ホーム兵庫県 ブラブラ録>播州地方で見かけた野草(夏W)


播州地方で見かけた野草(夏W)



実家近辺や兵庫県内などを移動する際に見かけた野草です。
といっても、出かけた際にちょこっと撮影しただけのため、あまり多くはないです。
今後、機会を見つけて充実させていきたいと思っています。

< トピック >
今回、新たに下記を追加しました。
ヒメドコロ、ヤマノイモ、カモメヅル属の1種→タチカモメヅル
また、新たに下記の写真を追加しています。
トウカイコモウセンゴケ、モウセンゴケ、イソノキ、ノギラン、
ナガイモ(ツクネイモ)、サルトリイバラ



ここでは、被子植物はAPG III体系で、その他は従来の体系で掲載しています。
ナデシコ目
オシロイバナ科(オシロイバナ)
ザクロソウ科(クルマバザクロソウ)
スベリヒユ科(スベリヒユ、ヒメマツバボタン、ハゼラン)
タデ科(オオケタデ、シロバナサクラタデ、エゾノギシギシ、ギシギシ)
ナデシコ科(ハマナデシコ、ムシトリナデシコ)
ハマミズナ科(ハナヅルソウ)
ヒユ科(キバナセンニチコウ)
モウセンゴケ科(トウカイコモウセンゴケ、モウセンゴケ)
バラ目
クロウメモドキ科(クマヤナギ、イソノキ)
クワ科(ホソバイヌビワ)
バラ科(オキジムシロ、テリハノイバラ、ワレモコウ、トキワサンザシ、ミカイドウ)
ブドウ目
ブドウ科(ノブドウ、ヤブガラシ)
フトモモ目
アカバナ科(コマツヨイグサ、ヒルザキツキミソウ、メマツヨイグサ、ユウゲショウ)
ミソハギ科(サルスベリ、ミソハギ)
マツムシソウ目
スイカズラ科(オミナエシ)
マメ目
マメ科(ネムノキ、ヤブツルアズキ、タンキリマメ、イヌエンジュ、シロバナシナガワハギ、
    ハイメドハギ、メドハギ、ヤマハギ、ハリエンジュ、ナツフジ、ミヤコグサ)
ミズキ目
アジサイ科(アナベル、カシワバアジサイ)
ムクロジ目
ウルシ科(ハグマノキ[白熊の木]、ヤマハゼ、ヌルデ)
センダン科(センダン)
ミカン科(イヌザンショウ)
ヤマノイモ目
キンコウカ科(ノギラン)
ヤマノイモ科(ナガイモ[ツクネイモ]、ヒメドコロ、ヤマノイモ)
ヤマモガシ目
スズカケノキ科(モミジバスズカケノキ)
ハス科(ハス)
ユキノシタ目
ベンケイソウ科(オカタイトゴメ、シンジュボシマンネングサ、タイトゴメ、
        マルバマンネングサ、モリムラマンネングサ)
ユリ目
サルトリイバラ科(サルトリイバラ)
シュロソウ科(シュロソウ、シライトソウ)
ユリ科(コオニユリ、ササユリ、タカサゴユリ)
リンドウ目
アカネ科(ヘクソカズラ)
キョウチクトウ科(タチカモメヅル)
リンドウ科(ハナハマセンブリ)
播州地方で見かけた夏の野草(夏W)
和名インデックス


オシロイバナ(Mirabilis jalapa)
<ナデシコ目・オシロイバナ科・オシロイバナ属>

オシロイバナ科オシロイバナ属の多年草で、南アメリカ原産の帰化植物。
日本全国に分布し、海外でも南アメリカ、アフリカ、オセアニア、アジアに帰化している。
茎はよく枝分かれして灌木状となるが節がはっきりしていて、木質化はしない。全体にみずみずしい緑。
花期は7月〜10月で、花は赤、黄色、白や絞り模様など。ただし、白と黄の絞りは少ない。
花は夕方開き、花筒が長いので、口吻の長い大型の夜行性鱗翅目でなければ吸蜜は困難である。
日本のオシロイバナでは、主にスズメガが吸蜜し、送粉に関わっている。
花弁はなく、花弁に見えるのはがくで基部は緑色でふくらんでいる。
また、花の根元にある緑色の萼のようなものは総苞である。
花が咲き終わった後、萼は基部を残して脱落し果実が、萼の基部に包まれたまま成熟する。
黒く熟した種子には粉状の胚乳があり、これからオシロイバナの名がついた。
根はいも状になり、暖地では冬に地上部が枯れてもこの地下部が生き残り次の年に根から芽を出す。

2021/8/31
実家近くの川沿いを散歩中、土手の草むらに紛れて、赤いオシロイバナが咲いていました。
周りには目立つ花がないので、その赤い花が一段と目を引いていました。

クルマバザクロソウ(Mollugo verticillatab)
<ナデシコ目・ザクロソウ科・クルマバザクロソウ属>

ザクロソウ科クルマバザクロソウ属の1年草で、原産地は南北アメリカ。
江戸時代末期に渡来したもので、日本では本州から四国、九州に分布し、道ばたや畑の縁に普通に生える。
草丈は10〜25cmで、茎は丸く、基部でよく分枝して斜上する。
葉は4〜7個が偽輪生(輪生に見える互生)し、根生葉は長さ15〜25oでロゼット状になる。
茎葉は、下部の葉ほど幅が広く、長さ10〜30mm、幅1.5〜4mmの倒披針形で、円頭または鈍頭。
花期は7月〜10月で、直径4mm前後の花を葉腋に散形状に3〜5個付け、小花柄は長さ2〜5mm。
花弁はなく、3脈がある白緑色の花被片5個(まれに4個)は、長さ2〜3mmの長楕円形で鈍頭。縁は膜質。
オシベは普通3個(2〜5個)で、花柱も3個ある。果実は刮ハで、長さ3〜4oの楕円形。
種子は長さ0.5mm前後の腎形で、光沢のある赤褐色。
よく似たザクロソウは茎に峰があり、花は集散花序に付き、果実は球形で、花被片には1脈がある。

2020/8/6
散歩中、ふと足元を見ると小さな花が目に止まりました。
小さな淡緑色の花でしたので、注意して見ないと見落としてしまいます。
見たことがなかったので、後で調べてみるとクルマバザクロソウという帰化種でした。
在来種のザクロソウと比べると、葉が偽輪生(見た目は輪生)で、花被片が同長な点が異なります。
※ 両者の比較に関しては、こちらに掲載しましたので、参照ください。

スベリヒユ(Portulaca oleracea)
<ナデシコ目・スベリヒユ科・スベリヒユ属>

スベリヒユ科スベリヒユ属の多年生で、在来種。
日本全土で見られ、海外でも熱帯から温帯にかけて広く分布している。
茎はよく分枝して地を這い、全体に無毛で、時に赤色や紫色をおびる。
葉は互生して多肉質で厚く、長さ15〜25mmのへら状で基部はくさび形。
花期は7月〜9月で、枝先に集まった数個の総苞状の葉の中心に数個の花が束生する。
花は陽が当ると開花し、暗くなると閉じるが、散りやすい。
花は直径6〜8mmの黄い5弁花で、花弁は長さ3〜5mmで軍配のような形をしている。
オシベは長さ12mm前後で7〜12個あり、葯は黄色。メシベは1個で、柱頭は4〜6裂する。
緑色の萼片は2個で、長さ3〜5mmのヘルメット状で、先は鋭形。花後は大きくなって果実を包む。
果実は長さ5mm前後の刮ハで、熟すと上部が蓋のようにとれる蓋果(がいか)である。
種子は幅1mm前後のゆがんだ円盤形で、熟すと光沢のある黒褐色〜黒色になり、表面は顆粒状。

※ 食用となり、全草を茹でて味噌和えなどにする。
リンゴ酸に由来する酸味があり、ぬめりのある独特の食感を持つ。

2012/8/13
自宅の畑で見かけたスベリヒユです。枝を5方向に大きく伸ばし、花を付けていました。
花の形を見れば、マツバボタンの花を小さくしたような形をしていて、同じ仲間だと分かります。
左写真の下部には、若い緑色の果実があり、左右から萼片が包んでいて、上部のツボミとは形が異なります。
また、若い果実の上部に、熟して蓋が取れ、黒い小さな種子がこぼれている果実も見えています。




2021/8/31
実家近くの川沿いを散歩中、漁港の岩壁脇でスベリヒユが黄色い花を付けていました。
子供の頃には、どこにでも生えていたスベリヒユですが、最近はあまり見かけません。
そのスベリヒユですが、花が小さなマツバボタン風の見たことがない花と混生していました。
どちらかというとスベリヒユが劣性で、周囲を取り囲まれてしまっています。
後に、ヒメマツバボタンという戦後に帰化した同じスベリヒユ属の植物と分かりました。


2021/9/7
1週間ほど経って、スベリヒユのあった所に行ってみると、花はすっかり終わっていました。
蓋果も未熟なものもありましたが、蓋が取れて種子が多少残っている程度のものが見られました。


ハナスベリヒユ(Portulaca umbraticola Kunth)

   .
スベリヒユ科スベリヒユ属の1年草(多年草)で、南北アメリカが原産地。
別名はポーチュラカで、スベリヒユ属の学名が使用されている。
草丈は5〜20cmで、茎は分枝して横に広がり、枝の長さは10〜30cmになる。
葉は、長さ10〜35mmの肉厚なへら形で、先は円形〜切形になる。
花期は6月〜9月で、花は20〜30mmの5花弁(八重咲きもある)である。
花色は多彩で、白色、黄色、桃色、薄紅色、紫色のほか、絞り模様のものなどがある。

花形はマツバボタンそっくりですが、葉がへら状でこん棒状のマツバボタンとの違いです。
スベリヒユと同じ属なので、葉の形や花の形はほぼ同じで、花が大きく、花色が豊富です。
1990年の大阪花博以降、急速に普及し、改良が進められていて、花色や大型花が増えています。


ヒメマツバボタン(Portulaca pilosa)
<ナデシコ目・スベリヒユ科・スベリヒユ属>

スベリヒユ科スベリヒユ属の1年草で、北アメリカ、南アメリカが原産地。
日本へは、関東地方以西で1960年代から帰化が知られるようになった。
草丈は10cm前後とあまり高くならず、分枝して横に30cmほどまで這って広がる。
葉は互生し、長さ5〜20mm、幅1〜3mm、肉質が厚く、扁平な棒状で、基部に白色の毛がある。
なお、別名のケツメクサは、この基部の毛に由来している。
花期は7月〜9月で、茎先に6〜9個の葉が総苞状に輪生して付き、中心に数個の花が束生する。
花は直径5〜15mmの紅紫色の5弁花で、花弁は長さ3〜5mm、幅1.5〜3mmの倒卵形。
オシベは5〜12個、柱頭は3〜5個で、蓋果は長さ1.5〜4.3mmの楕円形。
種子は黒〜鉛色で、直径0.4〜0.6mmのほぼ円盤形である。

2021/8/31
実家近くの川沿いを散歩中、漁港の岩壁脇でスベリヒユと混生している紅紫色の花を見つけました。
花はマツバボタンを小さくしたような形をしていて、葉も棍棒状でマツバボタンと似ています。
調べてみると、戦後に帰化が確認されたヒメマツバボタンと分かりました。
学生の頃には見たことがありませんので、ここ数十年の間に広がったものと思われます。





2021/9/7
1週間ほど経って、ヒメマツバボタンのあった所に行ってみました。
直ぐ傍のスベリヒユは花が終わっていたのに、ヒメマツバボタンは花が多少残っていました。
蓋果も未熟なものもありましたが、蓋が取れて種子が多少残っている程度のものが見られました。

ハゼラン(Talinum crassifolium Willd)
<ナデシコ目・スベリヒユ科・ハゼラン属>

スベリヒユ科ハゼラン属の多年草で、南米原産の帰化植物。
日本には明治時代に移入され、その後、逸出して野生化し、本州から四国、九州と分布を広げている。
海外では、メキシコ、カリブ海地域、西アフリカ、中米と広い分布域を持つ。
草丈は30〜150cmで、茎は円形で、まばらに分枝する。全体に無毛。
葉は互生し、長さ5〜12cmの楕円形。やや厚みのある多肉質で、全縁。
花期は6月〜9月で、細長い花茎を立ち上げ、よく分枝する円錐花序に花を多数付ける。
花は直径6mm前後の5弁花で、花色は淡紅色〜赤色で、萼片は早落性。
オシベは15〜20個程度で、柱頭は3裂する。花柄は長くとも20o程。
本種が開花するのは午後の3時頃で、数時間でしぼむ。そのためサンジソウ(三時草)等の別名がある。
果実は刮ハで、直径3〜5mmの球形で、3稜があり、熟すと3裂する。

2017/8/17 9:28
実家近くの側溝脇で、ハゼランが大きく枝を伸ばし、ツボミや果実を付けていました。
見かけたのが、9:28と開花する時間帯ではなかったので、ツボミのみでした。


2022/8/15 17:00
実家近くの側溝脇を通ったとき、ハゼランが花を咲かせているのに気が付きました。
開花している所を撮っていなかったことを思い出し、撮影したものです。
下記の果実になった状態とは見た目が異なり、果実の方が爆ぜる花火に似ている気がします。

 
2020/11/16,17
夏に見かけたハゼランですが、咲き終わって真っ赤な果実をたくさん付けていました。
一部の果実は熟して3裂し、種子を落として白っぽくなっています。
この花序を逆さまに持てば、線香花火が爆ぜているように見えなくもないですね。


ハゼランの花

  ハゼランは、開花するのが午後3時以降で、数時間で萎んでしまうという変わった花です。
花を見ればわかると思いますが、名前にランと付いていますが、ランとは程遠い種類です。
ハゼランを漢字で書くと「爆蘭」で、爆ぜるランという意味です。
爆(は)ぜるという字を使う理由や蘭と名が付く理由は、諸説あります。
花が爆ぜるように咲くとか、果実が線香花火(赤い球から火花が爆ぜるように出る)のようだとか、
熟した果実が3裂して、種子を弾き飛ばす様が爆ぜるようだとかがあります。
蘭の方はもっと不明で、花がきれいだからとする説がありますが、きれいな花はもっとあります。
中国で蘭と名が付くのは、群がって欄干のようになっている植物を指しているそうです。
花の付き方がそれに近い「君子蘭」や「竜舌蘭」などは、中国名から来ているようです。
で、ハゼランの中国名は「土人参」で、これも違うようなので、実際、由来は不明です。


オオケタデ(Persicaria orientalis)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・イヌタデ属>

タデ科イヌタデ属の一年草で、インド、マレーシア原産の帰化植物。
全体に毛が多いことから付いた名前であるが、オオベニタデの別名がある。
日本では北海道から本州、四国、九州と全国に分布している。
草丈は1〜2m程になり、全体に毛が生えており、それが和名の由来になっている。
葉は長さ20p前後の広卵形で、先は尖り、基部は心形。葉裏には腺点があり、托葉鞘は長さ2p程。
花期は7月〜10月で、枝先に長さ5p前後の総状花序をいくつか付け、淡紅色の小花を多数付ける。
花被は5裂し、8個のオシベは花被から少し飛びだす。痩果は直径3o程の球形で、黒く熟す。

2012/8/12
実家近くの空き地で、オオケタデが2mくらいまで大きく育ち、花を付けていました。
オオケタデは何度か見たことがありますが、ここまで大きな株を見たのは初めてです。

 
2021/9/13
実家近くの空き地で、久しぶりにオオケタデを見かけました。
花も大きいですが、草丈も私の背よりも高いので、2m弱はありそうです。

シロバナサクラタデ(persicaria Japonica)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・イヌタデ属>

タデ科イヌタデ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
草丈は50〜100cmで、茎は高く、枝分かれして節が膨らむ。
葉は互生し、長さ7〜16cmの披針形で先が尖り、葉縁や脈上に伏毛がある。
托葉鞘は長さが10〜18mmで褐色。筒部の長さの半分ほどの縁毛がある。
花期は8月〜10月で、花被は白色で、長さ3〜4o。5裂(まれに4裂)する。
花序は1〜5本に分枝して細長く、先が垂れ下がることが多い。
花は異形花柱性で、短花柱花と長花柱花がある。
短花柱花では、オシベの長さがメシベより長く、オシベが花被より突き出るのに対して、
長花柱花では、メシベの長さがオシベより長く、メシベが花被より突き出る。
オシベは6個(まれに7個とか8個)で、メシベの花柱は2裂(まれに3裂)する。

2020/8/6
散歩中、道路脇の空き地に白い花のイヌタデが点々と咲いていました。
オオイヌタデも花は白いですが、その花とは花も咲き方も異なっています。
後で調べた所、サクラタデよりは小さく、花も白くて、垂れ下がっているので本種としました。

エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・ギシギシ属>

タデ科ギシギシ属の多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本を含むアジア、北アフリカ、オセアニア、南北アメリカに広く移入分布する。
草丈は40〜120cmで、下部の葉は葉幅が8〜12cm、長さ15〜30cmと大きい。
茎や葉柄、葉の中脈がしばしば赤味を帯び、花穂も赤味を帯びることがある。
下部の葉の基部は浅い心形となり、葉の縁は細かく縮れて、葉裏の脈上には毛が密生して白い。
茎葉は葉柄が短い狭長円形で、上にいくほど葉は小さくなり、無柄となる。
花期は6月〜8月で、花は長い総状花序に間隔を開けて、多段に輪生する。
花柄は細く明瞭な関節があり、関節は中間より基部側にある。
雌雄同株で、両性花と雌花がある。花は淡緑色の内花被片、外花被片各々3個からなる。
オシベ6個、メシベ1個があり、子房には3個の花柱がある。
花後、内花被片3個が大きくなって、先の尖った卵円形になり、果実を包み込む。
その内花被片の縁には長く突き出た複数の突起があり、中央に瘤状の膨らみがある。
この瘤状の膨らみは、赤色になることが多い。果実は長さ2〜3mmの3稜形で褐色〜赤褐色。

2022/6/18
網引湿原のバイオトイレの側で見かけたエゾノギシギシです。
花期はほぼ終わっていて、大半がギシギシ特有の形の果実になっていました。
この場所には数株が群生していて、いろいろな昆虫が見られました。

ギシギシ(Rumex japonicus)
<ナデシコ目・タデ科・タデ亜科・ギシギシ属>

タデ科ギシギシ属の多年草で、広く日本に分布している。
スイバと異なり、同じ株に両性花と雌花をつける。茎や花が赤味を帯びない点でスイバと区別できる。
茎の途中の葉の付き方や、痩果を包む萼片に瘤状のふくらみがあるかどうかでも区別できる。
草丈は40〜100cmほどになり、茎は直立して多数分枝する。
下部の葉は、長楕円形で長い柄があり、縁は波打っている。
茎葉は上部ほど小さくなり、無柄になる。葉先は丸く、基部はやや心形。
花期は5月〜6月で、花は細長い総状花序に付き、多段に密に輪生する。雌雄同株。
両性花と雌花があり、花被片(萼)6個、オシベ6個、メシベ1個からなる。
果実を3個の内花被が包む。内花被は心形で、縁に不規則な鋸歯があり、中央に長卵形のこぶがある。

2019/6/26
実家近くを散歩中、道路脇の空き地でギシギシがたくさんの果実を付けていました。
似たものが一緒に生えていることが多いのですが、ギシギシは緑色なので分かり易いです。

ハマナデシコ(Dianthus japanicus Thumb.)
<ナデシコ目・ナデシコ科・ナデシコ属>

ナデシコ科ナデシコ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州、沖縄の海岸に自生する。海外では朝鮮に分布する。
草丈は15〜50cm茎は叢生して、下部は木質化し、上部は直立して無毛。
根出葉はロゼットとなり、長さ5〜9cmの倒披針形で、鈍頭。葉脈は網目状。
茎葉は十字対生し、長さ5〜9cmの長楕円状披針形で、鈍頭〜鋭頭。
葉は基部で合着して、長さ数mmの筒となる。葉質は厚く、両面無毛で、縁毛がある。
花期は7月〜10月で、茎頂の集散花序に直径15mm前後の花を多数、密に付ける。
3対の苞は長楕円形で、先に長さ5〜6mmの草質の尾が付く。
萼は長さ19〜21mmの筒型で、5個の花弁は紅紫色で先が歯牙状。
刮ハは筒型で萼筒より少し長く、先が4裂する。種子は長さ2mm前後で黒色。

2021/3/20
実家近くの河川敷を散歩中、土手下で茎頂にたくさんの果実(跡?)を付けたものを見かけました。
それを見て、子供の頃に庭で良く見かけた植物を思ったのですが、それが何か思い出せません。
正体不明のまま、お蔵入りとなってしまいました。


2021/4/10                 2021/4/16
4月に入って河川敷を散歩中、土手の下隅で雑草らしくない葉の植物を見つけました。
そう、子供の頃に良く見かけた植物の葉で、3月に見た枯れた植物の新葉と思われます。
4/10の写真で、緑色の葉の下に見える暗紫色の葉は、冬越ししたロゼットでしょうか。


2021/5/14
5月に入ると基部で分枝して成長し、草丈は30cmほどになっていました。


2021/6/5
6月に入った頃、様子を見に行くと茎頂にぎっしりとツボミが付いていました。


2021/6/12
そろそろ花が咲いたかと様子を見に行ったのですが、まだ、ツボミがほころび始めた所でした。
花の色が紅紫色と分かり、改めて花の色も加味して調べた所、ハマナデシコと分かりました。


2021/6/17
今度こそ、開花した花を見ることができるかと行ってみると、きれいな紅紫色の花が咲いていました。


2021/6/24
様子を見に行くと、茎頂にびっしりと花が咲き誇っていました。
子供の頃、家の庭にも植えられていて、花が咲き誇っている姿が記憶に残っていたんですね。
野草の中でも、かなりインパクトのある部類に入ると思います。


2021/8/15
もう花は終わっているかもと、久しぶりに様子を見に行くと、まだ、花は残っていました。
ただ、大雨で増水した際に水没し、葉にゴミが絡み、かなり傷んでいました。
水没ですっかり枯れてしまったものもある中で、比較的、本種はきれいに残っていました。


2021/8/31
そのハマナデシコですが、ほぼ咲き終わり、一部の花序に数輪の花が見られる程度になりました。
茎が立っていたのはこの株だけで、他の株では倒れて枯れてしまっていました。


2021/11/12
最後まで花を付けていたハマナデシコですが、さすがに花期が終わって枯れていました。
これで、最初に見かけた正体不明の植物と同じ状態に戻ったわけですね。

ムシトリナデシコ(Silene armeria)
<ナデシコ目・ナデシコ科・マンテマ属>

ナデシコ科マンテマ属の越年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
日本では北海道から四国、九州と全国に広く分布する。
海外でも、温暖な地域に広く分布する。
草丈は50cm程になり、葉は対生し、広披針形で基部は茎を抱く。
茎の頂部に円錐花序を出し、紅紫色の5花弁の花を密生させる。花弁は平開し、先は浅く2裂する。
花弁の付け根に1対の鱗片があり、花の中央で立ち上がって飾りのようになっている。
萼は紅紫色の筒状で、15mmほどある。オシベは10本あり、メシベは1本で花柱は3裂している。
茎上部の葉の下部に粘液が帯状に分泌されて、薄茶色になっている部分がある。
この部分に小昆虫が捕えられることがあるが、食虫植物ではないので消化吸収されることはない。
和名は、この小昆虫が捕えられることに由来するものである。

2022/6/28
実家近くの道路脇で、ムシトリナデシコが咲いていました。
以前からあることは知っていたのですが、なかなか撮る機会がなかったものです。
実家近辺では、この場所以外では見たことがないので、少数派なのかもしれません。

ハナヅルソウ(Aptenia cordifolia)
<ナデシコ目・ハマミズナ科・ハナヅルソウ属>

ハマミズナ科ハナヅルソウ属の常緑つる性多年草で、南アフリカ原産の帰化植物。
日本では、本州から四国、九州で見られる。耐寒性があり、野生化しているものも多い。
茎は4稜または円柱形の多肉質で、長さ30〜60cmに平伏して伸び、高さは25cmほどになる。
節間は1〜5cmで、節から発根する。茎の表面には、嚢状の水を含んだ細胞があり、輝く。
葉は対生して付くか1個ずつ付き、葉身は長さ1〜3cmの心形〜楕円形で、葉柄は長さ4〜10mm。
花期は4月〜9月で、花は葉腋に単生し、直径10〜15mmで淡赤紫色〜紫色。
花柄は長さ8〜15mmで、果時に伸びる。花托筒は長さ6〜7mmである。
萼片は、小型ものは長さ7mm以下の線形で、大型のものは長さ10mmほどと花期には大きくなる。
花弁は80個前後あり、長さ3〜7mmで反曲する。
仮オシベは50個ほどあり、白色で直立して長さは3o前後。

2020/8/7
散歩中、道路脇で地を這う蔓に赤い花が点々と付いていました。
見るからに園芸品種っぽい草姿ですが、見たことがありません。
調べてみると、ハナヅルソウという南アフリカ原産のものと分かりました。
耐寒性があり、野生化しているものも多いようなので、どこかから逸出したのでしょう。

キバナセンニチコウ(Gomphrena haageana)
<ナデシコ目・ヒユ科・センニチコウ属>

ヒユ科センニチコウ属の多年草で、原産地は北アメリカ南部、メキシコ。
なお、日本では耐寒性が低いため、春巻きの1年草として扱われる。
草丈は60〜100cmあり、茎は叢生せず、直立する。茎には軟毛がある。
葉は対生し、長さ6〜10cmの披針形〜長楕円状線形で、先が尖り、軟毛がある。
花期は7月〜10月で、花序は直径20〜28mmの球形〜短い円筒形の頭状花序。
花序は淡褐色であるが、小苞が赤橙色で、花後には退色するがあまり目立たない。
その小苞の中から5裂した白い筒状花が出てくる。筒部に密に羊毛が付く。
雄性先熟で、オシベ5個は花糸が融合して筒状になり、黄色い葯が良く目立つ。
雌性期に入ると葯が取れ、白い花糸が残り、メシベは柱頭が2裂して伸びるてくる。

2017/8/17
実家近くの空き地で、真っ赤な頭花を付けた千日紅(センニチコウ)のような花を見かけました。
後で調べると、千日紅の仲間で園芸品種のストロベリーフィールズというキバナセンニチコウと分かりました。
拡大写真で黄色く見えているのが、筒状のオシベの先に付く葯で、花冠は赤い小苞に隠れてしまっています。
下の方で白く見えている5個の糸状のものは、オシベの花糸で、この中心からメシベの柱頭が覗いています。


2020/8/7
以前見かけたのと同じ場所で、キバナセンニチコウが真っ赤な花(花序)を付けていました。
前回よりもうまく撮れ、左側はそれを最大限に拡大したものです。
黄色い葯には黄色い花粉が点々と付いているのが分かります。
また、左の白い花糸5個が開いている外に見える、ピンクの披針形のものは5裂した花被片です。
2裂した柱頭が出ているものはないかと探したのですが、見つかりませんでした。

トウカイコモウセンゴケ(Drosera tokaiensis subsp. tokaiensis)
<ナデシコ目・モウセンゴケ科・モウセンゴケ属>

モウセンゴケ科モウセンゴケ属に分類される多年草で、日本固有種。
モウセンゴケとコモウセンゴケの中間的な形質をしており、交配由来の独立種。
国内では、本州の北陸、東海〜中国地方と四国が知られており、九州は未精査。
草丈は10〜20cmで、茎はごく短く、葉は根出状に出てロゼットを形成する。
葉はスプーン形〜へら形で、葉柄との境界はあまりはっきりしない。
葉の表面には全体に赤色の長い腺毛があるが、基部の葉柄状部には無い。
モウセンゴケは葉身と葉柄がはっきり区別でき、コモウセンゴケは区別がほとんどない。
本種はその中間的で、葉柄の短いものもあるが、多少なりとも区別できる。
花期は6月〜8月で、花茎を伸ばし、先にサソリ型花序を付ける。
花が咲き進むにつれて花序は真っ直ぐに伸びていく。
花は直径8〜10mmの鮮やかなピンク色で、コモウセンゴケより一回り大きい。
萼片は狭卵形〜卵形で鈍頭。
生育環境で、モウセンゴケは常に水に浸かっている場所を好み、
コモウセンゴケは比較的乾燥している場所を好む。
トウカイコモウセンゴケはその中間で、やや水分量の多い場所を好むとされている。
これら3種の染色体数が異なり、モウセンゴケは2n=20の2倍体、
コモウセンゴケは2n=40の4倍体、トウカイコモウセンゴケは2n=60の6倍体であった。

2023/7/18
網引湿原の奥池に差し掛かった所で、5月に見かけたトウカイコモウセンゴケが多くの花を付けていました。
5月に見かけたときには、まさに咲き始めたばかりでしたが、今は花の盛りといったところです。


2023/7/25
1週間が過ぎ、トウカイコモウセンゴケの開花も終わりが近づいているようです。
サソリ型花序がほぼ伸びきって、後、ツボミが数個残る程度になっていました。


2023/8/5
トウカイコモウセンゴケの花がほぼ終わり、数個が確認できただけです。
それと入れ替わるように、その周りではホザキノミミカキグサが淡紫色の花を咲かせていました。
右の写真で、中央下の方に1個咲いていますが、その後方は全てホザキノミミカキグサです。

モウセンゴケ(Drosera rotundifolia L.)
<ナデシコ目・モウセンゴケ科・モウセンゴケ属>


モウセンゴケ科モウセンゴケ属に分類される多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州の湿地帯に、海外では北半球の高山、寒地に広く分布する。
北方ではナガバノモウセンゴケと共生し、その雑種であるサジバモウセンゴケを作る。
東海地方に分布するトウカイコモウセンゴケは、本種とコモウセンゴケとの雑種とされる。
草丈は10〜30cmで、茎は分枝せず、短い。葉はロゼット状に付き、葉身が立ち上がる。
葉身は黄緑色〜赤色で、長さ3〜10mm、幅5〜20oの円形〜腎形で、葉柄は1〜7cm。
葉身の表面には、多数の赤い腺毛があり、その先から甘い香りのする粘液を出し、虫を捉える。
葉柄の基部には、5〜7裂する長さが7mm前後の托葉がある。
花期は6月〜8月で、茎先にサソリ型花序(ぐるっと巻いた花序)を出し、巻きの外側に花が付く。
花茎は、花が咲き進むにつれて真っ直ぐに立ち上がり、高さは6〜30cmになる。
花は白い5弁花で、花弁は長さ5o前後、花の直径は10mm前後になる。
オシベは5個、メシベは3個で、メシベは基部から2裂する。萼は5深裂し、裂片は長楕円形。
刮ハは長さ4〜5mmの長楕円形で、種子は紡錘形の種皮に包まれ、長さ1.3mmで茶褐色。

2022/6/18
網引湿原第2湿原の木道脇ではモウセンゴケの群生が見られ、ハッチョウトンボがそこここに居ます。
案内板などにはトウカイコモウセンゴケが紹介されていたので、てっきりそうだと思っていました。
しかし、後で調べてみると、撮った写真は全て白花のモウセンゴケでした。
どこかに花が淡紅紫色のトウカイコモウセンゴケがあったのかもしれませんが、気が付きませんでした。
よく調べて行かなかった私の大チョンボですね。要反省。


2023/5/18
昨年、たくさんのモウセンゴケを見かけた網引第2湿原には、今年もたくさんの葉が見られます。
花茎も伸び始めているので、咲き出すのもそう遠くはなさそうです。


2023/7/18
奥池の畔のトウカイコモウセンゴケがたくさん花を付けていたのに対して、
第2湿原のモウセンゴケは咲き終わっているようで、やっと1つだけ咲いている花を見つけました。

クマヤナギ(Berchemia racemosa)
<バラ目・クロウメモドキ科・クロウメモドキ連・クマヤナギ属>

クロウメモドキ科クマヤナギ属に属するつる性落葉低木で、日本固有種。
日本では、北海道南部から本州、四国、九州に分布する。
樹高は、他の物に左巻き(上から見て)に絡んで伸びると5mほどになり、樹冠は傘形に広がる。
若枝は暗黄緑色であるが、成長と共に黒っぽくなって紫褐色になり、直径は数cmほどになる。
葉は互生し、長さ4〜6cmの長楕円形で全縁。葉先は鈍頭〜丸く、基部は円形〜浅い心形。
新枝の葉は大きくて細長いが、2年枝につく葉は丸みを帯びる。
羽状の葉脈が目立ち、側脈は7〜8対が並行して縁まで伸びる。
葉表は光沢があるが、葉裏は粉を吹いたような白みを帯びる。
葉柄は1cm前後で、淡赤色を帯びる。秋には黄葉して落葉する。
花期は7月〜8月で、枝先や葉腋から総状花序を出し、黄緑色の小花を多数付ける。
枝先では大形の複総状花序になるが、横枝は再分枝しない。
花は直径3mmほどで、花弁と萼片は各々5個あり、花弁は萼片より短い。
萼片は長三角形で先が尖り、花弁のように見える。花弁は先がわずかに開く程度である。
花弁は左右から内に巻いてオシベの花糸を包み込み、花弁の上に葯が出る。
果実は核果で、長さ5〜7mmの長楕円形。翌夏に緑色から赤く熟し、その後、紺〜黒色になる。
果実が熟す頃に新しい花が開花するので、熟した果実と花を同時に見ることができる。
なお、熟した果実は生食可能で、大概は鳥類の餌となる。

2022/8/16
網引湿原入口の駐車場近くの柵から枝を伸ばして、多くの小花を咲かせていました。
花と言っても、開いているのかどうかわからなような咲き方の、直径数mmの白い花です。
葉先が丸い特徴的な葉だったので、葉の形から探してクマヤナギにたどり着きました。
花と昨年の果実が同時に見られるようなのですが、果実は見当たりませんでした。
鳥の餌になるようなので、既に食べられてしまったのかもしれません。

イソノキ(Rhamnus crenata)
<バラ目・クロウメモドキ科・クロウメモドキ連・クロウメモドキ属>


クロウメモドキ科クロウメモドキ属に属する落葉低木で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国。台湾、カンボジア、タイ、ラオス、ベトナムに分布する。
樹高は2〜4mになり、幹は灰褐色で、淡褐色の皮目があり、縦に裂け目が入る。
葉は互生し、葉身は長さ6〜12cmの長楕円形で、基部は鈍形で先は尖る。
縁には細かい鋸歯があり、葉脈は深くて、裏面に隆起する。葉柄は長さ5〜10mm。
花期は6月〜7月で、上部の葉腋に集散花序を出す。花は直径5mm前後の黄緑色で、両性花。
花弁と萼片は各々5個あり、白緑色の萼片は直立して、花弁は萼片より小さい。
そのため、花はほとんど開かず、内側の花弁はほぼ見えない。花柱は3浅裂する。
果実は直径6mm前後の球形の核果で、赤色から紫黒色に熟す。

2023/7/18
昨年、真っ黒に熟した果実を見つけたのは、網引湿原の駐車所からそう遠くない場所でした。
その花を見ようと探したところ、その場所では既に果実になってしまっていました(上段の写真)。
その後、第3湿原の遊歩道脇の何ヶ所かで、咲いている花を確認できました(下段の写真)。
といってもほとんど開かないので、ツボミが少し口を開いたようにしか見えません。
そして花弁のように見えているのは萼片で、内側の花弁は接写してみましたが分かりにくいですね。
下段左の拡大写真の右下の花で、半開きの萼片の隙間に見えているのが花弁ではないかと思います。

ホソバイヌビワ(Ficus erecta Thunb. var. erecta f. sieboldii)
<バラ目・クワ科・イチジク連・イチジク属>



クワ科イチジク属の落葉低木で、在来種。雌雄異株。
日本ではイヌビワと同じく、本州の関東以西から四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、韓国の済州島、台湾に分布する。
樹高は3〜5mで良く分枝し、樹皮は灰褐色で滑らかである。
葉は互生し、葉身はイヌビワより細く、長さ8〜20cm、幅3〜8pの線状披針形である。
葉先は尖り、基部は円形または心形で、全縁。両面とも無毛である。
葉柄は長さ2〜5cm、托葉は長さ8〜12cmの狭披針形で先は尖り、落ちやすい。
花期は4月〜7月で、花嚢は長さ8〜10mmの球形で、葉腋に1個ずつ付く。
雄花嚢と雌果嚢は同形で、花嚢の内側に小さな花が多数付いている。
雄花には花被片5個とオシベ2個、雌花には花被片5個とメシベが1個あり、花柱は長い。
雄花嚢の奥に雌花に似た「虫えい花(花柱が短く、不妊)」があり、これにハチが産卵する。
幼虫は虫えい花の子房を食べ、成虫になって、初夏になると雌成虫は外に出る。
雌成虫は雄花序の出口にある雄花から花粉を受け、初夏に開花する雌果嚢に入って授粉をする。
雄成虫は交尾後、その中で生涯を終え、交尾後、雄花嚢に入った雌成虫だけが産卵できる。
果実は9月〜10月に雌果嚢(直径14〜18mm)は紫褐色に熟し、食べられる。
食感も味も小型イチジクといえるが、ビワより不味いというのが和名の由来とか。
なお、雄花嚢は基部が細長く伸び、硬くて食べることはできない。

2022/7/8
実家近くの小学校の校庭の端で、丸い果実状のものがたくさん付いた樹がありました。
どこかで見たような気もするのですが、何だか分かりませんでした。
後で調べてみると、果実ではなく、花嚢というイチジクのような花と分かりました。
この花嚢の内側に花がびっしりと付いていて、外部からは見ることができない花です。
雄株と雌株があるようですが、この状態ではどちらか判断はできないようです。
秋に果実が熟した頃になると、果嚢の形態から雌雄の判断ができるようです。


2022/8/15
アオギリの写真を撮りに行ったついでに、ホソバイヌビワの様子も見てきました。
前回見たときにはたくさんの果実が付いていたのですが、各枝に1個程度になっていました。
果実は熟している途中なのか、赤茶色になって、濃色の筋が入っていました。

オキジムシロ(Potentilla supina)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・キジムシロ連・キジムシロ属>

バラ科キジムシロ属の多年草で、外来種。原産地は欧州。
日本では、関東や関西での報告があるようですが、詳細な分布域は不明です。
海外では、中国、ロシア、モンゴル、インド、ネパールなどに分布している。
草丈は20〜40cmで、茎は斜上か直立し、上部は分枝し、僅かに有毛かまたはほとんど無毛。
葉は奇数羽状複葉で、根生葉の小葉は7〜11個、葉柄はやや長く、托葉がある。
小葉は狭長楕円形で羽状中裂し、両面ほとんど無毛で、縁に若干の毛がある。
茎葉は互生し、上部では3出複葉で、葉柄は無くなって無柄となる。
花期は5月〜9月で、葉腋から花柄を1個出し、直径10〜15mmの黄色い5弁花を付ける。
花弁は小さくて先が凹み、花弁間に隙間があって、間に萼片が覗く。オシベ、メシベは多数ある。
萼片は卵形で先が尖り、複萼片は萼片より細めで小さく、花弁から少し覗く程度。
痩果は萼片に包まれて多数付き、長さ1mm強で、膨らんだ付属体(しわがない)が付く。

2019/6/26
実家近くを散歩中、道路脇の畔に咲いている黄色い花が目に止まりました。
キジムシロの花のような付き方なのですが、葉の形が羽状細裂したキツネノボタンのような葉です。
後で調べていて、1950年頃に侵入が確認されたオキジムシロらしいことが分かりました。
比較的新しい帰化種のためか、Webで調べてもあまり詳しい情報が得られませんでした。


キジムシロ属の花と葉

   .
   .
<オヘビイチゴ>         <オキジムシロ>         <キジムシロ>
これら3種のキジムシロ属は、花の形は少し違いがありますが、花の付き方はそっくりです。
しかし、葉の形は大きく異なり、それを見れば一目瞭然です。


テリハノイバラ(Rosa luciae/Rosa wichuraiana)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・バラ属>

バラ科バラ属のつる性落葉低木で、日本では本州から四国、九州に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、フィリピンに分布する。
茎には鉤形の刺があり、立ち上がらず、地を這って伸びる。
葉は互生し、長さ8p前後の奇数羽状複葉。小葉は2〜4対で、頂小葉と側小葉の差はない。
小葉は長さ2p程の楕円形で、両面とも無毛で厚みがあり、鋭い鋸歯がある。葉表に光沢がある。
花期は6月〜7月で、枝先に直径3p程の白花を数個付ける。
花弁は5個で、オシベは多数ある。花柱は合着し、毛がある。
偽果は直径8o程の卵球形で、真っ赤に熟す。

2022/6/7
高御座山への獣道を上っているときに見かけたテリハノイバラです。
最初に見た時、ノイバラかと思ったのですが、葉に光沢が見られたので本種としました。
別の場所で見たのはノイバラだったかもしれないのですが、スルーしてしまいました。


2022/6/18
網引湿原入口の駐車場からバイオトイレ辺りまでに、点々と咲いていたテリハノイバラです。
どこかにノイバラもあるのではと探したのですが、見当たりませんでした。


2022/8/9
網引湿原入口の駐車場から点々と咲いていたテリハノイバラが、果実を付けていました。
まだ、未熟な果実ですが、秋には熟して真っ赤に色付いてくれるでしょう。


2022/10/11
網引湿原入口の駐車場から点々と見られたテリハノイバラですが、果実が色付き始めていました。
まだ、黄色〜橙色程度の色付きですが、秋の深まりとともに熟して赤く色付くと思います。

ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)
<バラ目・バラ科・バラ亜科・ワレモコウ連・ワレモコウ属>

バラ科ワレモコウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に広く分布する。
海外では、朝鮮半島、中国、シベリアに分布し、アラスカにも帰化している。
草丈は1m程になり、茎は上部で枝分かれして、その先端に穂状の花序を付ける。
葉は、根際か茎の下部に付き、奇数羽状複葉で、小葉は5〜13枚。
枝分かれした茎の先に赤紫色の花穂を付ける。花は、花穂の上から下に咲いていく。
花には花弁はなく、4枚の萼片がある。萼片は咲き始めは紅紫色で、咲き終わると暗紫色になる。

2022/8/16
網引湿原第3湿原を周っているとき、ワレモコウが花は咲かせ始めているのに気が付きました。
湿原の所々で茎を立ち上げて、花序の上部が紅紫色になっていました。


2022/8/27
前回訪れた際、咲き始めていたワレモコウですが、かなり咲き進んでいました。
花序の形が明らかに異なり、下部に黄色いオシベが確認されるので、8割ほどが咲き終わったようです。
咲き終わった後、暗赤紫色になった萼片が大きく開いているので、花が咲いているように見えます。


2022/10/11
すっかり花は咲き終わっていますが、暗赤紫色になった萼片が花のようです。
おそらく、この咲き終わりの姿を見る機会の方が、多いのではないでしょうか。
私も、あまりよく知らなかった頃、この姿が花が咲いているところだと思っていました。

トキワサンザシ(Pyracantha coccinea)
<バラ目・バラ科・モモ亜科・ナシ連・ナシ亜連・トキワサンザシ属>



バラ科トキワサンザシ属の常緑低木で、ヨーロッパ南部から西アジア原産。
日本では、本州から四国、九州にかけて植栽、あるいは、一部野生化している。
樹高は2〜6mで、樹幹は直立して枝には刺があり、褐色の毛が生えているが、後に無毛。
葉は互生し、長さ2〜4cmの倒卵形で、縁に細かい鋸歯がある。
葉先は丸くて、先端側が最も幅が広く、ピラカンサの中では最も幅が広い。
花期は4月〜5月で、葉腋に散房花序を付け、直径10mm前後の白い5弁花を多数付ける。
オシベは20個で、花糸の長さは2o弱である。萼片は5個ある。
果実は、直径5〜8oの扁球形で、晩秋に真っ赤に熟し、一際、目を引く。

※ トキワサンザシやタチバナモドキに関しては、こちらに詳細を掲載していますので、ご参照ください。

2021/6/17
実家近くの川沿いを散歩中、まだ、トキワサンザシが花を付けているのを見かけました。
河岸に生えていたトキワサンザシは、5月の下旬には咲き終わっていましたので、少々晩生のようです。
といっても、既に下部は咲き終わって、上部の方だけに花が残っています。それも終わりかけのようです。

ミカイドウ(Malus micromalus)
<バラ目・バラ科・モモ亜科・ナシ連・ナシ亜連・リンゴ属>

バラ科リンゴ属の耐寒性落葉高木で、中国原産の帰化植物。別名はナガサキリンゴ。
ヒマラヤズミとホンカイドウの種間交雑種とされている。
ミカイドウは、古くから庭木や鉢植えとして利用されてきており、野生のミカイドウはまずない。
樹高は5〜8mになり、樹皮は灰黒褐色で平滑である。
葉は互生し、長さ6〜11cmの長楕円形で、先が尖り、縁には鋸歯がある。葉柄は数cm。
花期は4月〜5月で、新葉と同時に短枝の先に、淡紅色の花を散形状に集まって付ける。
花は直径3〜4cmの5花弁で、オシベは多数ある。メシベは5個が基部で合着し、密に軟毛がある。
果実は球形の液果で、直径は15〜20mm。10月〜11月に黄褐色、赤色に熟す。

※ 大きな実のなるミカイドウに対して、綺麗な花が咲くものをハナカイドウと呼ぶ。
ミカイドウより樹高が2〜5mと低く、花がきれいなため、住宅の庭木には向いていそう。

2019/6/26
以前見かけたミカイドウの様子を見に行くと、樹一杯にたくさんの果実を付けていました。
果実はぶら下がるのではなく、果柄の向きに真っすぐに付き、あちこちに向いています。
果実の大きさに関しては、下記のハナカイドウの果実より明らかに大きいです。


ハナカイドウの花と果実

   .
2012/4/10           2013/6/11           2013/11/20
八重のハナカイドウですが、比較的結実率は高いです。
6月の時点での直径は1cmに満たず、11月の熟したと思われる時点でも1cmあるか無いかくらいです。
試しにかじってみましたが、酸味が強く、お世辞にもおいしいとは言い難いです。


ノブドウ(Ampelopsis glandulosa var. heterophylla)
<ブドウ目・ブドウ科・ノブドウ属>

ブドウ科ノブドウ属のつる性落葉低木で、日本全国で見られる。
日本も含め、東南アジア一帯に分布しアメリカにも帰化している。
藪に多く見られ、都市でも空地などに見られる。
太いつるは暗灰褐色で、褐色の皮目が目立つ。
葉は互生し、葉身はほぼ円形で3〜5裂する。基部は心形で、縁には鋸歯がある。
葉に対生して、巻きひげが出て、先が2又に分かれる。
花期は7月〜8月で、葉に対生して集散花序を出し、直径数oの小さな花を多数付ける。
花被片は5個あるが、開花後、早めに落ちてしまう。
オシベは5個あり、花糸は短い。メシベは細く、1個で直立する。花盤は子房を環状に巡り、全縁。
果実は液果で、直径は7mm前後の緑色の球形。熟すにつれ、淡緑色からピンク、紫色になる。
しかし、ブドウタマバエやブドウトガリバチが寄生して、虫えいを作ることが多く、紫色や碧色等になる。

2022/8/27
網引湿原入口の駐車場の近くで、ノブドウが花を付け、一部が未熟な果実になっていました。
秋には熟して紫色になるのですが、虫えいなることが多く、そうなると様々な色に発色します。

ヤブガラシ(Cayratia japonica)
<ブドウ目・ブドウ科・ヤブカラシ属>

ブドウ科ヤブカラシ属のつる性多年草で、在来種。なお、標準和名はヤブカラシである。
日本では、北海道から本州、四国、九州まで広く分布している。
日本以外では、東アジアから東南アジア、オーストラリアなどにかけて広く分布している。
地下茎を長く伸ばし、藪にはびこり、藪を枯らしてしまうほど繁殖力が強いのが和名の由来。
蔓は長さ2〜3mになり、葉は互生し、葉と対生する巻ひげで他の物に巻き付いて覆い被さる。
葉は5小葉が鳥足状に付く複葉で、頂小葉が長さ4〜8cmの狭卵形で一際大きい。
側小葉は頂小葉より小さく、基部のものほど小さくなる。柄も頂小葉は数cmあるが、側小葉は短い。
花期は6月〜8月で、葉と対生する集散花序に散房状に付き、徐々に開花する。
花の直径は5mm前後で、淡緑色の花弁4個とオシベが4個、メシベは1個ある。
開花直後は雄性期で、メシベの花柱は短く、花盤は橙色で、オシベがある。
花弁とオシベは開花後半日ほどで散ってしまい、雌性期に移行する。
雌性期には、メシベの花柱が伸び出し、直径3o前後の花盤も淡紅色に変化する。
この花盤は蜜が豊富で、蜂や蝶などの昆虫がよく集まる。
果実は球形の液果で黒く熟すが、結実するのは2倍体のみで、中部以西では3倍体に混じって見られる。
関東以北に分布するのは3倍体のみのため結実は見られない。

2017/8/17
実家近くを散歩中、川岸近くでヤブガラシが花を付けていました。
左写真の左下の花は、開花したばかりの雄性期の花で、4個の花被片や4個のオシベが残っています。
花被片やオシベが脱落したものが右側のもので、雌性期に入り、花柱が大きく伸び出しています。
橙色の花盤中央に見える花柱の長さを、左の雄性期のものと右の雌性期のもので比べてみてください。
なお、右側のものは花盤の色が橙色のままで、雌性期に入って間もないもののようです。
時間が経つと、花盤の色が淡紅色に変わり、右写真のように両方の色の花盤が混じって見られます。


 <雄性期>      <雌性期初期>  2021/8/31 <雌性期>       <雌性期終盤>
開花直後の雄性期では、メシベの花柱は短く、花盤は橙色で、オシベがあります(左端)。
開花後半日ほどで花弁とオシベは散って雌性期に移行しますが、初期では花盤の色は橙色です。(中央左)
雌性期にはメシベの花柱が伸び出し、花盤の色も橙色から淡紅色に変化します(中央右)。
雌性期も終盤になると、花盤の蜜も少なくなり、色褪せて、長く伸びた花柱が目立つようになります(右端)。

コマツヨイグサ(Oenothera laciniata)
<フトモモ目・アカバナ科・マツヨイグサ属>


アカバナ科マツヨイグサ属の二年草で、北アメリカが原産地の帰化植物。
日本では、本州、四国、九州に分布し、川原、裸地、農耕地などに自生する。
海外でも、アジア、アフリカに移入分布している。
草丈は20〜60cmと幅があり、茎は毛が密生し、基部からよく分岐して、斜上あるいは匍匐する。
そのため、しばしば地表にグランドカバーのように広がることがある。
葉は互生し、葉身の長さは2〜10cmほどで、深く切れ込むものから、鋸歯状のものまで変異がある。
花期は5月〜10月で、葉腋から単生し、直径2cm前後の淡黄色の花を付け、夕方に咲き、翌朝にはしぼむ。
花弁、萼片とも4個で、萼片は開花後、垂れ下がる。花弁はしぼむと赤色を帯びる。
子房の上に長さ30o前後の円柱状の花托筒があり、子房も含めて花柄のように見える。
刮ハは長さ20〜50oの円柱状で、上向きの短毛があり、4分果。熟すと先が4裂する。

2017/8/17
実家近くの道路脇で見かけたコマツヨイグサで、朝方だったので花被片は赤くなり、萎んでいました。
単に赤くなって閉じたものや、花被片が縮んでオシベが露出したものなどがありました。
上段左の写真で、右上のツボミはもう少しで咲きそうです。ツボミの基部には毛深い子房が見えています。
その左下にある棒状のものは、花後、花托が落下して子房のみになったもので、倍近い大きさになっています。
下段の写真では、茎先に未成熟な若いツボミが顔を出しています。開花はもう少し先かな。


2019/10/8
実家近くで夕焼けを撮った帰り道、道路脇で咲いていたコマツヨイグサです。
人の手が入っていないのか、大きく広がってそこここで花を咲かせていました。

ヒルザキツキミソウ(Oenothera speciosa)
<フトモモ目・アカバナ科・マツヨイグサ属>

2012/8/11           2012/8/11           2012/8/12
アカバナ科マツヨイグサ属の多年草で、北米が原産地の帰化植物。
観賞用に輸入されたものが野生化し、各地で見かけるようになった。
草丈は30〜60cmで、横に伸びる根茎で群生し、茎の下部は木質化する。
葉は互生し、上部の葉には波状の鋸歯があるが、下部の葉では深い切れ込みがある。
花期は5月〜8月で、直径5cm前後の淡紅色か白色の4弁花を付ける。
花弁は広倒卵形で、基部は黄色味を帯びる。オシベ8個あり、メシベの柱頭は十字に4裂する。
花弁のすぐ下に萼片が4個あり、片側に捲れ上がる。
その下に長さ10〜20o程の花托筒があり、花後、花托筒から落下する。

2012/8/11,12
最近、時々見かえるようになったヒルザキツキミソウですが、実家近くの道端でも見かけました。
ただ、よく見かけるのは淡紅色のヒルザキツキミソウなのですが、ここのものは色がずいぶん淡いです。

しばらく経った春先に近くの国道を通ると、中央分離帯でヒルザキツキミソウが繁茂していました。
それも赤紫色の花と白い花が各々群落を作って、黄色いオオキンケイギクと混生していました。


ヒルザキツキミソウの花

   .

よく見かけるのは左側の淡紅色のヒルザキツキミソウです。
たまに右側のような白花のヒルザキツキミソウも見かけますが、野生化したものでは珍しいです。
今回、見かけたのはその中間型のような花で、白い花弁に淡紅色の筋が入ったような花でした。


メマツヨイグサ(Oenothera biennis)
<フトモモ目・アカバナ科・マツヨイグサ属>


2012/8/12 7:46        2012/8/12 19:19        2012/8/12 20:35
アカバナ科マツヨイグサ属の越年草で、北米が原産地の帰化植物。
日本では、北海道から本州、四国、九州とほぼ全国に分布する。
海外でも、アジア、南アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、アフリカと広範囲に分布する。
本来は、河原や山火事跡などの荒れ地や痩せ地に最初に生えるパイオニア植物である。
また、同じような環境の線路沿いとか路肩などでも見られる。
ただ、他の植物が成長してくると徐々に姿を消してしまうので、草地では見られない。
草丈は50〜150cmで、茎は赤色を帯び、下部からよく分枝して、上向きの毛が生えている。
秋に芽生えて、ロゼットで越冬するが、根生葉には柄があり、先が尖る。
茎葉は互生して葉柄はなく、葉身は長さ3〜6cmで、先が尖る。
なお、根生葉、茎葉とも、葉の縁には浅い鋸歯があり、中央脈は赤色を帯びることが多い。
花期は6月〜9月で、茎の上部に多数の花を付け、順次咲き上る。
花には花柄はなく、子房下位で、長さ3〜5cmの円柱状の萼筒とその基部に子房がある。
花は直径3〜4cmの黄色い4弁花で、萼片は4個、オシベは8個で、メシベの柱頭は4裂する。
花は1日花で、夕方に開花し、朝にはしぼみ始めるが、しぼんでも赤くならない。

2012/8/12
実家近くを散歩中、川岸に生えているメマツヨイグサを見かけました。
夕方になって見に行くと、朝しぼみ始めていた花はすっかり萎れ、新しいツボミが開花間近でした。
気になって、1時間程して見に行くと、ツボミはすっかり開き切っていました。

ユウゲショウ(Oenothera rosea)
<フトモモ目・アカバナ科・マツヨイグサ属>
 
アカバナ科・マツヨイグサ属の多年草で、南米から北米南部が原産地の帰化植物。
現在は、世界中の温暖な地域に広く分布している。
草丈は20〜30cmであるが、条件によっては50cmを超えることもある。
茎には軟毛があり、葉は互生して、葉身はやや幅広の披針形である。
花期は5月〜9月で、茎の上部の葉腋に直径15mmほどの紅紫色の花を付ける。
花弁は4個で、紅色の脈があり、中心部は黄色い。なお、稀に白花も見られる。
オシベは8個あり、葯は赤味を帯びた白で、メシベの先は淡紅紫色で4裂する。
熟した果実は、雨に濡れると裂開し、種子が飛び散る。

2019/6/26
実家近くを散歩中、道路脇に1株、ポツンとユウゲショウが咲いていました。
まだ、成長途中のようで、若々しい株で、きれいな花をたくさん付けていました。

ヒルザキツキミソウに白花があるように、ユウゲショウにも白花があります。

サルスベリ(Lagerstroemia indica)
<フトモモ目・ミソハギ科・サルスベリ属>

ミソハギ科サルスベリ属の落葉中高木で、中国南部原産の帰化植物。
幹は淡紅紫色で平滑、不規則に薄く剥げ落ち、濃淡のまだら模様が現れる。
葉は対生または互生となり、コクサギ型葉序となることもある。
花期は6月〜9月で、枝先に円錐花序を付け、花を密に付ける。
花弁は6個で、筒状の萼は先が6裂する。花弁は細い筒の先に縮れた円形の拡大部が付く。
花色は、紫色、赤紫色、淡紅紫色、白色と変化に富む。
オシベは、外側の6個は花糸が太くて長く、葯は紫色。その内側に30個前後の黄色い葯のオシベがある。
メシベは1個で、果実は円い刮ハ(さくか)で、種子には広い翼がある。

2020/8/14
久しぶりに川岸を散歩していると、土手でサルスベリが花を付けていました。
写真は大きな方の株で、花はピンク色でしたが、小さい方の株は赤い花でした。
植栽するような場所ではないのですが、誰かが持てあまして捨てたのでしょうか。
直ぐ横には、タイワンレンギョウが紫色の花を付けており、なかなか賑やかです。


2020/11/5
夏に花をたくさん付けていたサルスベリですが、たくさんの果実を付けていました。
中には果実が割れて、中の種子が顔を出しているものもありました。


2020/11/22
サルスベリの種子が顔を出していた所ですが、種子が落ちて、葉の上に乗っていました。
種子を見たのは初めてでしたが、確かに片方が薄くなって翼になっています。
モミジと同じように、くるくると回りながら風に流されて落ちて行くのでしょうか。

ミソハギ(Lythrum anceps)
<フトモモ目・ミソハギ科・ミソハギ属>
 
ミソハギ科ミソハギ属の多年草で、在来種。湿地や田の畔などに自生する。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は50〜100cmで、四角い茎は直立して株元は少し木質化し、細い地下茎を伸ばして群生する。
葉は十字状に対生し、葉身は長さ2〜6cmほどの広披針形で、基部は茎を抱かない。
花期は7月〜8月で、直径15mmほどの紅紫色の花を上部の葉腋に多数付ける。
花弁は4〜6個で、同数の萼片と付属体が交互にある。萼片はは三角形で、付属体は針状で開出する。
オシベは12個あり、長いものが6個と短いものが6個ある。
花後、萼片が閉じて、萼筒に蓋をするが、付属体は平開したままになる。

2021/7/1
実家近くを散歩中、畑の脇に咲いているミソハギに気が付きました。
エゾミソハギと似ているのですが、葉の付き方と萼の形から本種と分かります。


ミソハギとエゾミソハギ

ミソハギ
エゾミソハギ

萼に毛がない
付属体は平開する

萼に毛がある
付属体は直立する

葉が茎を抱かない

葉が茎を抱く

近縁のミソハギとエゾミソハギは、分布域や生育環境もほぼ同じでよく似ています。
ただ、上記の写真でもわかると思いますが、以下の3点で区別することができます。
(1)葉が茎を抱くか否か
(2)萼に毛があるか否か
(3)付属体が直立するか平開するか


オミナエシ(Patrinia scabiosifolia)
<マツムシソウ目・スイカズラ科・オミナエシ属>

       2012/8/11              2019/7/4
スイカズラ科オミナエシ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と、沖縄以外の地域に分布している。
日本以外では、朝鮮半島から中国、東シベリアにかけて分布する。
秋の七草の1つで、よく栽培されているが、自生するものは少なく、なかなか見られい。
草丈は60〜100cm程度で、根茎が横に這って増える。茎は直立し、上部でよく分枝する。
葉は対生し、長さ10p程で羽状に裂ける。葉柄は数p〜10cmほど。
花期は8〜10月で、茎先に散房花序を付け、直径数oの黄色い花を多数付ける。
花冠は5裂して筒部は短い。オシベは4個、花柱は1個。
果実は長さ4o前後の長楕円形で、オトコエシのような翼はない。

2012/8/11 実家の庭で、オミナエシの花が開き始めていました。
秋の花のイメージですが、開花は夏真っ盛りの頃から始まります。
2019/7/4 実家の庭のオミナエシですが、花茎が一気に伸びてきました。
茎頂の花序ですが、ツボミが黄色く色付き始めていました。

ネムノキ(Albizia julibrissin Durazz.)
<マメ目・マメ科・ネムノキ亜科・ネムノキ連・ネムノキ属>


マメ科ネムノキ属の落葉高木で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に、海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
樹高は6〜10mで、幹は灰褐色で皮目が目立つ。
葉は互生し、長さ20〜30cmの2回偶数羽状複葉で、葉裏は粉白色で軟毛が生える。
小葉は左右不対称で包丁のような形をしており、夜になると小葉は閉じる。
花期は6月〜7月で、小枝の先端に淡紅色の花を数十個からなる花序を付け、夕方に開花する。
花は、花弁が7〜8mmと小さく、基部が合着している。
花糸が長さ3〜4cmと長いオシベを多数付け、花糸の中程から先が紅色になって、房のようになる。
果実は豆果で、長さ10〜15cmの広線形で、細長くて扁平である。
褐色に熟して、下側の線に沿って裂開し、長さ5〜9mmで扁平な楕円形の褐色の種子が出てくる。

2022/6/28
実家近くのゴルフ練習場に行った帰り道、小川沿いでネムノキが咲いていました。
この辺りでネムノキが咲いているのを見たのは初めてで、ネムノキ自体を見かけません。
この辺りの川沿いは、ハリエンジュが席巻していて、ネムノキは少数派のようです。

ヤブツルアズキ(Vigna angularis var. nipponensis)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・インゲンマメ連・インゲン亜連・ササゲ属・アズキ亜属>

マメ科ササゲ属のつる性1年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島から中国などに分布している。
つるは長く、3m以上になり、周りの草などに巻き付く。
茎、葉、葉柄、果柄など全体に黄褐色の粗い毛がある。
葉は3出複葉で互生し、小葉の長さは3〜10pほどの先の尖った狭卵形で、不規則に2〜3残裂する。
花期は8月〜10月で、葉腋から短い総状花序を出し、長さ2pほどの黄色い花を固まって付ける。
旗弁は左右非相称で、竜骨弁は左に寄って捻じれる。
左翼弁は竜骨弁の上に被さり、竜骨弁の距を右翼弁が覆う。
なお、オシベ10個とメシベ1個は、竜骨弁の中にあって、竜骨弁に沿って曲がる。
萼は4裂し、萼に接して2個の小苞がある。小苞は内に巻き込んで先が尖り、萼の倍くらいの長さがある。
豆果は垂れ下り、長さ5〜10pほどの線形で無毛。種子は1列に入る。
熟すと黒くなり、2つに裂開して捻じれ、種子を飛ばす。

2022/8/27
網引湿原の駐車場近くの斜面で、数本のヤブツルアズキを見かけました。
近くのセイタカアワダチソウなどに絡みついて、ひっそりと花を付けています。
この辺りは頻繁に除草されているようなので、あまり増えることができていないようです。

タンキリマメ(Rhynchosia volubilis)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・インゲンマメ連・キマメ亜連・タンキリマメ属>
 
マメ科タンキリマメ属のツル性多年草で、在来種。
別名は、キツネマメ、ウイロウマメ。痰を止める作用があるという俗説が、和名の由来。
日本では、本州の関東地方以西から、四国、九州、沖縄に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、フィリピン、ベトナムに分布する。
茎は長さ2m以上に伸び、全体に毛が多く、茎には下向きの毛が密生する。
葉は3小葉で、小葉は長さ3〜6cm、幅2〜5cmの倒卵形で鈍頭。
頂小葉の基部は楔型で、中央より先寄りで幅が最も広くなる。
葉質はやや厚く、葉裏には黄色い腺点があり、軟毛が密生しており、葉表にも毛がある。
花期は7月〜9月で、葉腋から長さ2〜4cmの総状花序を出し、黄色い豆花を固まって付ける。
花は長さ9mm前後で、翼弁と竜骨弁が前に長く伸び、竜骨弁は細長い。
萼は腺点があり、軟毛が密生して5裂し、最下の萼裂片は萼筒と同じかそれより長い。
豆果は、長さ15mm前後で腺点があり、熟すと果皮が赤くなり、裂開する。
2個の種子は黒色で、果皮に付いたまま落ちない。赤い果皮は、さらに黒紫色に変わっていく。
トキリマメと似ているが、小葉の葉先が尖ること、葉質が薄いことで判別出来る。
また、花では最下の萼裂片が萼筒より明らかに短い点でも区別できる。

2021/4/16
実家近くを散歩中、昨年見かけたタンキリマメの様子が気になり、足を伸ばしました。
タンキリマメの多くは除草されていましたが一部が残っていて、新芽の展開を始めていました。



2021/6/29
そろそろ咲き始めているのではと、少し足を延ばして見に行ってみました。
パッと見たときには、咲いているようには見えなかったのですが、よく見ると花がありました。
黄色だと目立つと思ったのですが、葉陰などに入っていたりして、思ったほど目立ちません。
表に出ている花を選んで撮ったのが、下段の写真です。若干の濃淡はありますが、黄色一色です。



2021/8/22
6月に訪れた際、多くの花が付いていたので、多くの豆果ができているのではと、見に行ってみました。
ところが、相変わらず多くのツボミ(咲いていたのは極少数)は見られましたが、豆果がありません。
やっと、開いている豆果が付いた結果枝を1つだけ見つけました。緑色のものは皆無でした。
6月に見られた花は、既に豆果が熟して落果してしまったのでしょうか。それとも結実しなかった?
未熟な豆果はもちろんですが、それらが付いていたと思われる結果枝も見つけられませんでした。


2021/8/31
結実しているかもと様子を見に行ったのですが、相変わらずツボミと花しか見られませんでした。
どこかに豆果が見られるのではと、丹念に探して、やっと1つだけ若い豆果を見つけました。
まだ、枯れた花弁が付いたままの状態で、受粉して豆果が成長を始めたばかりのようです。


2021/9/7
豆果は大きくなっていましたが、まだ、豆が未熟であまり膨らんでいなませんでした。
なお、花数は非常の多いのですが、豆果は数えるほどしかなく、結実率はかなり低いようです。

イヌエンジュ(Maackia amurensis)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・クララ連・イヌエンジュ属>

マメ科イヌエンジュ属の落葉高木で、在来種。
日本では、北海道から本州、九州、四国とほぼ全国の山地の林縁、河岸、湿地の周辺に自生する。
以前は、本州西南部に分布するものをハネミイヌエンジュとして分けていたが、最近は分けない。
そのため、ハネミイヌエンジュは、イヌエンジュの別名とされている。
樹高は15m前後になり、樹皮は緑褐色で平滑、丸い皮目がある。枝を折るとソラマメに似た臭気がある。
葉は奇数羽状複葉で、小葉は4〜7対あり、長さ3〜6cmの卵形で、裏面には短毛が生える。
花期は7月〜8月で、枝先に総状花序を数個出し、長さ7〜10mmの蝶形花を多数付ける。
花は白色で中心付近が淡黄緑色を帯び、旗弁は萼に接するほど、後方に強く反り返る。
オシベ10個は、全て離生する。
果実は長さ3〜9cmの広線形の豆果で、10月〜11月に熟すが裂開しない。

2020/8/6
散歩ついでに觀濤處(かんとうしょ)に上っているとき、通路脇でヤマハゼを見かけました。
若い未熟な実を付けていたのですが、直ぐ近くに白っぽい花が咲いていました。
あっ まだ、花が咲いているんだと思って、撮影したのが上記の写真です。
ただ、ヤマハゼの花ってこんな花だったかと疑問には思ったのですが、
同じ奇数羽状複葉で、ヤマハゼの枝と重なるように出ていたので、そうだと思ってしまいました。
後で、写真を拡大してみたとき、どう見てもマメ科の花にしか見えません。
改めて葉をよく見てみると、奇数羽状複葉ですが小葉の形や葉脈の入り方が異なります。
このとき、偶然重なっていただけで、これは別種の樹木であると気が付きました。
調べていて最初に見つけたのはエンジュでしたが、花の付き方などが異なります。
よく似た樹で、花の付き方や花の形が一致するイヌエンジュだと分かりました。
以前は、ハネミイヌエンジュという別種扱いだったようですが、最近は同一種とされています。

シロバナシナガワハギ(Melilotus alba Medik.)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・シャジクソウ連・シナガワハギ属>



マメ科シナガワハギ属の越年草で、中央アジア〜ヨーロッパ原産の帰化植物。
飼料作物として栽培され、世界各地に帰化しているが、国内でも全国で見られる。
草丈は50〜150cmで、茎は直立あるいは斜上して、よく分枝する。
葉は互生し、3出複葉で、小葉の長さは20o程の長楕円形で鋸歯がある。托葉は線形。
花期は6月〜8月で、葉腋から長さ3〜10cmほどの総状花序を出し、小さな白い蝶形花を多数付ける。
蝶形花の長さは5〜7mmほどで、翼弁と竜骨弁はほぼ同長。萼は5裂する。花にクマリンを含むので芳香がある。
果実は長さ5oほどの惰円形で、表面に網目状の不明瞭なしわがある。
果実には1〜2個の種子を含み、裂開しない。
なお、種子が水に浮くので、河川を介して広範に伝搬し、分布域を広げている。

2021/6/17
実家近くの川沿いを散歩中、道路脇から突き出した白いマメ科の花に気が付きました。
以前、湯田中温泉に行ったときに見かけたシロバナシナガワハギです。
もう少し上流では、黄花のシナガワハギが見られますので、ここでは両種が見られることが分かりました。


2021/6/29
上記の株の近くで、別のシロバナシナガワハギが数本見られました。
左のようにかなり咲き上った株がある一方、まだ、右のように花序が伸び始めたばかりの株もありました。



2021/8/22
前回見たときは、まだ、花序が伸び出して、花が咲き始めて間もない頃でした。
それから2ヶ月ほど経って、どうなっているかと見に行くと、半分ほどが豆果になっていました。
上記は、花が咲いて、受粉し、豆果になって、それらが熟していくところを時系列に並べたものです。


2021/8/22
豆果の外観は、シナガワハギの豆果と瓜二つで、それだけ見たら区別するのは難しそうです。
なお、シナガワハギの豆果は裂開しないそうですが、本種の豆果は裂開するようです。
右の写真の豆果の中には、裂開して中の豆が覗いているものが見られます。

ハイメドハギ(Lespedeza cuneata var. serpens)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ヌスビトハギ連・ハギ亜連・ハギ属>



マメ科ハギ属の多年草で、在来種。メドハギの変種である。
日本では本州、四国、九州に分布し、海外では中国に分布する。
草丈は10〜50cmで、茎が地を這って広がり、普通、茎には開出毛がある。
ただし、毛が無いものもあり、毛があるものをケハイメドハギと分けることもある。
葉は3小葉で、密に付く。頂小葉は長さ7〜25mmで、他の小葉より若干大きい。
メドハギよりやや短かく幅がやや広めの長卵形で、先は円頭〜やや凹頭。
花期は8月〜10月で、花は葉腋に3〜4個集まって付き、長さは6〜7mm。
ツボミは紫色。花は旗弁の裏が紫色で、表の中央部が端まで紫色。
舟弁の先も紫色になる。萼は5裂し、萼片の幅は狭い披針形で、先が尖る。
なお、閉鎖花も葉腋に数個ずつ付く。
果実は2.5〜3mmの扁平な円形〜楕円形で、毛が散生して、種子は1個だけ入る。

2021/6/5
実家近くの河川沿いを散歩中、コンクリートの上を這っているマメ科の草本を見つけました。
這っているといっても、つる性の草本ではなく、単に茎が地を這うように伸びているだけです。
見たことがなかったので、後で調べていて花の特徴からメドハギが見つかりました。
おそらく、川沿いで茎を直立させているよく似た葉の草本がメドハギと思われます。
その変種に、地を這うように茎を伸ばすハイメドハギがあることが分かりました。
ただ、ツボミは紫色というより紫がかった緑色、旗弁の裏も表同様に中央部だけが紫色です。
舟弁の先が紫色を帯びる点は一致しており、若干の違いはあってもハイメドハギと判断して良さそうです。
しかし、気になるのは花期で、6月初旬に既にかなり開花が進んでおり、2ヶ月は早いです。
推測でしかないですが、日当たりの良いコンクリートは暖かいので、成長が早まったのかもしれませんね。
ちなみに、メドハギと思われる直立した方は、ツボミすら付いていませんでした。

メドハギ(Lespedeza cuneata)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ヌスビトハギ連・ハギ亜連・ハギ属>

マメ科ハギ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州、南西諸島まで広く分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾、インドから東アジア、東南アジアの一部に広く分布する。
草丈は0.6〜1mで、茎は直立してよく分枝し、枝に沿って密に小葉が付く。
なお、春には直立した単幹であるが、夏から秋にかけて先で分枝する。
葉は3小葉からなり、小葉は長さ1〜2.5cmのくさび形〜倒披針形で、裏面には伏毛がある。
花期は8月〜10月で、花は葉腋に数個ずつ付き、淡黄白色で長さ6〜7mm。
旗弁の基部には紅紫色の斑点がある。閉鎖花もよくでき、主に豆果は閉鎖花からできる。
豆果は扁平な円形〜広楕円形で、中には種子が1個入り、熟しても裂けない。
なお、閉鎖花からできた豆果の萼歯は、普通の花からできた豆果のものより短い。

2021/6/5
実家近くの河川沿いを散歩中、土手の道路沿いでよく見かけるメドハギと思われる草本です。
葉の付き方などはハイメドハギとそっくりで、地を這わずに叢生して直立〜斜上しています。
おそらくメドハギであろうと判断しましたが、花を確認してから確定することにしました。


2021/6/29
6/5に見たときには単幹でしたが、今日見ると中程から多数の横枝を出していました。
主幹の先は分枝することなく、真っ直ぐに伸びて、特に変わった所はありませんでした。
最初は単幹で、夏から秋にかけて分枝が進む点も、メドハギの特徴に合致します。


2021/8/15
いつもチェックしていた株が増水で水没し、枯れてしまっていたので、別の株に変更しました。
この株は茎の上部でも分枝して、茎先の方で大きく広がっています。



2021/8/31
実家近くの川縁を散歩中、メドハギと思しき草本に花が数個咲いているのに気が付きました。
この花の特徴から、本種がメドハギであることに確信が持てました。
そこで、チェックしていた株はどうかと様子を見に行くと、下段の通り、多くの開花が見られました。

ヤマハギ(Lespedeza bicolor)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ヌスビトハギ連・ハギ亜連・ハギ属・ヤマハギ亜属>

マメ科ハギ属の落葉低木で、在来種。秋の七草の1つ。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ウスリー川辺りまで分布ている。
樹高は1〜3mで、根元から多数の細い枝を出し、先で多数に分枝する。
葉は互生し、3出羽状複葉で、小葉は長さ数cmの楕円形。
小葉の先は丸くなるが、主脈の先が髭のように尖り、飛び出るものもある。
花期は、7月〜10月で、花序は基部の葉より長い花柄を出して、多数の花を付ける。
花冠は淡紅紫色で、長さ10oほど。旗弁は翼弁や竜骨弁より長く、竜骨弁は翼弁より長い。
萼は4裂し、上側の萼歯は浅く2裂する。萼歯は萼筒よりも短い。
豆果は、長さ6o前後で、扁平で丸い。種子は1個だけ入っている。

2022/8/27
網引湿原の駐車場近くで、柵から枝を伸ばして咲いているヤマハギを見かけました。
秋の七草の1つとして知られていますが、開花するのは夏からになります。

ハリエンジュ(Robinia pseudoacacia)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ハリエンジュ連・ハリエンジュ属>

マメ科ハリエンジュ属の落葉高木で、北米原産の移入種。
日本には、1873年に輸入され、街路樹、公園樹として植栽された。
標準和名は「ハリエンジュ」であるが、一般にはニセアカシアの名で呼ばれる事が多い。
輸入当初、本種をアカシアの名で呼んでいたが、本来のアカシアが輸入された際、変更された。
その名前が、「pseudoacacia」の直訳である「ニセアカシア」である。
樹高は20m以上になり、5月〜6月に大量の花を付ける。上質な蜜が取れる蜜源植物である。
葉は、奇数羽状複葉で、小葉は5〜9対付き、基部に一対の托葉由来の棘がある。
総状花序を付け、房状に強い芳香のある白色の蝶形の花を大量に咲かせる。

2022/6/18
高御座神社の駐車場の裏の法面からハリエンジが枝を伸ばして、たくさんの豆果を付けていました。
花の頃には来ていないので、豆果がエンジ色に色付き始めて気が付いたしだいです。
樹には棘があるので、川沿いなどで繁殖しているのは嫌われ者ですが、良質の蜜源です。


ハリエンジュの花

   .
2017/5/10
相模川に沿った道路を通ったとき、河川敷に咲いていたハリエンジュです。
この辺りには点々とかなりの数のハリエンジュの大木が見られ、たくさんの花を付けています。
しかし、花が白いのであまり目立たず、気にしていなければ気が付かないかもしれません。


ナツフジ(Wisteria japonica)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・フジ連・フジ属>

マメ科フジ属のつる性落葉木本で、日本固有種。
本州関東南部以西から四国、九州に分布し、丘陵や低山地の林縁や明るい樹林内に自生する。
蔓は左巻きで、樹皮は褐色で皮目が多い。若い枝には最初は毛があるが、後に無毛となる。
葉は長さ10〜20pほどの奇数羽状複葉で、小葉は4〜8対。小葉は長さ4p前後の狭卵形。
花期は7月〜8月で、葉腋から長さ20cmほどの総状花序を出し、垂れ下った花序に多数の蝶形花を付ける。
旗弁と翼弁はともに長さ12o前後で淡黄白色。
萼も淡黄白色で、先が5残裂し、縁が赤色を帯びることが多い。
果実は、長さ5〜15pほどの豆果で、表面は無毛。果皮が分厚くて、くびれがあり、茶色に熟す。
種子は扁平な円形で、直径は8oほど。熟すと果皮が裂開して、種子が散布される。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場の近くで、柵に絡みついて花を付けていました。
まだ、花序の上部で花が咲いているだけなので、開花が始まって間もないようです。

ミヤコグサ(Lotus japonicus)
<マメ目・マメ科・マメ亜科・ミヤコグサ連・ミヤコグサ属>

マメ科ミヤコグサ属の多年草で、在来種。道端から海岸沿いまで、日当たりの良い背の低い草原などに多い。
日本では北海道から本州、四国、九州、南西諸島に分布する。海外ではインド以東の東アジアに広く分布する。
なお、元来は史前帰化植物で、ムギ類の栽培に付随して持ち込まれたと推測されている。
茎は根元で分枝して、地を這い、15〜35cmに伸びて、横に広がる。
葉は互生し、3出複葉で、基部にある1対の托葉は小葉と変わらないため、5小葉に見える。
花期は5月〜6月で、葉腋から花茎を立ち上げ、その先に1〜4個の蝶形花を固まって付ける。
その花の基部には3個の総苞があり、その形は普通の葉と同じ形状をしている。
萼は筒状で、先は裂ける。黄色い花は長さ10〜15mmで、2個の竜骨弁は合着して筒状。
豆果は長さ20〜35oほどの円柱形で、熟すと2裂してねじれ、黒い種子を弾き飛ばす。
和名は、京都で特によく見られたことに由来する。

2022/6/18
網引湿原入口の駐車場の近くにある新池、その土手の上で見かけたミヤコグサです。
その土手で、1株だけ蔓を伸ばして花を付けていました。
黄色い花なので目立つのですが、今日の散策コースでは、この場所以外では見かけませんでした。
時期的には花期は終盤ですが、春には一面に花を付けている場所もありました。

アナベル(Hydrangea arborescens cv. Annabelle)
<ミズキ目・アジサイ科・アジサイ族・アジサイ属・アジサイ節・アメリカノリノキ亜節>

北アメリカ東部原産のアメリカノリノキを原種とする園芸品種。
原種は、小さな装飾花がまばらに額縁状に付く程度であるが、アナベルには装飾花しかない。
しかし、アナベルは花序径が30pに達し、装飾花も多くて手まり咲きのため、見応えがある。
ツボミの時には緑色であるが、開花が進むにつれ、淡緑色、白色へと変化する。
草丈は1〜2mで、葉は対生し、長さ8〜18cmの卵形で先が尖り、粗い鋸歯がある。
開花後、白い花は徐々に緑色に変わり、秋には乾燥して茶色になる。
なお、装飾花で花弁に見えるのは萼で、花弁、オシベ、花柱の数が少なかったり、開花しないものもある。

2021/5/31
実家の庭に置いてある鉢植えのアナベルが、大きな花序を展開し始めました。
この時期は、まだ咲き始めなので、装飾花は淡緑色をしています。


2021/6/7
1週間ほどが経ち、装飾花の色は白色に変わり、よく見るアナベルらしい色合いになりました。


2021/6/9
アナベルには装飾花しかないと記載されていたのですが、奥の方に両性花らしきものが見えます。
若い花序ではどうかと見てみると、やはり、装飾花とは別に両性花らしいツボミが見られます。


2021/6/14
様子を見に行くと、両性花がしっかりと開花していました。
小さな花弁が5個あり、オシベ10個は花弁から飛び出し、メシベ1個(花柱は3個)が基部に見えます。
アナベルはよく見かけますが、細部までは見ていないので、他の株でも両性花が見られるのかは不明です。

カシワバアジサイ(Hydrangea quercifolia)
<ミズキ目・アジサイ科・アジサイ族・アジサイ属・アジサイ節・アメリカノリノキ亜節>

北アメリカ東部原産のアジサイで、栽培種。
樹高は2〜3mであるが、原産地では8mに達するものも見られる。
地下に出走枝を伸ばして群生する。若枝は樹皮が淡褐色のフェルト状で、古くなると薄片状に裂ける。
葉は対生し、長さ10〜30cmで3〜7個の尖った裂片があり、大きいものは柏状の葉形になる。
葉表は黄緑色〜暗緑色で、葉裏は銀白色になる。秋には黄色〜赤色に黄葉する。
花期は5月〜7月で、枝先に長さ15〜30cmの円錐花序を出し、多数の花を付ける。
花は、初期には緑色を帯びているが徐々に白色になる。その後、紫色を帯び、赤さび色になって残る。
原種では、外側に大きな装飾花を多数付け、内側に小さな両性花を付ける。
園芸品種は装飾花だけのものが多く、八重咲きの品種もある。
日本でよく植栽されているのは八重咲きの Snowflake であるが、一重の Snow Queen もある。
同じ八重咲きでも、装飾花が多くて花序が大きな Harmony もある。

2021/5/31
実家の庭に置いてある鉢植えのカシワバアジサイが、大きな花序を展開していました。
まだ、咲き始めの隣りのアナベルは淡緑色ですが、こちらは咲き上るので、基部の方は白色です。


2021/6/7
カシワバアジサイがすっかり満開の状態になり、花の重みで花序が垂れ下がっています。
よく見ると八重咲きの装飾花の陰に、両性花のツボミらしきものが多数付いています。


2021/6/7         2021/6/15         2021/6/15
左端の写真が、両性花と思われるツボミをアップで撮ったものです。
その1週間ほど経ったので、確認に行ったのが中央と右端の写真です。
アナベルの両性花と比べると、これがと思えるような形で、オシベらしきものが見られます。
しかし、外側にあるのが花弁と思われますが、きちんと開いているように見えません。
卵型のものが見えていますが、おそらくこれがオシベの葯ではないかと思います。
その数も数個が確認できる程度で、とても10個あるようには見えません。
付いている位置や半開きですが開花している点から、両性花と思われますが、不完全です。


2022/5/15
今年もカシワバアジサイが大きな花序と付け、先端の装飾花もほころび始めています。
その内側には小さな両性花が多数ついています。

ヤマハゼ(Toxicodendron sylvestre)
<ムクロジ目・ウルシ科・ウルシ属>

ウルシ科ウルシ属の落葉小高木で、在来種。雌雄異株。
関東地方〜九州の暖地の山地に生え、樹高は8m程になる。
樹皮は褐色で、赤褐色の皮目が目立つ。老木では、樹皮は縦長に裂けてはがれ落ちる。
葉は長さ40cmの奇数羽状複葉で互生し、5対前後の小葉がある。
小葉は長さ4〜13cmの卵状長楕円形で先は長めに尖り、全縁である。
葉腋から長さ8〜15cmの円錐花序をだし、黄緑色の小さな花を多数付ける。
花弁は5個で、長さ2mm前後の楕円形で、雄花の花弁は反り返り、オシベは外に突き出る。
雌株には、10mm程の扁球型の果実(核果)が多数、ぶら下がるように付く。

2020/8/6
散歩ついでに觀濤處(かんとうしょ)に上っているとき、通路脇でヤマハゼを見かけました。
花は終わっているようで、若い未熟な果実をたくさん付けていました。


2020/8/6
直ぐ近くに別のヤマハゼの樹があったのですが、その下の方に白い花が咲いていました。
同じ奇数羽状複葉だったので、まだ、咲き残っているんだと思っていました。
ただ、ヤマハゼの花ってこんなだったかと、疑問には思っていたんですよね。
後で拡大して見た時、その疑問は的中し、白い花はイヌエンジュだと分かりました。
偶然、ヤマハゼの枝と同じ場所に枝を出していたに過ぎなかったんですね。
上記の写真で、全体に写っているのがヤマハゼで、上部の枝には若い果実が多数付いています。
その右下隅に少しだけ写っているのがイヌエンジュで、白い花を付けています。
同じ奇数羽状複葉でも、よく見ればヤマハゼとは色等が異なっていて、分かったはずなんです。


 <ヤマハゼ>                <イヌエンジュ>
こうやって並べてみれば、小葉の形状や色、葉脈の入り方が異なり、違う種類だと分かります。
ただ、現地では、ヤマハゼの花を知らず、これが重なりあっていたので、別種だと思わなかったんです。
よく見ることが必要だと、改めて思い知らされました。

ヌルデ(Rhus javanica)
<ムクロジ目・ウルシ科・ヌルデ属>

ウルシ科ヌルデ属の落葉小高木で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、中国、台湾、東アジアから東南アジアに分布する。
樹高は10m程になり、幹は灰白色。若い枝は紫褐色で楕円の皮目がある。
葉は、9〜13枚の小葉からなる奇数羽状複葉で、葉軸には翼がある。
小葉は、長さ10cm前後の長楕円形で、縁には鋸歯がある。裏面全体に毛が密生する。
秋には真っ赤に紅葉する。春の新芽も赤い。
花期は8月〜9月で、円錐花序を出し、多数の小花を付ける。雌雄異株。
雌花には3裂したメシベが、雄花には5本のオシベがあり、白い花弁は反り返る。
秋に直径5o程の扁平な果実を付けるが、その表面はリンゴ酸カルシウムの白い結晶で覆われる。
葉に、ヌルデシロアブラムシが寄生すると、大きな虫えい(虫こぶ)を作る。
虫えいは、五倍子と呼ばれ、タンニンを豊富に含むため、皮なめしや黒色染料の原料に使われた。

2020/8/6
觀濤處(かんとうしょ)に上っているとき、所々でヌルデを見かけました。
花序を伸ばしている樹もありましたが、まだ、小さなツボミばかりでした。
ふと、足元を見たときに小さなヌルデの若木を見かけ、思わず撮ってしまいました。
まだ、樹高は数十cmしかありませんが、その葉はヌルデの特徴をよく表しています。


2021/8/22
実家近くの河川敷を散歩中、土手の法面に生えていたヌルデが花序を出しているのに気付きました。
まだ、ツボミも硬いので、開花するまでにはしばらく掛かりそうな感じです。
昨秋に見かけたとき、リンゴ酸カルシウムの白い結晶で覆われた果実が見られたので、雌花序ですね。



2023/8/5
網引湿原の駐車場の少し先で、ヌルデの葉に虫えいが出来ているのに気が付きました。
虫えいは奥胎内で初めて見たのですが、そこで見られなかった耳附子です。
これで、木附子、花附子、耳附子と3種類の五倍子を確認できたことになります。
これらはヌルデシロアブラムシが作る虫えいで、タンニンを豊富に含んでいます。
そのためでしょうか、下段の虫えいの一部が破れたところは真っ黒になっていました。
※ ヌルデシロアブラムシは、オオバチョウチンゴケで越冬し、翌春、ヌルデの葉軸に産卵します。
従って、近くにオオバチョウチンゴケがないと、ヌルデに虫えいはできません。


五倍子の種類と区別
耳附子
花附子
木附子
袋状になり、複葉の葉柄の翼葉につく。
数回分岐し、小葉片の中央脈につく。
(アントシアンで着色していることが多い)
数回分岐し、枝端または葉腋につき袋状部は花附子より広く壁も厚い。
(アントシアンで着色していることは少ない)

ハグマノキ (白熊の木)(Cotinus coggygria)
<ムクロジ目・ウルシ科・ハグマノキ属>

ウルシ科ハグマノキ属の落葉小高木で、中国、ヒマラヤ、ヨーロッパ南部などが原産地。
日本には明治時代の初期に渡来し、庭木や公園樹として植栽されるようになった。
樹高は3〜8mで、幹からは染料が採れ、樹皮からはタンニンが採れる。
葉は互生し、長さ3〜8pの卵形の単葉で、枝先に固まって付く。
花期は5月〜7月で、枝先に円錐花序を付け、小さな淡緑色の花をたくさん付ける。
花は直径3oほどの5弁花で、萼片やオシベも各々5個ある。
雌雄異株で、雌株は不稔花の花柄が長く伸びて羽毛のようになる。雄株では果柄は伸びない。
この花柄が羽毛のように伸びて、綿菓子のようになると、遠くからは煙のように見える。
その様をハグマ(ヤクのしっぽの白毛)で作られた仏具の払子に見立てたのが和名の由来。
なお、英名は「スモークツリー(smoke tree)」で、その訳である「ケムリノキ」の方が通りが良い。
花の後にできる果実は、小さな卵形の核果で、少数が結実する。

2018/6/5
実家近くを散歩中、ハグマノキを植えている家がありました。
花は終わっているようで、小さな果実が付いていました。

センダン(Melia azedarach)
<ムクロジ目・センダン科・センダン属>

センダン科センダン属の落葉高木。別名としてオウチ(楝)、アミノキなどがある。
日本では、四国、九州、沖縄に自然分布する。ただ、最近は、本州の関東以西にも自生が見られる。
海外ではアジア各地の熱帯、亜熱帯地域に分布する。
樹高は15 mほどになり、成長はかなり早い。
若い樹皮は紫褐色で、楕円形の小さな黄斑な点在する。太い幹は樹皮が縦に裂け、凹凸ができる。
葉は互生し、奇数2〜3回羽状複葉で、全体では数十p以上の大きさになる。
小葉は楕円形で、浅い鋸歯があり、薄くて柔らかい。
花期は5月〜6月で、若枝の葉腋に円錐花序を出し、淡紫色の5花弁の花を多数付ける。
果実は長さ2cm程の楕円形の核果で、晩秋に黄褐色に熟し、落葉後もしばらく残る。

2019/6/26
ミカイドウの近くにあったセンダンの樹を見てみると、葉陰に果実がそこそこついていました。
大きさは、既に熟したころの大きさに近く、色はきれいな緑色で、艶々しています。


2021/6/29
実家近くの川沿いには、所々にセンダンの樹が生えています。
5月には、樹全体に淡紫色の花をたくさん咲かせていましたが、その多くが結実したようです。


センダンの花

   .
2016/5/13
センダンの花ですが、紫をベースにしたとてもお洒落な色合いの花なんです。
上の写真がそうなんですが、いかがですか。私はお洒落だと思うのですが。


イヌザンショウ(Zanthoxylum schinifolium)
<ムクロジ目・ミカン科・ヘンルーダ亜科・サンショウ連・サンショウ属>


<雌花/雌株>                <雄花/雄株>
ミカン科サンショウ属に属する落葉低木で、在来種。雌雄異株。
日本では、本州から四国、九州、南西諸島に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、台湾に分布する。
樹高は2〜3mで、幹は灰緑色。若枝は緑色〜赤褐色または黒褐色である。
縦長の皮目が付き、長さ4〜15mmの刺が1個ずつ互生する。
葉は互生し、長さ7〜20cmの奇数羽状複葉で、葉軸には極狭い翼がある。
小葉は長さ2〜5cmの広披針形〜楕円形で、5〜11対ある。
縁には細かい鈍鋸歯があり、表面は濃緑色で光沢がある。
花期は7月〜8月で、枝先に長さ3〜8cmの散房花序をだし、黄緑色の小花を多数付ける。
雄花は、5個の花被片は1.5mmほどと小さく、オシベは5個で葯は黄色。メシベは退化している。
雌花は、5個の花被片は2mmほどあり、緑色の子房は3室あり、その上に黄緑色の柱頭がある。
果実は3分果に分かれ、分果は長さ4〜5mmの球形で、9月〜10月に褐色に熟す。
種子は、直径3〜4mmで黒くて光沢がある。

2022/8/16
網引湿原入口の駐車場の近くで見かけたイヌザンショウです。
撮影時には気が付かなかったのですが、同じ場所に雄株と雌株が並んでいたようです。
後で写真を確認していて、雄花序と雌花序が混ざっているのに気が付きました。


2022/8/27 <果実/雌株>

2022/8/27 <雄花/雄株>
前回見たときは、まだ、雌株は花が咲いている状態だったのですが、一部は果実になっていました。
この果実の付き方はサンショウによく似ているのですが、サンショウほど芳香がないそうです。
一方、雄株の方は、まだ、雄花が咲き続けているようです。


2022/10/11
上記の花などを撮影した雌株では、全ての果実が無くなってしまっていました。
それではと、第3湿原の奥の方にあった雌株を見に行くと、まだ、果実は残っていました。
大きくなって、色付き始めたものも見られます。

ノギラン(Metanarthecium luteoviride)
<ヤマノイモ目・キンコウカ科・ノギラン属>

キンコウカ科ノギラン属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は15〜50cmで、地下茎は短く直立し、多くのひげ根がある。
葉は葉は根生して開出し、長さ12〜24cmの倒披針形で、全縁で両面無毛。
花期は6月〜8月で、根出葉の間から花茎を伸ばし、総状花序を付ける。
花茎には葉は付かず、花には苞があり、長さ2〜4mmの短い花柄がある。
細長い総状花序に多数の花をつけるが、黄緑色の花は上を向いて咲き、花後も落ちない。
6個の花被片は長さ6〜8mmの線状披針形で、外部中肋は緑色をして、基部は短く合生する。
オシベは6個で花被片より短く、花糸は下部が少し幅広になっていて、無毛。
子房は中位で3室あり、各室に多数の胚珠があって、柱頭は3裂する。
果実は長さ7mmほどの卵形の刮ハで、花被片より短く、花被片が包み込む。

2022/6/18
最初の網引湿原獣害防止ゲートから第1湿原の獣害防止ゲートまでの林内、そこで見かけたノギランです。
まだ、開花には少々早いようで、花茎の先に未熟なツボミがたくさん付いた状態でした。


2022/8/09
林内で見かけたノギランですが、花時には来ることができなかったので、全てが咲き終わっていました。
といっても花弁が残るので、花後も見た目はあまり変わらないのですが、オシベがなくなります。
また、淡褐色を帯びていた花弁ですが、果時なると若い果実ではきれいな緑色になっていました。


2022/8/16
第2湿原の周りでも、何ヶ所かでノギランを見かけました。
林内で見かけたような緑色の花被片ではなく、熟すにつれて枯れて褐色に変わり始めていました。


2023/5/18
湿原に向かう遊歩道脇では、あちらこちらでノギランが根出葉を広げていました。
花が咲くのは1ヶ月ほど後なので、まだ、花茎も出ていない状態です。

 
2023/7/18
網引湿原の第1獣害防止ゲートを通った先の林中で、ノギランの花を見ることができました。
花序は延びていましたが、開花しているのは下部のみなので、咲き始めて間もないようです。


 
2023/7/18
奥池の中ほどを過ぎた辺りで、ノギランが群生している所がありました。
ここのノギランは、陽当たりが良いためか、分枝が多くてたくさんの花序が見られました。

ナガイモ(Dioscorea polystachya)
<ヤマノイモ目・ヤマノイモ科・ヤマノイモ属>

ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草で、在来種とする説と中国原産とする説がある。
ナガイモは、ヤマノイモとは別種のヤマノイモ属であるが、ヤマイモの名前で扱われることもある。
ナガイモは、概ね、以下の3つに分類される。
ナガイモ群(円柱状の芋)・ツクネイモ群(丸っこい芋)・イチョウイモ群(イチョウ型の芋)
この内の1つ、ツクネイモ群は、雌雄異株のつる性多年草で、ほとんどが雌株である。
茎には稜があり、葉柄とともに紫色を帯びることが多い。
葉は普通対生して、長さ3〜10cmの心臓状卵形で、基部の左右の張り出しはほとんどない。
花期は7月〜8月で、雄花序は長さ2〜5cmで、数個が集まって立ち上がる。
雄花は、外花被片3個に包まれた球形で、外花被片は長さ2o以下で黄緑色。
内花被片は少し小さく、オシベは6個。花の基部には長さ1mmほどの苞がある。
雌花序は長さ5cm以下で、数個が集まって垂れ下がる。
なお、ヤマノイモと異なり、葉腋にムカゴはほとんどつかない。
ツクネイモ群にもいくつかの品種があり、主なものは下記の通りである。
丹波いも:表面の凸凹が少なく、表面が黒っぽい
伊勢いも:表面の凸凹が多く、表面が白っぽい
加賀の丸いも:伊勢いもを持ち帰り栽培したのが始まりとされる

2023/6/18
1昨年の正月に、トロロを作るためにツクネイモ買い、その切れ端から芽が出ていました。
それを5月頃に畑に植えたところ、晩秋に巨大化したツクネイモを収穫できました。
正月にたっぷりトロロを味わった後、両端を少し残しておきました。
それを4月頃に畑に植えておいたのですが、なかなか芽が出てきません。
気になって1つを掘ってみると、たくさんのひげ根が出ていました。
埋め戻して、様子を見ていると6月に入って、1個が芽を出してきました。
上記は、埋め戻した方で、芽が出てきたのは先のものより1週間以上後になってからです。


     2023/6/23                   2023/6/28
6/23頃には、脇芽が出てきていましたが、葉は黄緑色が残る初々しいものでした。
6/28頃には、葉もすっかり展開を終わって、緑色の奇麗な葉になっていました。
先に芽吹いた方は、既に2m以上に蔓を伸ばし、多くの側枝を出しています。




2023/9/6
8月の中頃、キイロスズメの餌用の葉を取ろうとして、花序が付いているのに気が付きました。
その時には写真を撮らなかったのですが、気になって見に行くと、まだ、付いていました。
花の形状から雌花序であることが分かりますが、近くに雄株がないので結実しないでしょう。
ほとんどが花後で、白い花弁が暗褐色に枯れた状態でしたが、数個だけ未開花のものが見られました。
その写真を撮っていて、数ヶ所にムカゴが付いているのに気が付きました。
ムカゴが付くのは稀なようですが、数十は付いていると思われます。
よく見ると、ムカゴからは既に芽が出ているようで、右下の写真は、1個取り外して撮ったものです。
ヤマノイモのムカゴから芽が出ているのは見たことがないのですが、その点が少し異なるようです。
ノビルなどもムカゴが付いている状態で発芽するので、そう珍しいことではなさそうです。
この状態から、大きな根茎になるまでには何年もかかりそうですが、植えておこうと思います。


2023/9/8
そういえば、拡大した写真ばかりで、全体が分かる写真がないことに気づき、撮ってきました。
と言っても、高さが3m近くになっているので、全体を取ると小さくなるので上部のみです。
左は多くの雌花序がたれさがっているところで、右はムカゴが付いているところです。
話は変わりますが、この写真を撮っていて、キイロスズメの終齢幼虫が2匹いるのに気付きました。
放っておくと、どこかで蛹になってしまうので、即刻、飼育箱に移送しました。
また、その近くに褐色型のハラビロカマキリがいるのにも気付きました。褐色型は初見です。



2023/9/22
9/6に「近くに雄株がないので結実しないでしょう」と書きましたが、大きくなったものがあります。
理由は分かりませんが、子房の翼が3方に張り出しているものがちょこちょこ見られます。
どこかにナガイモの雄花が咲いている所があるのかもしれませんね。
ただ、このまま大きくなることはないかもしれません。上段右端のように枯れる運命かも。
なお、下段は最も大きく成長して、元気の良かった果実で、ヤマノイモと似た形状です。



2023/10/2
まだ、緑色の果実は残っていますが、前回、枯れるかもと言った果実は、枯れていました
果実の中がどうなっているのか気になったので、採取して割ってみました。
下段がその時の写真ですが、きれいに割れて、中から翼の付いた種子が出てきました。
その形状は、やはりヤマノイモの種子とよく似ていますが、生育は不十分なようです。
翼の基部に種子らしきものが見られますが、薄くペラペラで、中身はほとんど無いようです。


2023/11/12                   2022/12/31
晩秋になってツクネイモを掘り起こしてみました。それが上記の写真です。
参考までに、昨年掘り起こしたものが右側の写真で、今年のものはそのクローンとなります。
昨年は種芋が大きかったこともあるのか、20cm弱はある大きなものでしたが、
今年のものは良く売られているような15cmほどの小柄なものでした。
それでも、たっぷりととろろ(我が家の作り方はこちらに記載)を作って、大いに楽しめそうです。


ヤマノイモとナガイモ

ヤマノイモもナガイモ[ヤマイモ]も同じヤマノイモ属に属する仲間ですが、芋には各々特徴があります。

ヤマノイモ=ジネンジョ(自然薯)は、日本固有種で、山に自生しているものです。
ナガイモあるいはヤマイモと一般に言われているものには、大まかに言って以下の3種類があります。
 ナガイモ群:粘りが少なく、きめも粗い。栽培が容易なため、生産量も多い。
 イチョウイモ群:関東で言う大和芋のことで、ナガイモよりムチンが多く、粘りも強い。
 ツクネイモ群:粘り、きめが最も細かく、ヤマノイモと並び、美味。
       関西でヤマイモというと本種を指す。
       丹波地方の「丹波いも」、三重県、奈良県の「伊勢いも」などがあり、
       まとめてヤマトイモとも呼ばれています。
ダイジョは、あまり馴染みはないかもしれません。
      沖縄や九州で栽培され、「台湾山芋」、「沖縄山芋」とも呼ばれています。
      ヤムイモの一種で、熱帯から亜熱帯での栽培が多く、
      台湾→沖縄→九州と伝わったとされています。
粘り気では、「ヤマノイモ>ツクネイモ群>イチョウイモ群>ナガイモ群」の順となります。
ダイジョの粘りは、相当に強い様で、ヤマノイモ以上なのかもしれません。
ダイジョ以外は食べたことがあるのですが、ダイジョは見たことがないので上記はWebで調べた結果です。


ヒメドコロ(Dioscorea tenuipes)
<ヤマノイモ目・ヤマノイモ科・ヤマノイモ属>


ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草で、在来種。
日本では、本州の関東以西、四国、九州、沖縄に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
根茎は太さ6〜15mmで水平になり、節が明瞭で、食用となる。
茎は細く平滑で無毛であり、右巻きで他物に巻き付く。
葉は互生し、葉柄は長さ3〜5cm、基部に1対の小突起がある。
葉身は、長さ5〜13cmの細身の三角状披針形で、先が長く尾状に尖り、基部は深い心形。
花期は7月〜8月で、雌雄異株。雄花序、雌花序ともに細くて、垂れ下がる。
雄花序は単生か対に出て、長さは7〜18cmになる。
雄花は単生か対で付き、小花柄は長さ2〜8mm、淡黄色の花被は平開かわずかに反曲する。
花被片は6個で、先は鈍形〜円形。オシベは6個で、葯は外向きに付く。
雌花序は長くても8cmほどで、雌花は数個と少ない。
雌花には糸状の仮オシベが6個あり、花被片は6個で、平開かわずかに反曲する。
刮ハは淡黄褐色で光沢があり、長さ20〜25mmで3個の翼がある。

巻き方の判定方法
つるの巻き方の表現は見方によって変わるため、混乱が見られます。
そこで、日本植物学会が作成した「学術用語集植物学編」での定義が下記です。
● 支持木に巻きついている「つる」を外から見て、右方に向いていれば「右巻き」
●「つる」の伸張方向を出発点(下)から見て、時計回りならば「右巻き」


2023/7/25
第2湿原の獣害防止ゲートを入って直ぐの所でヒメドコロが咲いていました。
以前からオニドコロではないかと思っていたのですが、それにしては小さいという印象でした。
花を手掛かりに調べてみると、オニドコロを小さくしたようなヒメドコロ(雄株)と分かりました。
オニドコロの根茎は苦くて食用にはなりませんが、ヒメドコロの根茎は食べることができるようです。

ヤマノイモ(Dioscorea japonica)
<ヤマノイモ目・ヤマノイモ科・ヤマノイモ属>

ヤマノイモ科・ヤマノイモ属のつる性多年草で、日本固有種。
日本では、北海道南西部から本州、四国、九州に分布している。
海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
葉は対生し、長さ10p前後の三角状披針形で、基部は心形。葉柄は数pある。
花期は7月〜8月で、雌雄異株。種子のほかムカゴでも繁殖する。
雄花序は、葉腋から数本が直立し、白色の小さな花を多数つける。
雌花序は、葉腋から下垂し、白色の花がまばらにつく。
地下には1本の芋があり、地上部の成長と共に縮小し、秋には新たな芋と置き換わる。
芋は、ジネンジョとうな名前で売られているが、食べられるようになるには4〜5年を要する。

2023/8/5
駐車場近くで、柵に巻き付いているヤマノイモが、白い花をたくさん付けているのに気が付きました。
花と言っても、ツボミと大差ないほど開かないので、よく見ないと咲いているのかどうか分かりません。
雄花序は、葉腋から数個が集まって上向きに立ち上がって付きます。

モミジバスズカケノキ(Platanus x acerifolia)
<ヤマモガシ目・スズカケノキ科・スズカケノキ属>

スズカケノキ科スズカケノキ属の落葉高木で、スズカケノキとアメリカスズカケノキとの交配種。
樹高は10〜35mで、幹の直径は1m以上になる。
樹皮は、淡灰褐色あるいは灰緑色で、大きく不規則に剥がれ、その跡が淡緑灰色の不規則な模様となる。
幹は直立するが、主幹と枝の区別が明瞭でなく、卵型の樹形となる。
葉は互生し、葉身は長さ10〜20cm、葉幅はそれ以上で、掌状に3〜7裂し、縁に粗い鋸歯がある。
なお、葉の切れ込み深さは、スズカケノキ>モミジバスズカケノキ>アメリカスズカケノキの順に深い。
新枝の葉には托葉がよく発育し、枝を取り巻いて鞘状になる。
花期は4月〜5月で、雌雄同株、雌雄異花。枝先に長い柄のある球状花序が1〜2個下垂する。
萼片、花弁(雌花のみ)、オシベ(雌花は仮オシベ)は、各々3〜4個のものが多い。
メシベは先が赤褐色で、5〜8個が離生し、花柱の内側が長い柱頭となる。雌花の球状花序は赤みを帯びる。
オシベは葯の先が有毛のため、全体が毛玉のように見える。
なお、雌花の球状花序は枝先側に付き、雄花の球状花序は、雌花より基部側に付く。
果実は閉果が多数集まった集合果で、直径は4cm前後になり、1つの花柄に1〜2個付く。
なお、スズカケノキでは集合果が3〜5個、アメリカスズカケノキでは1個である。
また、本種は鱗片状に大きく剥がれて、灰色と褐色、淡緑色のまだら模様が出来るが、
アメリカスズカケノキは暗褐色の樹皮が縦に割れ、本種のようなまだら模様はでない。

2022/7/8
実家近くの小学校の校庭隅で、モミジバスズカケノキが果実をぶら下げていました。
気が付くのが遅くて、すっかり果実になっていました。


2023/5/11
モミジバスズカケノキの事を思い出して、学校の方へ行ってみました。
やはり、時すでに遅しで、受粉が終わって若い果実になってしまっていました。
辛うじて、メシベの柱頭の赤味が残っていました。なお、雄花は見られませんでした。


モミジバスズカケノキの花

   .
2015/4/4
新宿御苑で見かけたモミジバスズカケノキですが、ちょうど開花の時期でした。
左の拡大した写真は、雄花の球状花序で、オシベの葯は有毛なので、毛が生えたように見えます。
右の写真の左端で赤い毛が生えたように見えているのが雌花の球状花序で、赤いのはメシベの色です。
その右側に見えている緑色や灰褐色のものは、全て雄花の球状花序と思われます。


ハス(Nelumbo nucifera)
<ヤマモガシ目・ハス科・ハス属>

ハス科ハス属の抽水性の多年草で、在来種。原産地に関しては諸説があるが未決着。
ハスには観賞蓮と食用蓮があり、前者の地下茎(レンコン)は細く、食用には向かない。
大賀ハスなどの古代ハスは、2000年以上前から日本に存在している。
ハスは、地中の地下茎から茎を伸ばし水面に草丈1m以上になる葉を出す。
茎には通気用の穴があり、葉柄にも同じように穴がある。
葉は円形で、中央に葉柄が付き、強い発生性があり、水をはじいて水玉が出来る。
花期は7〜8月で、地下茎から伸びた花柄の先に直径20p前後の花を咲かせる。
花色には淡紅色と白色のものがあり、開花直後の花托は黄色い。
授粉が進むと花托の色は緑色に変化して、花後、花托の中の果実が花托と共に成長する。

2012/8/12
朝、実家近くを散歩していると、ハス田があり、白と淡紅色の花が咲いていました。
食用ハスなので、おそらく、明治になって中国から入ってきた品種と思われます。
自宅近くで栽培されている大賀ハスなどと比べると、花弁の数が少なく、色が淡いように思います。
下記を見ていただければわかると思いますが、時間が経つと花弁が徐々に色褪せて行きます。


2019/6/26
実家近くを散歩中、ハス田の近くを通ったのですが、白い花が数輪咲いていました。
まだ、葉もそう多くないので、開花時期には早いみたいですね。


古代ハス(大賀ハス)の開花

自宅が近い、町田市の薬師池公園にあるハス田で咲く大賀ハスの開花の様子です。
開花から4日目のお昼頃に散るまでの様子を時系列にしたものです。
ハスの花は、お昼頃には閉じ始めますので、最もきれいなのは、開花2日目の早朝だと思います。
なお、上記の食用ハスの花弁が淡い色なのは、開花3日目くらいだからかもしれません。

       
    2016/7/20(ツボミ)     2016/7/12(ツボミ)    2011/8/17(開花直前のツボミ)
   .
2016/7/25(1日目)       2016/7/20(2日目)       2016/7/20(3日目)
ハスの花の開花は、1日目はピーク時でも半開き状態で、その後ツボミ状態まで閉じます。
2日目は、満開まで開きます。その時、花托は黄色く、柱頭も黄色い。その後にツボミ状態まで閉じます。
3日目も、満開まで開きます。その時、花托は黄緑色が混じり、柱頭も黒っぽい物が混じります。
柱頭が黒っぽくなっているものは、受粉が完了した証です。その後、少し閉じますが、そのまま翌日を迎えます。

   
  2016/7/20(4日目)      2016/7/20(4日目)      2016/7/12(花托)
4日目は、開き切った後、お昼頃までには散ってしまいます。
花弁やオシベが散ると、緑色になった花托だけが残ります。


タイトゴメ(Sedum japonicum subsp. oryzifolium)
<ユキノシタ目・ベンケイソウ科・センペルビヴム亜科・
セダム連・マンネングサ亜連・マンネングサ属>

ベンケイソウ科マンネングサ属の常緑多年草で、在来種。
日本では、本州の関東以西から四国、九州の海岸の岩上に見られる。
草丈は4〜8cmほどで、茎は長く這ってよく分枝し、先は斜上して密に葉を付ける。
葉は互生し、長さ3〜6mmの円柱状倒卵形で、ほぼ円頭。粒状の突起はない。
花期は5月〜7月で、花は側生する高さは5〜12cmの花枝に付く。
花は直径9〜10mmほどの黄色い5弁花で、花弁は長さ4〜5mmほどの広披針形で鋭尖頭。
萼片は5個で、長さ3〜4mmの卵状長楕円形で円頭。
オシベは10個で、花弁より短く葯は黄色。メシベは5個で、斜上する。

2021/5/22
4月に見かけてから1ヶ月以上経ったので、様子を見に行くと茎頂に花芽らしきものが出来ていました。


2021/6/5
6月に入ると、ツボミも黄色味を帯びてきて、開花するものそう遠くない様子です。


2021/6/12
1週間経ったので見に行くと、開花が始まっていて、4分咲きといったところでした。


2021/6/20
タイトゴメですが、1週間ほどで満開となり、一面を黄色く染めていました。


2021/6/29
タイトゴメですが、すっかり花は終わってしまっていました。
花弁の代わりに、淡黄緑色の果実が星形に開いて、花弁の色が薄くなったように見えてしまいます。

オカタイトゴメ(Sedum japonicum subsp. oryzifolium var. pumilum)
<ユキノシタ目・ベンケイソウ科・センペルビヴム亜科・
セダム連・マンネングサ亜連・マンネングサ属>

ベンケイソウ科マンネングサ属の常緑多年草で、原産地不明の帰化植物。
日本では、ほぼ全国に帰化し、海岸から内陸部まで道路脇などで見られる。
草丈は4〜8cmほどで、全体的にタイトゴメより小さい。
葉は互生し、長楕円形で、長さは3mm前後。切り口は半円形。上部の葉は非常に密に付く。
花期は6月〜7月で、花は、茎頂の集散状の花序に数個を付けるか、茎上部の葉腋に付く。
花は直径8oほどの黄色い5弁花で、長さ4oほどの広披針形。
オシベは10個で、花弁より短く葯は黄色。メシベは5個で、斜上する。
萼片は5個で、先端は丸く、他のマンネングサ属と比較すると短め。

2021/5/22
4月に見に行ったときもあまり変化はなかったのですが、5月になってもあまり変わりません。


2021/6/5                 2021/6/12

2021/6/5                 2021/6/12

2021/6/5                 2021/6/12
6月に入ってからツボミを付け始め、半ば頃には花数も増えてきました。
葉が赤く色付いていた成長が遅いものも、ツボミを付けるものが出始めました。


2021/6/17
かなり開花が進み、葉が赤く色付いていた成長が遅いものも開花していました。

モリムラマンネングサ(Sedum japonicum Siebold ex Miq. f. morimura)
<ユキノシタ目・ベンケイソウ科・センペルビヴム亜科・
セダム連・マンネングサ亜連・マンネングサ属>

ベンケイソウ科マンネングサ属の多年草で、帰化種。原産地は不明。
メノマンネングサの原産地不明の1品種とされているが、異論もある。
その場合の学名は、「Sedum uniflorum ssp. japonicum f. morimurae」が使われる。
帰化種としているが、原産地不明のため、在来種である可能性もある。
また、ヨコハママンネングサと同一種とする説もあるが、これも定かではない。
草丈は5〜10cmで、直径1mmほどの茎は地を這って広がり、先は直立する。
葉は黄緑色で光沢があり、長さ4〜8mmの半月型の断面の長楕円形で、縁に粒状突起がある。
ヨコハママンネングサは、無花茎や花茎の下部の葉は3輪生し、有花茎の上部の葉は互生する。
また、無花茎の葉は密に付き、有花茎の葉はやや疎らに付く。
モリムラマンネングサは、茎葉は疎らに付き、互生、対生、3〜4輪生となる。
花期は5月〜7月で、直径5〜8mmの5花弁(4〜5数性)で平開する。
萼片は長さ2〜4mmの広線形で、オシベは10個あり、花弁より短く、葯は黄色。
メシベは長さ2〜4oで、子房の基部は合着し、花柱は長さ1mm弱で細長い。

2021/5/14
河川敷でモリムラマンネングサとしたものは、1ヶ月ほど経ちましたがあまり変化は見られません。



2021/6/5
上段の河川敷の株は、やっと、1ヶ所だけですがツボミを付け、花が開き始めました。
草丈が伸びて葉も増え、株もいく分大きくなったようです。
下段の実家近くの株も、1ヶ所だけツボミを付けていました。


2021/6/12
開花が進み、直ぐ右上の方にもツボミが見られます。しかし、他は代り映えしません。
株の成長は止まったようで、全体的に黄色味がかってきました。好天続きで水不足なのかもしれません。


2021/6/17
最初に開花した花茎の花はほぼ咲き終わり、直ぐ右上の花茎で開花が始まりました。
この株?では、写真の2本と、さらに上部の1本、合計でも3本しか花茎はありません。


2021/6/24

2021/6/20
上段の河川敷の株は、最初に開花した花茎は咲き終わり、その右上の花茎が開花しました。
写真には写っていない3個目の花茎も、ほぼ咲き終わり、この株は3個だけの開花となりました。
下段の実家近くの株も、数ヶ所だけ花茎を立ち上げて、一部が開花していました。


2021/6/29
以前より花数は増えましたが、それでもこの程度です。
今年は、あまり咲かないのでしょうか。花がこれほど少ないのは見たことがありません。


2021/8/15
既に花期は過ぎていますが、1輪だけ花が咲いていました。
6月に見たときよりも、葉の縁の粒状突起が明瞭に見えています。


2021/8/15
その花の近くに、他とは倍以上の大きさがある茎が1本だけ突き出していました。
葉の縁には粒状突起が並び、葉の大きさ以外は他とほぼ同じ特徴があります。
この茎だけ、突然変異でもしたのでしょうか。突然、巨人が現れたって感じです。
[続報]この大きな葉ですが、翌年、数が増えて開花し、メキシコマンネングサと分かりました。


2021/6/20
上記は、よく似ていて、種別が曖昧であった株の無花茎と有花茎を並べたものです。
真上からの写真とほぼ水平から撮った写真を合成してあります。
中央の3つは、オカタイトゴメであろうと思っていたものです。
葉の付き方や葉の縁に細かい粒状の突起が見られる点から、間違いないと思います。
問題は左端の河川敷で見かけたものと、右端の実家近くで見かけたものです。
この写真を撮っていて、右端の無花茎の葉が3輪生していることに気が付きました。
以前見たときは、背が低くて、葉が密生していたのでそのことには気が付いていませんでした。

 
 
2021/6/20
上記は、左端と右端の個体を拡大したものです。
右側の個体は、無花茎では3輪生、有花茎では疎らな互生となっています。
その特徴から、ヨコハママンネングサと呼ばれているものと判断しました。
左側の個体は、無花茎は葉が密生していて、互生、対生などが不明瞭です。
有花茎は、疎らなので互生や対生が確認でき、モリムラマンネングサではないかと思います。
ここでは、両者を区別せず、どちらもモリムラマンネングサとしました。が、自信はありません。
この種には似たものが多く、並べて比較しても良く分からないものが多いです。

シンジュボシマンネングサ(Sedum bithynicum)
<ユキノシタ目・ベンケイソウ科・センペルビヴム亜科・マンネングサ連・マンネングサ亜連・マンネングサ属>

ベンケイソウ科マンネングサ属の常緑多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物。
草丈は5〜20cmで、葉は互生し、長さ4〜8oの円柱状の広線形で、先は鈍頭。
花期は4月〜7月で、花弁は5個で、長さ4o前後の披針形で、鋭頭。
花弁は白色だが、中央脈が赤味を帯びるものが多く、ほぼ平開する。
オシベは10個で、花弁より短く濃紫色。心皮は5個で、子房は離生する。
ウスユキマンネングサとよく似ているが、花の多くが6数性のため、花弁の数で区別できる。

2018/6/5
実家の裏庭で、鉢植えになっているマンネングサ属が気になっていました。
それが花を付けていました。それも黄色ではなく、白い花です。
白い花で思い浮かんだのが、ウスユキマンネングサでしたが、調べるとシンジュボシマンネングサでした。
その違いは、花弁の数で、本種が5数性なのに対して、ウスユキマンネングサは6数性なのです。
見てわかる通り、咲いている花全てで、花弁の数は5個でした。

 
2021/6/14
3年経って、植木鉢から逸出したシンジュボシマンネングサが、下に大きく広がっていました。
面白いことに、日当たりの良い方は緑色の葉ですが、日蔭になる方は青緑色の葉になっています。
成長の度合いも、鉢植えの方は背が低くて花数も右手に少し咲いているだけです。
一方、下に落ちて広がった直植の方は、10cm以上伸びて多くの花を付けています。
生育環境の違いが、葉の色合いの違いや花の咲き方など出ていて、三者三葉の様相を呈しています。


2022/4/29
昨年、日蔭の方に広がっていた部分は、冬の間に枯れてしまいました。
日当たりの良い方に広がっていた所に、花芽を付けた花茎が立ち上がっていました。


2022/5/15
ツボミが膨らんでいると思っていたら、気が付くと開花していました。
まだ、開花している花数は少ないですが、メキシコマンネングサ同様に花序が傘状に広がっています。
花の大きさは、メキシコマンネングサより一回り大きいのですが、花が白いのであまり目立ちません。


2022/6/1
開花している花数は増えましたが、メキシコマンネングサのように一斉には咲かないようです。
そのため、一面が白く染まるほどにはならず、その側では無花茎が一面を覆っています。


2022/6/16
2週間ほど経って、シンジュボシマンネングサも花数は増えました。
といっても、メキシコマンネングサのように一斉に開花とはならず、この程度です。


2022/6/19
その後、好天が続いたのが良かったのか、かなり花数が増えてにぎやかになりました。

マルバマンネングサ(Sedum makinoi)
<ユキノシタ目・ベンケイソウ科・センペルビヴム亜科・
セダム連・マンネングサ亜連・マンネングサ属>

ベンケイソウ科マンネングサ属の多年草で、在来種。
日本では、本州から四国、九州に分布し、海外では、朝鮮半島から中国に分布する。
草丈は15〜25cmで、茎は紅紫色を帯び、地を這って節から発根し、分枝して先は斜上する。
葉は対生し、葉身は長さ7〜10mmのさじ型で、先は鈍頭で、基部は柄状に狭まる。
花期は6月中旬〜7月で、茎頂に集散花序を付け、黄色い花をまばらに付ける。
花は5数性で、直径10〜12mmの黄色の5花弁で、平開する。
萼片は長さが不均一で、2mm前後の広線形。基部は合着して短い萼筒となる。
オシベは10個あり、花弁よりわずかに短く、裂開前の葯は橙赤色。
メシベは長さ3〜4oで、子房は長さ3o弱。基部は合着し、花柱は長さ1mm前後で細長い。

2021/4/11
実家近くを散歩中、側溝脇で見かけたマルバマンネングサです。
葉の形が厚みのある横幅のある形をしているので、マンネングサ属では比較的分かり易いです。


2021/6/14
時々、5月に様子は見ていたのですが、6月に入ってチェックしわすれていました。
思い出して見に行くと、花が咲いていたのは写真の3本だけで、後はツボミも付いていませんでした。
開花のピークは過ぎていましたが、数輪、咲き残っていましたので、それを撮影しました。


2022/5/8
昨年、うまく花が撮影できなかったので、実家の裏庭に小さな株を植えておきました。
それが、一夏で巨大化して、一画を覆うほどに広がり、花芽と思われるものを付けていました。


2022/6/1
3週間以上経過しましたが、まだ、開花は始まっていません。
ただ、ツボミは徐々に増えてかなりの数になっており、その形が分かるほどになってきました。


2022/6/12
やっと、マルバマンネングサの開花が始まり、ちらほらと花が見られるようになりました。
ただ、花数が少ないこともあって、あまり見栄えのする咲き方ではないです。


2022/6/16
かなり開花が進んで、花数が増えてきました。
ただ、花数が増えたといっても、メキシコマンネングサの比ではありません。


2022/6/19
その後、好天が続いたのが良かったのか、かなり花数が増えてにぎやかになりました。

サルトリイバラ(Smilax china)
<ユリ目・サルトリイバラ科・シオデ属>

サルトリイバラ科シオデ属のつる性落葉半低木で、在来種。
日本では北海道から沖縄まで全国に分布し、海外では朝鮮半島から中国に分布する。
山野や丘陵の林縁などで、日当たりが良く、水はけのよい所を好む。
茎は地を這うように伸び、長さは1〜3.5mほどになる。緑色で硬く、鈎状の刺が散生する。
葉は互生し、長さ3〜12cmの円形から広楕円形で、基部は円形で、先が少し尖る。
葉の縁は全縁で硬く、表面に光沢がある。3〜5本の葉脈があり、その表面は凹む。
葉柄には托葉が変化した長い巻ひげが1対あり、これを他の物に巻き付けて伸びる。
花期は4月〜5月で、葉腋から散形花序を出して、多数の淡黄緑色の花を付ける。雌雄異株。
花被片は6個で、長さ4mm前後の長楕円形で、先が反り返る。
雄花のオシベは6個、雌花には柱頭が3本あり、子房は3室ある。
なお、雄花のメシベと、雌花の仮オシベは、共に退化してほとんどない。
果実は液果で、直径7〜9mmの球形。10月〜11月に赤く熟す。

2020/8/6
觀濤處(かんとうしょ)に上っているとき、通路脇を這っているサルトリイバラがありました。
まだ小さくて1mほどしか伸びていませんが、刺があるので大きくなると、山登りには厄介物です。


2022/6/18
網引湿原の入口の駐車場、その少し先で柵からサルトリイバラが蔓を伸ばしていました。
茎に逆向きの鋭い刺があり、巻ひげで絡みついて広がって行きます。
サルトリイバラがはびこった所では、サルも身動きできなくなるとの例えが和名の由来とか。
たしかに、この蔓がズボンなどに絡みつくと外すの大変だし、下手すると傷つきますね。


2023/7/18
網引湿原入口の駐車場近くで、今年もサルトリイバラがたくさん果実を付けていました。
まだ、果実は未熟なため果柄が上に反っていて、果実も小さく、色も緑色です。


2022/8/9
網引湿原入口の駐車場近くで、サルトリイバラがたくさん果実を付け、黄色くなっていました。
まだ、成熟途中ですが、秋には完熟して真っ赤に色付いてくれるでしょう。

シュロソウ(Veratrum maackii Regel var. japonicum (Baker) T.Shimizu)
<ユリ目・シュロソウ科(メランチウム科)・シュロソウ属>


シュロソウ科(メランチウム科)シュロソウ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は60〜80cmで、太い根茎があり、茎は直立する。
根茎には毒性の強いアルカロイドを含むので、取り扱いには注意を要する。
葉は、茎の下部に付き、長さが6〜30cmの長楕円形で、並行脈で、縦にしわがある。
葉の基部は鞘状になり、茎を抱く。葉の幅は3cm以上で、3cm以下だとホソバシュロソウとされる。
花期は6月〜8月で、茎頂に長い円錐花序を出し、多数の花が付く。花茎や花柄には毛がある。
花は直径10mmほどで、両性花と雄花が混生し、花序の上部に両性花、下部に雄花が付く。
花柄は短く、花茎に沿って花が付き、花被片は6個で、花色は暗紫褐色。花柱は3個。
果実は刮ハで、長さは10〜15mmほど。
本種は変異が多く、葉の細いものをホソバシュロソウ、花が黄緑色のものをアオヤギソウという。
なお、シュロソウとホソバシュロソウを分けないとか、オオシュロソウをシュロソウに含める説がある。
ホソバシュロソウ(Veratrum maackii Regel var. maackioides)は葉以外に果柄が細長い特徴もある。

2022/8/16
網引湿原の奥池の通路脇で、前回訪れた時にシュロソウらしきものを確認しました。
ただ、花がまったく咲いておらず、断定できなくて保留としていました。
今回、その花を確認でき、シュロソウであることが確認できました。
下段左端の写真は全体像であり、背の高い方は1mを越える草丈がありました。
右下に写っている背の低い方を拡大したのが中央の写真で、それでも50cm前後はあったと思います。
右端は、根本から出ていた葉で、見てわかる通り、葉幅はそれほどなくて、広い所でも3cm弱です。
なお、本種は変異が多く、葉幅が狭くて花柄が細長い点から、ホソバシュロソウに該当しそうです。
ただ、いろいろな説があるようなので、ここでは単にシュロソウとしておきます。


2022/10/11
8月に咲き始めていたシュロソウですが、咲き終わりに近くなり、果実が目立ちます。
右の写真のように側枝に雄花は残っていましたが、多くの雌花は未熟な果実になっていました。
その果実の基部には、枯れた花被片が残っていて、若い果実では元の花の形を保っていました。

シライトソウ(Chionographis japonica)
<ユリ目・シュロソウ科(メランチウム科)・シライトソウ属>

シュロソウ科(メランチウム科)シライトソウ属の多年草で、在来種。
和名のシライト(白糸)は、糸屑を束ねたような花の姿に由来する。
日本では、本州の秋田県以西から四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は8〜70cmで、根茎は極短く、葉はロゼット状に混生する。
葉身は長さ3〜15cmの長楕円形〜倒卵状長円形で、先は鈍頭である。
基部は葉柄となり、長さは1〜8cm。なお、葉柄が不明瞭なこともある。
葉縁は細かく波打ち、深緑色の草質で、両面無毛。主な側脈はしばしば下面に隆起する。
花期は5月〜6月で、高さ8〜70cmの茎を立ち上げる。
茎葉は長さ0.5〜8cmの披針形で、穂状花序の下に密集して付く事もある。
穂状花序の長さは2〜22cmで、多数の花が密に付き、花茎が白っぽくなる。
花は下から順に咲き登り、両性花と雄花ある。
花被片は6個あり、長さは不同長。上側の3〜4個が白いへら状線形で長さ7〜15mm。
下側の花被片は、長さは1〜2mmと極短いか、無い場合もある。
オシベは6個で、長さ1〜3mmで花糸は平たい。葯は2室で、帯白色。
メシベは子房上位で、花柱は3個、少し反り返り、内面に柱頭がある。
花弁が花茎に対して水平に近い角度で多数付き、白い丸ブラシのように見える。
刮ハは長さ3〜4mmの長楕円形で、果実が成熟する頃には花茎も緑色になる。

2022/6/18
最初の網引湿原獣害防止ゲートから第1湿原の獣害防止ゲートまでの林内、そこで見かけたシライトソウです。
3株咲いていましたが、ちょうど全体が咲いていて、丸ブラシのような形が良く分かります。


2022/8/27
2週間ほど前、同じ場所で見かけた緑色の果実を付けたノギランを、本種の花後と誤認していました。
間違いに気づいて、改めて本種のその後を確認したのが上記の写真です。
ノギランは果実が重いのか、果茎が真横に傾いていましたが、シライトソウは真っ直ぐに立っていました。
また、ノギランは花後に花被片が残るので花の形を残していますが、シライトソウは果実のみです。

コオニユリ(Lilium leichtlinii)
<ユリ目・ユリ科・ユリ属>
 
ユリ科ユリ属の多年草で、在来種。
日本では、北海道から本州、四国、九州と全国に分布する。
海外では、朝鮮半島から中国、ロシアに分布する。
現在、市販されている「ゆり根」は、このコオニユリの栽培品種「白銀」がほとんどとのこと。
草丈は100〜150cmで、茎は直立する。茎には若い時には綿毛があるが、後に無くなる。
葉は互生し、長さ8〜15cmの狭披針形で、先は尖り、葉柄はない。
花期は7月〜9月で、茎の上部に数個〜10個ほどの花を下向きに付ける。
花の直径は10cmくらいまでで、花被片は6個。橙色の地に黒紫色の濃斑が多数ある。
花被片は大きく反り返り、長いオシベ6個とメシベ1個が突き出す。葯は黒紫色で大きい。
刮ハは、長さ3〜4cm程の円柱状で、6稜があり、熟すと3裂する。
良く似た花には、オニユリとクルマユリがあり、植物体の形状はオニユリとそっくりである。
ただ、大きな違いがあり、オニユリには暗紫色のムカゴがあるが、コオニユリにはない。
逆にオニユリは種子を作らないが、コオニユリは上記の通り種子を付ける。
そのため、コオニユリは実生から開花までに6〜8年を要し、オニユリは3年ほどで開花する。
クルマユリは花こそ似ているが、その葉が輪生しているので、植物体の見た目は大きく異なる。

2021/6/17 7:50
実家の庭に、正月に食べきれずに残ったゆり根の球根を植えておきました。
4月の中旬に見たときには何もなかったのですが、5月には高さ50cm程の茎を立ち上げていました。
6月に入り、ツボミを膨らんできたとき、オレンジ色を帯びているのに気が付きました。
以前、ゆり根はオニユリかヤマユリと聞いたことがあり、ムカゴがないのでヤマユリと思っていました。
ヤマユリがオレンジ色を帯びることはなく、ムカゴも付いていないので、可能性はコオニユリです。
それがこの日、開花した花を見て、コオニユリであることを確認できました。
改めて調べると、ゆり根は北海道産のコオニユリが主な品種と分かりました。
おそらく、この花も栽培品種の「白銀」の可能性が高いと思われます。自生種よりも花が大きい気がします。


2021/6/17 7:50                 2021/6/17 9:52
早朝に撮影したのですが、光線の加減で撮り直すことにしました。
その時に気づいたのですが、花の形が変わってしまっていました。
早朝に見たときには、花弁を大きく開いて、ずいぶん大きな花だと感じていました。
それが、2時間ほど経過して、花弁が大きく後に反り返り、コンパクトになっていたのです。
どうやら、早朝に開花して平開状態だった花が、その後、よく見る反り返った形になったようです。
運よく、あまり見ることのない平開状態の花(直径が倍程度ある)を、知らずに撮っていたようです。
よく見ると、最初の時は葯は半開きで花粉は出ていなかったのが、2時間後には花粉が大量に出ています。

ササユリ(Lilium japonicum)
<ユリ目・ユリ科・ユリ属>


ユリ科ユリ属の球根植物で、日本固有種。日本を代表するユリの1つ。
日本では、本州の中部以西から四国、九州に分布する。
草丈は50〜100cmで、地下には直径2〜4cmの白い鱗茎がある。
葉は互生し、長さ8〜23cmの狭披針形で、やや厚みがあり、葉柄は4〜10mm。
この葉がササの葉によく似ているのが、和名の由来である。
花期は6月〜8月で、他のユリより花期が早い。
茎の上部に花被片の長さ10〜15cm、直径10〜15cmほどの漏斗状の花を1〜数個付ける。
花はやや下向きに咲き、内外花被片は淡紅色(白色〜紅色まで変異がある)で、先は反り返る。
外花被片は披針形、内花被片は長楕円形で、花被片の両端は狭くなり、内面中肋に毛がある。
オシベは6個で、葯は鮮やかな赤褐色で強い香りがある。メシベは1個。
刮ハは10〜11月に熟し、長さ35〜45mmの倒卵形で3室ある。種子は風で運ばれて広がる。
種子が地上発芽するのは、通常、翌々年の春で、最初は1〜数個の根生葉のみで茎はない。
ササユリの成長は非常に遅く、発芽から最初の花が咲くまでには7年以上かかるとされる。
また、栽培もかなり難しく、同じ場所で栽培すると病気で枯れてしまうらしい。
種子を散布すると数年で枯れ、新しい場所で発芽して、次々と移動していくもののようである。

2022/6/7
高御座山に登った際に見かけたササユリです。
上段は山頂付近で見た大きな株で、各々3つずつ花を付け、方やツボミ、方や開花して見頃でした。
下段は、登山中に見かけたササユリの変異です。左端は白花で、登る途中で最初に見たものです。
中央は最も多かった少しピンクがかったもので、右端は降りる時に見た最もピンクの濃かった個体です。

 
2022/8/16
網引湿原の奥池横の通路脇で見かけた、ササユリの刮ハです。
この刮ハが熟すのは晩秋の頃で、熟すと上部から3裂し、翼のある種子が風に乗って散布されます。

タカサゴユリ(Lilium lancifolium)
<ユリ目・ユリ科・ユリ属>

ユリ科ユリ属の植物の多年草で、台湾固有種。
日本では、1924年に園芸用に移入された帰化植物として全国に分布する。
草丈は70〜150cmで、黄色味を帯びた百合根状の鱗茎から直立茎を出し、ときに紫赤色を帯びる。
葉は互生し、長さ5〜15cm、幅1cmほどの狭披針形で、やや密に付ける。
花期は7月〜9月で、茎の上部に長さ15cm、直径13cmほどのラッパ上の花を1〜数個散房状に付ける。
花はやや下向きに咲き、白い花被片は6個で、外花被片は外面に紫褐色を帯びる。
花糸は長さ10cm前後で基部近くにわずかな結節がある。花柱は長さ6〜7cmある。
刮ハは長さ7〜9cmで幅は2cmほどで、3室ある。種子を多く付け、風で運ばれて分布を広げる。
タカサゴユリは、着床後、1年目は数枚の細長い葉のみ出して、球根に栄養をため込む。
翌年には花茎を伸ばし、花を咲かせるが数は少ない。さらに球根に栄養をため込む。
3年目にはさらに大きな花茎を伸ばし、多くの花を咲かせる。しかし、よく年以降は消える。
タカサゴユリは、連作障害が出やすいと言われる所以である。
そのため、一時的に勢力を広げ、大きな群落を作っても何年かで消えて、他の場所に移っていく。

2020/8/12
実家の庭にいつの頃からか自生して花を咲かせるようになったタカサゴユリです。
この若葉や花芽をユリクビナガハムシが食い荒らすようになって、花が見られなくなりました。
今年は、こまめにユリクビナガハムシを除去したら、久しぶりの開花が見られたものです。
この株は3年以上経っていると思いますが、これだけ花を付けると来年は消えているかもしれません。


2021/8/16               2021/8/17     .
今年も、庭のあちらこちらでタカサゴユリがツボミを膨らませ、一部が開花していました。
前日にはツボミだった左の写真中央のタカサゴユリですが、8/17の朝には開花していました。
開花した間もないためか、葯が開くまでにはなっておらず、閉じたままでした。


周りの開花している花を見て回ると、葯が開きかけたものや開いたものもありました。
その様子を時系列に並べてみましたが、中央と右端の間のものは見当たりませんでした。

ヘクソカズラ(Paederia scandens)
<リンドウ目・アカネ科・アカネ亜科・ヘクソカズラ連・ヘクソカズラ属>

アカネ科ヘクソカズラ属のつる性多年草で、全国で見られる。
別名に、ヤイトバナ、サオトメバナ、サオトメカズラなどがある。
日本以外では、東アジア一帯に分布し、北アメリカやハワイなどに帰化している。
特有のいやな臭いがあり、これが和名の由来。
葉は対生し、楕円から狭卵形で、長さ4〜10p、幅1〜7p。
花期は7月〜9月で、葉腋から短い集散花序を出し、花をまばらにつける。
花冠は鐘状で長さは1p前後。灰白色で先は5残裂し、中央は紅紫色で毛が生える。
花糸の短い5個の雄しべは、花冠の内部に付く。花柱は2個で、基部で合着する。
果実は、直径5oほどの球形の核果で、黄褐色に熟す。

2021/6/17
実家近くの川沿いで、ハマヒルガオの花が咲き終わりに近づいた頃、ヘクソカズラが咲き始めました。
ヤイトバナの別名の通り、花の中心が灸で赤くなったイメージがピッタリの花です。
※ ヘクソカズラの黄色い果実については、こちらに掲載させていただいています。

タチカモメヅル(Vincetoxicum glabrum)
<リンドウ目・キョウチクトウ科・ガガイモ亜科・Asclepiadeae連・Asclepiadinae亜連・カモメヅル属>

キョウチクトウ科カモメヅル属の多年草で、在来種。安定した湿った草地や湿地に生える。
日本では、本州の近畿以西から四国、九州に分布し、海外では朝鮮半島に分布する。
草丈は40〜100cmで、茎は下部は直立し、先は蔓状になって巻き付く。わずかに曲がった毛がある。
葉は対生し、葉身は長さ3〜11cmの長楕円状披針形で先が尖り、基部は円形または多少心形である。
葉の裏面に短毛があり、葉質はやや厚い。
花期は7月〜9月で、上部の葉腋に集まって付き、総花柄はないかごく短い。
花冠は直径9mm前後の暗紫色で、先が5裂し、中心部のメシベを取り囲む副花冠がある。
萼裂片は長さ2mm前後で少し毛があるが、花冠は無毛である。
袋果は長さ4〜5cmの披針形で、毛はない。種子には扁平で長い毛があり、風で散布される。
稀に変種で花冠が黄白色のアオタチカモメヅル(f. viridesens)が見られる。
また、本州中北部には、黄白色の花冠でやや大型のオオアオカモメヅル(var. nipponicum)が分布し、
その花冠が紫色を帯びるナガバクロカモメヅル(f. abukumense)もある。
広島県と九州には、稀に葉身が卵状長楕円形のマルバカモメヅル(var. rotundifolium)が見られる。

2023/7/18
網引湿原入口の駐車場近くの柵に絡みついて、小さな赤紫色の花を付けていました。
見たことがなく、後で調べて葉や花の形状などからみて、カモメヅル属の植物であると判断しました。
花の見た目はオオカモメヅルに似ていますが、花被片に毛はなく、副花冠の形も異なります。
コカモメヅルのような長い花序ではなく、コバノカモメヅルのような長い花序柄もありません。
葉腋から、短い花序柄が付いた花が3〜5個出ています。
このときには同定することができませんでしたが、その後、タチカモメヅルと判明しました。

ハナハマセンブリ(Centaurium tenuiflorum)
<リンドウ目・リンドウ科・リンドウ連・ケンタウリウム属>


リンドウ科ケンタウリウム属の1年草で、地中海沿岸原産の帰化植物。
1988年に神奈川県で最初の報告があった、比較的新しい帰化植物である。
以前はシマセンブリ属とされていたが、シマセンブリ自体が分類変更され、本属ではなくなっている。
葉は、十字対生でほぼ水平まで開き、やや幅のある披針形で、無柄で先が尖る。
ロゼット状の根生葉は、花期にはほとんど枯れてしまっている。茎は4稜形で、稜には翼がある。
花冠はピンク色で、中心部が白く、5裂して平開し、直径は10mmほどになる。
萼は筒状で、花冠の基部に接して付き、先は深く5裂して、裂片の先は細く尖る。

※ ベニバナセンブリと良く似ているが、下記の点で区別できる。
・花期に根生葉が元気に残っているのがベニバナセンブリで、ハナハマセンブリでは枯れる
・茎葉がハナハマセンブリはほぼ平開するが、ベニバナセンブリは斜上して平開しない
・ツボミの花冠裂片と花筒の比率が、ベニバナセンブリはほぼ1:1、ハナハマセンブリは1:1.5

2017/7/1
実家近くを散歩しているとき、道路脇の空き地でハナハマセンブリがたくさん花を付けていました。
八ヶ岳に行く途中、サービスエリアの空き地で見かけて以来の再会です。
サービスエリアで見た花は、咲き終わりに近かったので、あまりきれいとは言えない状態でした。
それに比べると、この株はまだ瑞々しくて、花も葉もきれいな色をしています。
なお、ハナハマセンブリと判断したのは、前述の判断基準によります。


2021/7/1
実家近くの側溝脇に、ハナハマセンブリが1列に並んで、紅紫色の花を付けていました。
以前には見かけたことがなかったので、ここ数年の間に入ってきたようです。









inserted by FC2 system