く。果床は淡紅色か紅紫色のため、偽果は赤く見える。
ヘビイチゴの小葉は3枚で、小葉の先は丸く、鋸歯も丸い。
ヘビイチゴの萼片と副萼片(先が3裂)は、ほぼ同長か副萼片が若干長い程度。
ヘビイチゴの果実は、果床に光沢がなく、淡紅色で白っぽい。痩果が多数付き、痩果には皴がある。
ヤブヘビイチゴの小葉も3枚であるが、小葉の先が尖り、鋸歯の先も尖る。
ヤブヘビイチゴの萼片と副萼片(先が3裂)は、副萼片が萼片より有意に長い。
ヤブヘビイチゴの果実は、果床は濃紅色で光沢があり、赤い痩果には皴がない。


ノイバラ(Rosa multiflora)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>
 
バラ科バラ属の落葉つる性低木で、日本のノバラの代表種。
沖縄以外の日本各地の山野に多く自生する。
日本以外では朝鮮半島に分布する。
樹高は2mほどになり、茎は枝分かれして直立するが、他のものに寄り掛かって這い登ることも多い。
葉は互生し、長さ10pほどの奇数羽状複葉で、小葉数は7〜9個。
小葉は楕円形で細かい鋸歯があり、表面に艶がない(テリハノイバラは艶がある)。
花期は5月〜6月で、枝先に円錐花序枝を付け、白色または淡紅色の花を多数付ける。
花は直径2cmほどで、5個の花弁は倒卵形。オシベは多数。
メシベは無毛で、花柱はゆるやかに合着して柱状になる。
果実に見えるのは偽果で、萼筒が肥大したもの。直径8mm前後の卵球形で、秋に赤く熟す。

2017/5/10
城山湖に行く途中、相模川の上流の河川敷の土手で見かけたノイバラです。
日本におけるノバラの代表種だけあって、あちらこちらでよく見かけます。



 
2017/5/19
城山湖の遊歩道から城山湖畔に降りる所で、通路脇の急斜面に大きなノイバラが張り付いていました。
よく見るとあちらこちらにノイバラが見られ、多くの花を付けていました。

コゴメウツギ(Stephanandra incisa)
<バラ目・バラ科・モモ亜科・ネイリア連・コゴメウツギ属>
 

 
バラ科コゴメウツギ属の落葉低木で、在来種。
日本では、北海道日高地方から本州、四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布している。
樹高は1〜2.5mで、よく分枝して、主幹の先は垂れさがる。
幹は灰褐色であるが、若枝は紅褐色を帯びて軟毛がある。
葉は互生し、長さ2〜6cmの三角状広卵形で、先は尾状に伸びて尖り、基部は心形。
葉縁には重鋸歯があり、葉裏の脈上には軟毛がある。葉柄の長さは3〜7mm。
花期は5月〜6月で、枝先や葉腋から散房状の花序を出し、小花を多数付ける。
花は直径5mm前後の白い5弁花で、萼片は花弁より短いが白くて5個あり、花弁のように見える。
オシベは10個あり、花弁より短い。メシベは1個で、直立する。
果実は直径2〜3oの球形の袋果で、基部に萼片が残る。

2017/5/17,19
城山湖の駐車場近くや遊歩道脇などで、コゴメウツギがたくさんの花を咲かせていました。
コゴメウツギは萼片が花弁と同じ白なので、花全体が白く見え、可愛らしい花です。

ユウゲショウ(Oenothera rosea)
<フトモモ目・アカバナ科・マツヨイグサ属>



アカバナ科・マツヨイグサ属の多年草で、南米から北米南部が原産地の帰化植物。
現在は、世界中の温暖な地域に広く分布している。
草丈は20〜30cmであるが、条件によっては50cmを超えることもある。
茎には軟毛があり、葉は互生して、葉身はやや幅広の披針形である。
花期は5月〜9月で、茎の上部の葉腋に直径15mmほどの紅紫色の花を付ける。
花弁は4個で、紅色の脈があり、中心部は黄色い。なお、稀に白花も見られる。
オシベは8個あり、葯は赤味を帯びた白で、メシベの先は淡紅紫色で4裂する。
熟した果実は、雨に濡れると裂開し、種子が飛び散る。

2017/5/17
城山発電所から本沢梅園へ行く途中、草原の中にユウゲショウの群落がありました。
その群落から少し離れた所で、真っ白なユウゲショウが1株咲いていました。
後にも先にも、白いユウゲショウを見たのは初めてです。
白いヤハズエンドウを見たことがありますが、このような白変種が稀に発生するようですね。

※ 白変種は、全体の色素が出来ずに白くなるアルビノとは異なります。

オニグルミ(Juglans mandshurica var. sachalinensis)
<ブナ目・クルミ科・クルミ属>


 
クルミ科クルミ属の落葉高木で、自生種。雌雄同株。
日本では、北海道から本州、四国、九州まで全国に分布する。
日本以外では、樺太に分布する。
樹高は7〜10mになり、樹冠は丸くなる。樹皮は暗灰色で、縦に割れ目が入る。
葉は互生し、奇数羽状複葉で、長さは40〜60cm。
葉柄と葉軸に褐色の軟毛や腺毛が密生し、小葉は5〜9対が付く。
花期は5月〜6月で、葉の展開と同時に開花する。
雌花序は新枝の先に直立して付き、雄花序は前年枝の葉腋から垂れ下がる。
雄花序は、開花時には10〜20pに伸び、小さな雄花が密集し、オシベは10〜20個ほどある。
雌花序は、長さ10p前後で、花軸には長毛と腺毛が密生し、雌花が10個ほど付く。
子房は、苞と小苞、花被片が合着した筒状の花床に包まれ、花柱は2裂して、柱頭は濃赤色。

2017/5/10
城山湖に行く途中、相模川の上流の河川敷で見かけたオニグルミです。
少し花期を過ぎているようで、受粉が終わり、雌花の柱頭が濃赤色から黒褐色になってしまっています。
雄花も咲き終わって、花序が伸びきっていました。

※ オニグルミの柱頭の色などに関しては、こちらを参照ください。

ヒマラヤスギ(Cedrus deodara)
<マツ目・マツ科・ヒマラヤスギ属>


 
マツ科ヒマラヤスギ属の常緑針葉樹。ヒマラヤ山脈西部の標高1500〜3200 mの地域が原産地。
樹高は40〜50mで、幹の直径は3mに達する。
樹冠は円錐形で、地面に水平な枝と垂れ下がった小枝がある。
葉は長さ2〜5cmの針形で、厚さは1mmほどである。色は明るい緑から青緑に変化する。
芽は、長く単独で生えるものと、短く数十個で集団を作るものがある。
雌花の松かさは樽形で、長さ7〜13cmで、幅は5〜9cmある。
雄花の松かさは4〜6cmで、秋に花粉を放出する。
雌花の松かさは、12ヶ月で成熟し、崩壊して翼状の種子を落とす。

2017/5/17,19
城山発電所から本沢梅園へ行く途中に、ヒマラヤスギが何本か植えられていました。
枝の方を見ると大きな松かさが点々と並んでいます。
少し先の方に進んだとき、垂れ下がった枝に小さな松かさを見つけました。
おそらく昨秋に受粉した若い松かさだと思われます。
大きさも数cm以下と小さく、赤褐色に白い粉を吹いたような色をしています。
下段はその松かさを並べたものですが、成熟が進むと右のように緑色に変わっていきます。
右のものは、後、数ヶ月もすると成熟して崩壊するものと思います。

ハコネウツギ(Weigela coraeensis)
<マツムシソウ目・スイカズラ科・ タニウツギ属>
 


スイカズラ科タニウツギ属の落葉小高木で、日本固有種。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州の沿海地の海岸林に分布する。
樹高は3〜5mで、下部からよく分枝して株立ちになる。樹皮は灰褐色で縦に裂けてはがれ落ちる。
新しい枝は茶褐色〜紫褐色で、稜があり、ほぼ無毛。
葉は対生し、長さ6〜16cmの長楕円形で、基部は円形〜くさび形で先は鋭く尖る。
403 表面は無毛で、裏面は多少光沢があり、ほぼ無毛か脈状に多少毛がある程度である。
葉縁には細かい鋸歯があり、葉柄は長さ8〜15mmで、多少毛がある。
花期は5月〜6月で、枝先や上部の葉腋に花を数個付ける。苞は長さ2〜12mmの披針形。
花色は、はじめは白色で、次第に紅色に変化する。花冠は漏斗状で、長さ30〜40mm、直径20o前後。
花冠の筒部は中ほどで急に太くなって、鐘状に広がり、そして先は5裂する。
萼は5深裂し、裂片は長さ6〜10mmで、その下部に長さ15〜20mmの筒状の子房がある。
オシベは5個で、花筒とほぼ同じ長さがあり、メシベの花柱はそれより長く、花筒から飛び出る。
果実は刮ハで、長さ20oの前後の細い筒状で硬く、11月頃に熟す。
熟すと上部が2裂して、長さ1.5mmほどの楕円形の種子を多数出す。種子の周囲には翼がある。

2017/5/17
城山湖の駐車場近くの斜面でハコネウツギが花を付けていました。
花の色が、咲き始めの白から徐々に紅が差して、紅色に変化するのが特徴です。
そのため、白とピンクの花が入り混じっていましたが、白の花が多いので咲き始めて間もないようでした。

※ 最初、ニシキウツギではと思ったのですが、萼より先が急角度で広がっているので、本種としました。

ガマズミ(Viburnum dilatatum)
<マツムシソウ目・レンプクソウ科・ガマズミ属>
 
レンプクソウ科ガマズミ属の落葉低木で、在来種。
日本では北海道から本州、四国、九州と広く分布している。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
樹高は2〜6mほどで、幹は灰褐色、若い枝は杯緑色。
1年目の小枝は灰褐色で、開出毛と星状毛があるが、古い小枝は暗紫褐色になる。
葉は対生し、葉身は長さ10cm前後の広卵形で、葉先は尖り、浅い鋸歯がある。
葉の両面に毛があり、特に葉脈上に多い。葉柄は1cm前後。托葉はない。
花期は5月〜6月で、枝先に散房花序をだし、白い小花を多数付ける。
花冠は直径6o前後で、5深裂して平開する。オシベは5本で、花冠から突出する。
果実は長さ7o前後の核果で、赤く熟す。酸味の強い果汁が多く、食べられる。

2017/5/19
城山湖の遊歩道から城山湖畔に降りる所で、通路脇でガマズミを見かけました。
残念ながら、ちょっと早かったようでツボミばかりで、開花したものは見当たりませんでした。

ヤブデマリ(Vibumum plicatum var. tomentosum)
<マツムシソウ目・レンプクソウ科・ガマズミ属>


 
レンプクソウ科ガマズミ属の落葉小高木で、在来種。
日本では、本州の関東以西から四国、九州に分布し、海外では中国、台湾に分布する。
樹高は2〜6mほどで、幹は灰黒色。若い枝は褐色。
葉は対生し、葉身は長さ5〜12cmの楕円形で、葉先は尖り、浅い鋸歯がある。
側脈が7〜12対あり、葉裏に隆起して縁までほぼ真っ直ぐに伸びる。
花期は4月〜6月で、水平に広がった枝に、上向きに散房花序を付ける。
花序の中央には両性花が多数付き、その周囲を直径3cm前後の白い装飾花が取り囲む。
装飾花は5深裂し、その内の1つの裂片が極小さく、花序の中心方向にあることが多い。
果実は核果で、長さ6mm前後の楕円形。8月〜10月に赤くなり、その際、花序枝も赤くなる。
果実は完全に熟すと黒くなる。

2017/5/10
城山湖に行く途中、相模川に沿った道路わきの空き地で、ヤブデマリを見かけました。
花が咲いている所が高くて近づけないため、装飾花の形が分かりづらくなってしまいました。









inserted by FC2 system