相模原北公園・道保川公園の野草(夏)
和名インデックス |
マムシグサ((Arisaema serratum)
<オモダカ目・サトイモ科・サトイモ亜科・テンナンショウ属> サトイモ科テンナンショウ属の宿根性落葉多年草で、在来種。 有毒植物で、全草にシュウ酸カルシウムの針状結晶、サポニン、コニインを含み、特に球茎の毒性が強い。 日本では、北海道から本州、四国、九州と広範囲に分布する。 海外では、朝鮮半島から中国東北部に分布する。 草丈は50〜80pほどになり、春、地下の球茎から偽茎を伸ばし、2枚の葉を展開する。 偽茎は、葉柄下部の2つの葉鞘部分が重なったもので、紫褐色のまだらな模様がある。 葉は鳥足状の複葉で、7〜15枚の楕円形の小葉からなり、その形や鋸歯の有無など変異が大きい。 花期は4月〜5月で、中央から花茎を伸ばし、紫色の仏炎苞のなかに肉穂花序を付ける。 雌雄異株で、肉穂花序の下部に萼も花冠もないオシベ・メシベだけの花を固まって付ける。 仏炎苞は、長さ10pほどの筒状部があり、その先は細くなりながら水平に前方に伸びる。 肉穂花序の先端から伸びた付属体は、棍棒状で直径8mm前後。 花後、仏炎苞の下から緑色のトウモロコシ状の果実が現れ、秋には真っ赤に熟す。 仏炎苞は紫褐色が標準であるが、緑色のものなどもあり、下記のようにいろいろな名前で呼ばれる。 アオマムシグサ、ムラサキマムシグサ、オオマムシグサ、カントウマムシグサ、コウライテンナンショウ… ただ、各々の中間的な形態のものも多く、学者によって分類も異なる。
2017/6/2
林内の所々でマムシグサが見られました。 既に花期は終わっていて、青い果実が大きくなっていました。 なお、花を付けなかった小さな株も見られ、葉が斑入りのものも見られました。 | |||||||||||||||
ムサシアブミ(Arisaema ringens)
<オモダカ目・サトイモ科・サトイモ亜科・テンナンショウ属> サトイモ科テンナンショウ属の多年草。在来種 日本では、本州の関東以西、四国、九州、南西諸島に分布する。 海外では、朝鮮半島から中国に分布する。 地面から立ち上がる第一の葉柄の途中から二番目の葉柄が分岐し、その途中から花柄が伸びる。 葉柄上端には先が細くなった三枚の葉をつける。花柄は葉柄よりも短い。草丈は50cmになる。 花期は3〜5月で、仏炎苞は暗紫色に白い筋があり、舷部が曲がって袋状になって、先が尖る。 なお、仏炎苞には変異があり、稀に仏炎苞が緑色のものが見られる。 筒口部の耳も大きく、鐙(あぶみ:足を乗せる馬具)を逆さまにしたような形をしている。 武蔵の国で作られた鐙が有名だったので、それが和名の由来となっている。
2017/6/2
林内で、ちょっと時期外れで遅咲きのムサシアブミを見つけました。 マムシグサ同様、果実ができていても良い頃ですが、まだ、仏炎苞がしっかり残っています。
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オヤマボクチ(Synurus pungen)
<キク目・キク科・アザミ亜科・アザミ連・ヤマボクチ属> キク科キク科の多年草で、在来種。 北海道から本州の岐阜県以北、四国に自生する。海外では、朝鮮半島に自生する。 草丈は1m以上になり、茎は直立して分枝する。茎にはくも毛がある。 葉は互生し、下部の葉には長い柄があり、葉身も数十cmになり、卵状長楕円形で先が尖る。 上部の葉は、上に行くほど小型になる。葉裏にはくも毛が密集する。 茎先や上部の葉腋から頭花を出し、頭花は下垂する。 総苞は長さ3cmほどの球形で、総苞片は線状披針形で先が尖る。 若い頭花は、写真のように鮮やかな緑色ですが、時間と共に紫色を帯びてくる。 その後、濃紫色の筒状花が顔をのぞかせ、下向きに開花する。 オヤマボクチは、「雄山火口」と書き、その繊維を火起こしの火口(ほくち)に用いたのが名の由来。 その繊維は無味無臭のため、蕎麦のつなぎや草餅などのつなぎに用いられている。
2017/6/2
林内の通路脇で、大きな葉を広げたオヤマボクチを見つけました。 少し茎を立ち上げ始めていますが、これから1m以上に伸びて、花を付けます。 ※ このオヤマボクチの開花したところに関しては、こちらを参照ください。
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オオバギボウシ(Hosta montana)
<キジカクシ目・キジカクシ科・リュウゼツラン亜科・ギボウシ属> キジカクシ科ギボウシ属の多年草で、東アジアの特産種。 日本では、北海道から本州、四国、九州に分布している。 日本海側に生えるものをトウギボウシとして分けていた時期もあるが、現在は同一種とされている。 草丈は1mほどになり、葉は根生葉で長い葉柄があり、葉身は卵状楕円形で長さ30cm前後になる。 基部は心形で、葉裏の葉脈は盛り上がり、脈状に小突起が少し見られる。 花期は6月〜8月で、花茎が1mほど伸びて、淡紫色〜白色の花を横向きに多数つける。 花は漏斗型で、5cmほどの長さになり、基部に緑白色の苞がある。 和名の「ギボウシ」は、ツボミが欄干の擬宝珠(ぎぼし/ぎぼうしゅ)に似て、葉が大きいことに由来する。
2017/6/2
林内で、大きな葉を広げたオオバギボウシを見かけました。 風の強い日でしたので、大きな葉があおられて、ご覧の通りです。
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エビネ(Calanthea)
<キジカクシ目・ラン科・セッコク亜科・エビネ属> ラン科エビネ属の多年草で、多くは地生であるが、まれに着生する。 茎が短く、基部が肥大して根茎となり、短い匍匐系で連なる。 この根茎の形が海老に似ているのが和名の由来となっている。 日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島にかけて約20種が分布する。 海外では、インド、中国からミクロネシア、オーストラリア北部、東アフリカの広範囲に分布する。 分布の中心は東南アジアで、約200種が分布する。ただ、メキシコからコロンビアに別に1種が分布する。 日本に分布する約20種のエビネは、全て常緑性で、花序は総状で直立する。 花色は非常に多彩で、美しい花も多いことから、観賞用に栽培されることが多い。 日本に自生するエビネの原種は、下記の5種とされており、その自然交配、人工交配で多くの品種がある。
下記は、主な原種とその自然交配種とされるエビネの関係を示したものです。
2017/6/2
林内で、花期の終わったエビネを見つけました。 植栽されたものでなければ、おそらくジエビネだと思います。 多くは花茎に枯れた花が付いているだけでしたが、1個だけ結実しているものがありました。 自然界では、エビネが結実することは少ないのかもしれません。
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キツリフネ((Impatiens noli-tangere)
<ツツジ目・ツリフネソウ科・ツリフネソウ属> ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草で、ユーラシア・北米大陸に広く分布する。 日本では北海道から本州・四国・九州の低山から山地にかけて分布する。 ツリフネソウの分布域と重なるため、両種が一緒に見られることも多い。 草丈は50〜80cmで、下部の節がこぶ状に膨れる。全体に無毛。 葉は互生し、長さ8p前後の長楕円形で、数cmの葉柄があり、縁には低い鋸歯がある。 花柄は葉腋から垂れ下がり、細長い花柄の先に黄色い花を下げる。 花は長さ4cmほどで、3個の萼片と5個の花弁からなるが、側花弁2個は合着している。 下萼片は大きな袋状で、先端に細長い距が垂れ下がる(巻かない)。 果実は、緑色のまま熟し、ちょっとした刺激ではじけて種子が散布される。
2017/6/2
林内で、キツリフネがちらほら見られました。 葉が大きく、花が葉の下に付くので薄暗い林内では見落としやすいです。
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タニウツギ(Weigela hortensis)
<マツムシソウ目・スイカズラ科・タニウツギ属> スイカズラ科タニウツギ属の落葉小高木で、日本固有種。 日本では、北海道西部、本州の東北地方、北陸地方、山陰地方に分布する。 日本海型気候の山地の谷沿いや斜面などで、日当たりの良い所に多い。 樹高は2〜5mで、下部からよく分枝して株立ちになる。樹皮は灰褐色で縦に裂ける。 新しい枝は茶褐色〜紫褐色で、ほぼ無毛。新枝は長く伸びるが、やがて上部は枯れる。 葉は対生し、長さ4〜10cmの卵状楕円形で、基部は円形で先は尾状に尖る。縁には鋸歯がある。 葉柄は長さ3〜10mmで、葉裏には全体に白毛があるが、特に葉脈の両側に多く、脈状は少ない。 花期は5月〜6月で、枝先や上部の葉腋に淡紅色〜紅色の花を数個付ける。 花冠は漏斗状で、長さ25〜35mm、直径20oで、先は5裂する。 花冠の内側より外側の色が濃く、開花しているものよりツボミの方が色が濃い。 萼は5深裂し、裂片は長さ4〜7mmで、その下部に長さ8〜10mmの筒状の子房がある。 オシベは5個で、花筒とほぼ同じ長さがあり、メシベの花柱はそれより長く、花筒から飛び出る。 果実は刮ハで、長さ12〜18oの細い筒状で硬く、10月頃に熟す。 熟すと上部が2裂して、長さ1mmほどの楕円形の種子を多数出す。種子の周囲には翼がある。
2017/6/2
林縁にタニウツギが植えられていました。既に花期は終盤で、花は数えるほどしか付いていませんでした。 多くの枝は、下段右のように花が終わって果実に変わっていました。 |